7 凶弾
「ちくしょー…白縫のヤツ。散々こき使いやがって…」
俺は両手に荷物を抱えがら悪態をつき、ショッピングモールのベンチに行儀悪くドカッと腰を掛けた。
そのまま体を背もたれの後ろまで伸ばし、空を仰ぐ。
背骨がポキポキ鳴って少し気持ちがいい。
何故ここまで疲弊しているのかと言うと、合流してから今まで彼女たちにやれファンシーショップだ、ブティックだ、雑貨屋だと散々連れ回されたからだ。
しかも、おんなじよーーーな店を何軒もハシゴしやがる…
結果、俺の両手には店を回るごとにどんどん袋が増えていった。
だが今の俺の疲労は、身体的よりも精神的な疲労によるものの方が大きかった。
雰囲気がキツイ、空気がキツイ、退屈、長い。
仕事とは言え、2時間半も買い物に付き合うのは辛すぎる…
流石は200万円の仕事だ…
チラリと目の前の店の方を見ると、白縫といのりが楽しそうに洋服を物色している。
服なんてさっきまで散々見て、手に取って、買ったのに、どうしてあの笑顔で居られるんだろう。
厄介だったのが、何件目かにはいのりと白縫が変に意気投合してしまったことだ。
途中で俺が『疲れたから喫茶店に行こう』と言っても、2人して『時間が惜しい』と言い俺の意見は却下されてしまった。
俺には味方はいないようだ…。
「ん…冷たくて気持ちいい」
「お疲れ様です」
いのりたちから視線を外し、再びだらしなくベンチの背もたれに体を預けていると頬に冷たい物体を感じた。
上を見ると、後ろから俺の好きな缶コーヒーBOTHを差し出してくる愛の姿があった。
軽く礼を言ってその缶コーヒーを受け取ると、姿勢を正しプルタブを開け半分くらいの量を一気に流し込んだ。
瞬間、食道から胃にかけて冷気が駆け巡り、暑さと疲労で弱った俺の体に僅かばかりのエネルギーが戻った。
「馬…ウマ…旨すぎる…っ!」
俺は鼻からゆっくりと空気を吸い、今度は鼻と口からゆっくりと息を吐く。
リラックス状態を作り、更なる回復を試みた。そして改めて
「ありがとな、愛」
と、しっかりお礼を言った。
「いえ、これは荷物持ちの駄賃ですよ」
「さいでっか。んじゃ、ありがたく」
「隣、いいですか?」
「もちろん」
クスッと僅かに微笑むと、俺の隣に座ろうと前に回り込んで来る。
いくつかの荷物をどかしスペースを作ってやると、愛はそこに座った。
見ると手にはお茶が握られており、彼女も補給をしようとしていたようだ。
涼しそうな表情をしているが、この暑さだ。多少は愛も消耗していたのだろう。
しばらく2人して無言で飲み物を飲みつつ、いのりと白縫の様子を見ていた。
「いいのか、あっちにまざらないで」
俺はいのりの方を軽く指さし、愛に問いかけた。
「はい。もう欲しいものは買いましたので」
そういえば、途中で少しだけ買い物をしていたのを思い出す。
だが、量は白縫に比べると遠く及ばない。あれだけで良かったのか。
比べる相手を間違っている気もするけど。
「卓也さんこそ、何か見てきたらどうですか?ここで荷物番をしてますよ」
「そうだなぁ…」
軽くモール内を見回してみる。
時計屋やスポーツ用品店など興味を引く店があるにはあったが、何となく買い物をする気分ではなかった。
別にどれも今すぐ欲しい物でもないし。
「俺はいいや」
「そうですか」
「…」
「…」
またしても沈黙が訪れる。
愛と俺は普段からそれほど活発に言葉を交わすような間柄ではなかった。
だが気まずいという雰囲気ではなく、むしろ心地よい沈黙というのだろうか。
喋らずに近くに居ても、お互い気にしない関係だ。
それに交わす言葉が少ないというのは、彼女の発する言葉は短く的確にまとまっているので、ダラダラと長引くことが無いということだ。
つまり何が言いたいかというと、愛とは決してコミュニケーション不足ではない、という事だ。
この沈黙は、そう、適正距離なんだ。
「卓也さん」
「…ん?」
「今のいのり様を見て、どう思いますか?」
「どうって…」
いのりは先ほどから服屋で楽しそうに商品を物色している。
歳も体型も近い白縫とはお互いに選んだ服を相手にあてがったりして、似合うとか似合わないとか言っているに違いない。
別にこの店だけではなく、今日はずっとこんな感じだ。
「まあ、高校生の休日…って感じじゃないか?年相応の」
「そうですね、私もそう思います」
「おう」
「ようやく相応…普通になったんです」
「お、おう?」
「マイナスから、0になったんです」
「…」
親父さんとの確執のことを言っているんだろう。
誘拐事件の後や先日も散々お礼を言われた件だ。
いのり様を救ってくれてありがとう、と。
その度に何度も「もういいよ」と言っているんだけどな。
「卓也さんは、夏休みの宿題はいつ頃やっていましたか?」
「…え?」
「宿題です。出てたでしょう?初等部とか中等部で」
「あ、ああ。そうだな…」
いきなり何の話題だ?宿題って。
急な方向転換に戸惑ったものの、落ち着いて考え、自分がどういうタイプだったか思い出すことにした。
「観察日記とか一定時間をかけるヤツ以外は、基本最後の1週間でまとめてやってたかな。宿題をやらずに新学期を迎えたことは無かったよ」
「宿題を残して遊んでて、楽しめますか?」
「残り1週間になるまでは忘れてるからな、宿題の事なんて。まあ一応ポリシー的な解説をするとだな、新学期を始める為の助走というか、慣らし期間だな。俺にとっての宿題は」
「慣らし?」
「そう。最初に全部終わらすこともできるけど、それだと新学期が始まると高低差が激しくて辛いだろ。だから最後の1週間は、楽しいだけの時間から徐々に学業の頭に切り換えて、辛さを軽減しようって狙いがあったんだよ」
「なるほど…そう聞くとそれもありだと思えますね」
「だろ?まあ、勉強が嫌いなの前提な発想がアレだけどな」
「それは仕方ないですよ、遊びと比べれば大抵の人がそうでしょうし」
「そうだな」
懐かしい記憶を辿った。
まさか26にもなって、夏休みの宿題がどうのこうのなんて話をするとは思わなかった。
小学生の子供でもいればするのだろうけど。
しかしなんでまた急にそんな話題を。
「私は、最初に全て終わらせるタイプでした」
「ああ、そうなんだ。多いよね、そういう…」
「終わらせないと、遊びを楽しめませんでした。心残りがあると、楽しくないんです」
「……ああ、そういう」
愛の言わんとしている事が分かった。
「私はこの5年間、何をやっても心の底から楽しめませんでした。曇った表情のいのり様が脳裏に浮かぶんです。私だけ楽しんでるのね、って言うように…そんなこと絶対に思うハズないのに」
「そうだな…」
いのりと親父さんの確執は、何も当人同士だけの問題ではない。
一番近くにいた愛や、分からないけどきっとおふくろさんや家の人、そして鬼島という刑事の心にも少なからず影響していた。特にいのりと愛は、10代の貴重な時期の内の5年間を暗い気持で過ごす事になってしまった。それはあまりにも…あんまりだ。
「だから、卓也さんが解決してくれて、今日こうして横濱に遊びに来れて、本当に楽しく思います。分かりにくいかもしれませんが、今私、とても楽しんでいるんです」
「宿題がようやく終わって、夏休みはこれからだもんな」
「はい」
愛はこの5年間、どこにも遊びに出掛けなかったワケではないだろう。
むしろ頭の切れる愛の事だ、能力者云々の部分を家族に悟られないよう努めて普通に過ごしてきたハズだ。
だが宿題のせいで、ほとんど楽しめなかったんだな。
「だから卓也さんには本当に感謝しています。私を救ってくれてありがとう…って」
「それは…よかったな」
「はい…」
いのりの為だけじゃなく自分の為に礼を言う愛。
彼女の心はいのりで100%埋まっていると思っていたが、そんなことは無いと言う事が分かった。
普通に考えればそうなのだが、今日まであまりにも献身的で自分の事を主張しない愛を見てきて、そんな当然の認識が抜けていた。
今日はいのりだけでなく、愛の年相応な部分も少しは垣間見えたような気がした。
宿題の話を振って来た時は何事かと思ったが。
「しかし珍しいな」
「…?何がでしょうか?」
「いや、愛が自分の胸中とかを饒舌に話すなーと思ってさ」
愛も救われたという話が一区切りついたところで、俺は愛に思った事を述べた。
まあさっきの話題はいのりが居る前で話しづらいだろうし、俺と愛しかいない今がタイミング的にはバッチリなんだろうけどな。
「それは…その…ですね」
「…ん?」
「…」
『タイミングが良かっただけです』といつもの調子で返って来るのかと思っていたら、どうも愛の様子がおかしい。
言葉の歯切れが悪いし、顔は真っ赤になっている。
素直に礼を言ったのがそんなに照れ臭かったのか?
そら確かにいのりの為に言う礼と自分の為に言う礼は違うけど。
愛のおかしな様子の原因を勝手に自分の中だけで解決しかけていた俺に、全く別角度からの理由が飛んできた。
「うるさくて…」
「え?」
「その…卓也さんと距離が近くて…それで、何も喋っていないと、緊張して…心臓の音がうるさくて…ですね。前まではこんな事無かったんですけどね。たまにこうしてふと意識してしまうと…おかしい、ですよね…」
「…」
全然適正距離じゃなかったですね。ていうか、何この娘…乙女すぎる。
これを計算ではなく天然でやっていると言うのなら、魔性がすぎんよ。
ナチュラルボーン魔性の女。俺じゃなきゃとっくに抱きしめていたかもしれん。
いや、俺も抱きしめていたかもしれん。いや、何を言っているんだろう。
これまでも無表情というわけではなく驚いたり微笑んだりしていた愛だったが、ここまで恥じらっている様子は初めて見た。
まさか、これもいのりの作戦か。
まずは合法の刺客を送り込み、その後に自分で攻め込んでくるという算段だな。
やるじゃん、南峯のいのりよ。世が世なら、軍師になっていたであろう器。
その挑戦、受けてやろう。
「ねえ、卓也くん…」
「はっ…!?」
この強大なプレッシャーは…
「今、愛のことを邪な目で見ていたでしょう…?」
「…ちょっと何言っているかわからないです」
観自在菩薩行深般若波羅蜜多時照見五蘊皆空
度一切苦厄舎利子色不異空空不異色色即是空
「じゃあなんでさっきから般若心経を唱えているのよ」
「唱えてないですケド?なあ、白縫」
「え…?」
「俺、色即是空とか言ってたか?」
「いや、言ってないと思うけど…」
「なあ」
「…くっ」
まさか心を読んでくるとは思わなかったが、それならそうとやりようはある。
冷静さを欠いているとはいえ、流石のいのりも白縫に話を振られれば退却せざるを得まい。
甘かったな。そして、そこでまだ赤面してる可愛い生物はいのりの刺客では無かったということだ。
恐るべし、天然乙女…!
「…まあいいわ。どうせ卓也くんはいずれ私と愛の共有資産になるんだし」
「資産て」
人件費でも報酬委託費でもなく、資産計上されちゃうの?俺。
「誰を愛そうとどんなに汚れようとかまわないわ。最後にこの私の横にいればいいわ」
「すごいわね…いのりちゃん」
どこぞの世紀末覇者だ。
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「白縫で予約している者ですが」
時刻は18時過ぎ。
俺は代表してホテルの受付へ行き、チェックインの手続きをしていた。
「お待ちしておりました、白縫様」
佐野というネームプレートを胸に着けた品の良い男性が、俺の対応をしてくれている。
流石は一流ホテルのホスピタリティだけあって、言葉遣いや所作の一つ一つが丁寧で素晴らしかった。
指先まで意識した立ち振る舞いは、さしずめホテル界のプリマドンナと言ったところか。
いや、言わない。落ち着け俺…。
そもそもこのホテルに入る前から凄すぎて気圧されていた。
まずロビーがでかい。何かシャンデリアのでかいのがある。
1階にはオシャレなカフェやバー、レストランがあり、ピアノも置いてある。
高そうな調度品がそこいらに設置されている。
周りの客も優雅な老人夫婦やお金を持っていそうな中年、仕事の出来そうな営業マンらしき青年など、ヒューマンステージ高そうな面々だ。
俺はこれまで家族旅行や友達同士の旅行、出張などで何度もホテルに宿泊した事はあるが、これほど高そうなところに来たことは無かった。
なので当然、このホテルが1泊いくらくらいするのかを正確に測る定規など持ち合わせていなかった。
故に「すげー」とか「でかい」といった稚拙な感想しか出てこない。
これは仕方ないのだ…。
「中々良い雰囲気のホテルですね」
「そうね。帰ったら皆にも教えてあげようかしら」
「24階にある鉄板焼き料理のお店が絶品なのよ」
「あらいいわね。後で行きましょう」
妙に浮足立っている俺に比べ、後ろの方のソファで待っている女子3人は随分と落ち着き払っており、夕飯の予定なんぞ計画している。
上流階級の会話に思わずため息が出てしまう。
慣れてて羨ましいことで…。
「お待たせしました。こちら2105号室と2106号室のカードキーでございます」
「あ、はい」
「こちらのカードですが、部屋の出入り以外にも当ホテルでのお食事や各種サービスの利用などは全てこれでご精算頂けます。チェックアウト時にまとめて使用した分のお支払いとなりますが…今回は後日口座引き落としになりますので、現金を頂く事はありませんね」
「はぁ…」
「ホテル内の自動販売機にもカードリーダーが付いておりますので、ボタンを押したあとカードをかざして頂ければ購入が可能となっております。ルームサービスは内線を使用した電話機の部屋に加算されます。あと…」
この後も、いくつかの連絡事項や諸注意を聞かされた。
俺が一見さんなのがバレバレなのであえて丁寧に説明してくれたのだろうが、
こんなことなら白縫を伴って手続きに来ればよかったと若干後悔した。
「説明は以上でございます。当ホテルでのひとときを心ゆくまでお楽しみください」
そう言われ、ようやく解放されたころには15分程度が経過していた。
一先ずカードキーを2枚持って3人の元へ向かった。
「随分と時間がかかりましたね」
「なんか、丁寧に説明されちまってね。とりあえずコレ、白縫の部屋のキーだ」
「ええ」
「21階の部屋みたいだから、とりあえず向かおうか」
俺は自分の着替えの入ったバッグをソファから取ると、エレベーターホールへ行こうと歩き出した。
いのりと愛もそれに続くようソファから立ち上がる。
ちなみに、大量にあった買い物の荷物は流石に邪魔になるので、一部を除いてここへ来る前に宅配業者に預けてきた。
なので今俺の手はあの重さから解放されていたのだった。
「ちょっと先にエレベーターのとこに行っててくれる?」
白縫はそう言うと、チェックインをした受付にひとりで向かっていった。
そして、俺の対応をしてくれた佐野というホテルマンになにやら注文をしている。
が、別に気にするほどでもないだろうと判断し、俺たちは白縫の言う通り一足先にエレベーターホールへ向かったのだった。
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「広…」
部屋に入って開口一番飛び出した俺の感想はこれだ。
まず入り口から入って直ぐに視界に飛び込んできたのは、横濱の海が一望できる大きい窓を携えた広いリビングだった。
50インチはあろうかという大きいテレビに、L字に配置された高そうなふかふかのソファとテーブル。
部屋の随所には海外製っぽいライトが何点か配置されている。
この時点で俺の安アパートより広いというのに、なんと他に寝室が3部屋もあるのだ。
それぞれの部屋にも凝った調度品の数々とクイーンサイズのベッドが置いてあり、この2105室だけで最低でも6人は泊まれそうな広さだった。
(白縫の親父さんは3人部屋と言っていたが…)
ホテルのスケールに圧倒されている俺に比べ、後から入ってきたいのりと白縫は部屋に対して何ら特別なリアクションをすることなく自然な様子で手荷物を適当な場所に置きソファでくつろぎ始めた。
彼女らにとっては、楽しい買い物が終わりようやく一息ついてリラックスすることができる、と言ったところだろうか。
むしろこの部屋のほうが落ち着かない庶民の俺は、感覚の違いに閉口するばかりであった。
「これから慣れていきましょう」
愛だけが俺の心中を汲み取り、励ますように声をかけてくれた。
やはり頼りになるのはこの子だけなんだ、と心の中でつぶやく俺だった。
「よし」
気を取り直し、俺は各部屋を見て回ることにした。
一応護衛依頼で来ているので、最低限の仕事はしておかなければならない。
そして今俺にできることといえば、部屋に不審物がないかのチェックだ。
俺の能力は行使する際に対象を見たり触ったりする必要があるが、その時に数値を変える対象の名前が分かるというオマケ機能があることにある時気が付いた。
これにより巧妙に偽装された"何か"や隠された"何か"を発見することが出来るようになった。
この効果は数値が操作できない状態でも作用する。
最初はそんな効果はなかった。
能力のレベルが上がったからなのか、はたまた熟練度か。
親切なシステムメッセージが無いので確認しようがないが、今後も能力のバージョンアップがあるという認識で良いのだろう。
ならばどうやってレベルや熟練度は上がる?使い続けたら?それとも誰かを倒したら?前者なら在り難いが、後者なら…どうしようか。
各部屋を不審物の類が無いか入念に見て回りながら、能力の事について考えているとふと部屋のチャイムが鳴った。
「あら、頼んだヤツがもう来たのね」
リビングでは白縫がこのチャイムに心当たりがあるような事を口にしていた。
そういえば、さっき俺たちを先に行かせて何か言いに行ってたな。
「何を頼んだのよ」
「このホテルのオリジナルケーキよ。とても美味しいのよ」
「へぇ。でも随分早く頼んだのね」
「うーん…8時半くらいってお願いしたんだけど。まあいいわ。冷蔵庫で冷やしておきましょう」
白縫といのりが話をしていると、催促するようにもう一度チャイムが鳴った。
「はーい!今行くわよ!」
白縫がドアに向かって大きめの声で返事をし、来訪者を部屋に招くためドアのカギを解除する音が聞こえた。そして。
「お待たせしました」
「ありがとう。こっちに運んでくれる」
「はい」
リビングからは先ほどチェックインの対応をしてくれた佐野というホテルマンらしき声が聞こえてきた。
俺は部屋の捜査をここらへんで切り上げ、その絶品ケーキとやらを拝みに一度リビングへ戻る事にした。
夕飯前にもうひとつの部屋の方もチェックしておきたかったのであまりのんびりしている時間は無いのだが、気になってしまっては作業が手に付かない。
「おーい、そのケーキ俺にも見せてく…れ…」
だれだ…?こいつは…
白縫の後ろを歩くのは、見た目は受付に居た男性そのものだった。
が、たまたま能力が継続して発動中の俺の目には【矢井田 創】という知らない名前が表示されている。
何らかの理由で偽名を使っているという可能性もあった。あったが…。
瞬時にサーチを発動させていた俺には、男の全身をハッキリと、能力者の証であるエネルギーが覆っていたのが見えてしまった。
「…っ!」
「卓也くん!!」
心を読んだのだろうか。男の異変に気付いたいのりが俺の名前を叫ぶ。
俺はそんないのりの叫びよりも一瞬早く、白縫に向かって駆け出していた。
我ながら最高のスタートだ。短距離の選手なら称賛を浴びていたところだろう。
しかし、そんな最高のスタートを切った俺の目には、男が本来ケーキを入れておくべき白い箱の中から"デザートイーグル"を取り出し淡々と構える様子が映っていた。
「…え?」
俺たちの異様な様子に白縫が思わず後ろを振り返ると、そこには両手でしっかりと銃を構え、白縫に照準を合わせ射撃の体勢に入っている男の姿がある。
「デザート、召し上がれ」
男は僅かに微笑んだ。
その直後、ホテルの室内に銃声が3発響いた。
いつも見てくださりありがとうございます。
GWは沢山更新しよう、そう思っていた時期が私にもありました。
というか、もう2日しかないよ…
時間が経つのは早い。
良ければお付き合いください。




