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【現実ノ異世界】  作者: 金木犀
【卓也VS廿六木VS後鳥羽 下】
408/417

55 標的

 少し離れたところで後鳥羽が死と再生を繰り返している中、それを主に持つ霊獣フェニックスが俺に頭を垂れ、光る玉を差し出してくる。

 両隣に人間態で具象化している愛する我が上位存在たちは、それを『霊獣の心臓』と言った。

 これを破壊することで、霊獣を完全に殺すことが出来るのだと。


 彼女は決して他者からは殺されず、宿主にも"不死性"を付与できる存在だが、自ら死ぬことは出来ると…。

 そして俺は計らずも、唯一人間が不死鳥を殺すことのできる手段を獲得したらしい。

 彼女を自殺に追いやるという、最難関のルートで…。

 しかしまだ問題は残っている。


「……二人の話を疑っているワケでは無いが、罠…ってことはあるよな…?」


 あの光る玉が霊獣にとってどれだけ重要かの説明を受けた俺は、それでもすぐに取引に応じることは出来なかった。

 あれでおびき寄せて俺を殺そうとするっていう作戦かもしれないからだ。

 いくら先んじてユニたちを解放したとしても相手は霊獣…素っ裸にひん剥いたって油断はできないし、100%信頼するなんてありえない。

 それを分かっているユニは遠慮がちに俺に話しかけた。


『…あたしはタクを愛しているから、これはあくまで一般論として聞いてほしい』

「お、おう…?」


 急に愛とか、照れるじゃん…。

 でもこの状況で何を言うつもりなんだろうか。


『…上位存在が、正式な取引ならともかく、人間相手に自分の核を囮にするなんてありえないと思う』

「そうなのか?」

『ああ…。霊獣の多くは、やっぱり人間を下に見てるし…プライドって言うのかな…。自分の尊厳とも言える核を囮に…っていうのは想像しづらいかも知れない』

「なるほどな。つまり騙し討ちなどはなく提示してきた内容は真実で、だから信じて取引に応じろと」

『取引は…まあ、判断はタクに任せるけど』


 霊獣のスタンスは分かった。

 いくら勝利するためとはいえ俺みたいな人間風情に核をちらつかせることはあり得ないと。そういうものなんだな。(差し出すのはいいのかよ…と思うけど)

 しかし納得しかねる部分があるな、その意見は。


「じゃあユニは、俺がピンチになった時、自分の核が囮に使えるとしても、やらないか? 人間相手に。それで一緒に生きようとは思わないか?」

『………やる、かもしれない…。離れたくは、ないよ』

「だろ? ありがとな。多分相手もそんな状況だ」


 フェニックスは自分の命と引き換えに後鳥羽を助けてくれと言った。

 それはつまり命に代えても後鳥羽を助けるという意思のあらわれだ。

 俺を殺すことで後鳥羽のループが解除される確率と、俺に核を渡して約束通り解除する確率。

 どっちをフェニックスが多く見積もっているか…俺は後者の方を下に見ていると思っている。

 さっきまで殺し合っていた相手をいきなり信用するより、自分を信じて一か八かの賭けに出るだろうよ、フツー…。

 ユニや琴夜ほど核を差し出すということに驚けていない。悪いが取引は不成立だ。

 こっちは班員の命も背負っているんでな。


『私を信用できないなら、霊獣のどちらかにお渡ししても構いません。だからどうか…彼を助けてください…』


 受け取るのはユニや琴夜でもいいと言うフェニックス。

 確かにそれなら問題はないように思えるが…


『タク…』


 ユニが困ったような、お願いするような顔でこちらを見つめる。

 この子は…優しいな。この子の中では『霊獣が人間に核を差し出すなんて』という事実がよほど驚いたのだろう。


『卓也さん…そろそろ良いのでは?』


 琴夜はユニの居ない間に色々と準備をしているのを見ていた為、俺の目論見をある程度知っている。

 だから中々取引に応じない俺を促した。

 別に変に焦らしたりとか勿体ぶったわけではなく、ちゃんと警戒していたんだけどな…。

 まあユニに取りに行ってもらえばいいか、あの核は。


「…いいだろう。ユニ、警戒しつつあの核を取ってきてくれ。琴夜は火実と皆川を1層に呼びに行ってくれるか?」

『分かった!』

『承知しました』


 こうしてそれぞれが動き、俺の手の中にはフェニックスの核が握られ、班員の皆が傍に来た。

 核はソフトボールくらいの大きさで少し温かく、光っている。

 質感はガラスとか石みたいな感じで、まあ、握りつぶせそうではあるな。

 今すぐこれを砕けばフェニックスは消え、その不死性を失った後鳥羽も次の爆破で死ぬ。

 まあ、しないけど。


「火実、適当な蘇ったタイミングで爆発のカウントを止めてくれ。その間に皆川は爆弾を解除」

『はい』

『わかったよ』


 さっきと逆の事を命じる俺に二つ返事の二人。

 他の皆も特に何も言及してこない。この状況が勝利したことを表しているが、何故それを取り下げるのかまでは分からないハズ。

 それでも信用して従ってくれているのだ。

 あとで勝利の美酒を酌み交わそう。(一部飲めない年齢のヤツもいるが…)



『璃桜!』


 フェニックスの叫びが響きわたる。

 無事手順を踏んで解除し、後鳥羽は綺麗な状態で蘇り、そして…膝から崩れ落ちた。

 幾度となく死を繰り返し、精神が焼き切れたのだろう。

 これが俺の描いた詰みセーブ作戦の成果だ。


 しかし取引した以上、このまま放置するわけにはいかない。

 ウチのユニに感謝しろよ?


「おい、起きろ」


 地に伏した後鳥羽の腕を掴み強引に起き上がらせると、虚ろな目をしていた。

 焦点があっていないどころか、物を映しているのかどうかも怪しい。まだ心ここにあらずといったところだ。

 仕方ないので叩き起こしてやるか…。

 

「いつまで寝てんだ後鳥羽。そんなんじゃ明日のメインイベントを見逃すぞ」

「……んの…ことだ…」

「お、流石にタフだな、精神力も」


 俺の呼びかけに僅かな反応を示す。

 これだけのヤツなら、本来はもっと時間を賭けなきゃダメか。

 …って、今さらいいんだけど。


「…なにが……言いたい…………」

「おお、そうだそうだ。俺はフェニックスと約束をした。お前を助けるとな。しかし心が死んだまま体だけ元通りで『はい約束守りましたー』とか、そんなことは流石にしない。だからお前が思わず目を覚ますような情報を教えてやる」


 というか、俺はずっとそれがしたかった。しかし策略によりできなかった。

 だから一旦後鳥羽を退ける必要があった。

 殺す気は毛頭ない。彼も被害者みたいなもんだ。

 だから…


「誰にも言うなよ?」


 俺はある程度焦らし後鳥羽の神経を集中させる。

 そしてハッキリと告げた。


「明日、廿六木を殺す」


 そうだ。

 最初から俺の標的はヤツのみ…。

 星野さんを傷つけた罪、償ってもらうぞ。


いつも見てくださりありがとうございます。

ようやく、ここまできたか…梓虐

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