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【現実ノ異世界】  作者: 金木犀
【卓也VS廿六木VS後鳥羽 下】
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54 不死鳥が死ぬ日

「ガァっ!」


 短い断末魔。特公職員にして卓也と同じ霊獣使い後鳥羽の声である。

 詰みセーブが完成し、5分弱が経過した。この短期間で既に20回以上は爆死している。

 皆の協力のおかげで『爆破1秒前』というこれ以上ない詰みセーブが完成し、死のループが彼を襲い続けていた。

 そして、卓也の集中力と警戒心も最高潮に達していたのだった。


(さぁ、来るなら来い…!)


 殺せない後鳥羽に対し抜けられない死という状況を作り出した卓也達だが、次に警戒すべきはその連鎖を中断されることである。

 例えば復活から爆発までの僅かな合間に防御力を高め『爆発で死なないようにする方法』があるとする。

 それに対し卓也は、生き残り死ななかった状態をセーブされる前に再殺できるよう、いつでも飛びかかり首を折ったり喉を貫こうと構えていた。

 あるいは能力を無効化できる味方を召喚されてもいいよう、後鳥羽だけでなく周囲も警戒している。


 例えばフェニックスが無限ループの原因たる卓也、ないしは第三者の存在に気付き周囲を攻撃し始めるとする。

 そうされないように、既に班員はいのりの助力で第1層に移動を完了させていた。もちろん腕は元通りにして。


 他にもあらゆるIFを想定しこの場面に臨んでいた。

 少しの違和感も見逃さないよう、その全神経を注いで周囲を警戒している。

 それ故だろう。再生と死の絶望的に短い(いとま)に発する後鳥羽の声を、少しづつ、断片的に拾うことが出来たのは…


 ―――め…

(…ん?)

 ―――に…

(何か言っているのか…?)

 ―――いに…

(…"絶対に"?)

 ―――めろ…

(………絶対に…やめろ…?)


 卓也はこれを聞き、はじめは命乞いの類と予想した。

 だがすぐに違う事を理解する。

 後鳥羽の性格からして、俺にそのような事をするのだろうか?

 過ごした時間も交わした言葉も少ないが、後鳥羽がそんな人間ではないことを卓也は十分に理解していた。


 では誰に対しての言葉か。

 その答えははすぐに分かることになる。
















 _________
















 P-2


 璃桜が私に対して良い感情を持っていないことは、なんとなく分かっていた。

 ただ、その根本を理解していない私は彼に受け入れてもらおうと、もっと尽力をするようになる。

 彼にとって脅威となるものは率先して排除し、断られてもこっそり力を貸した。


 それしか知らない


 ひょんなことから最初にマスターとなった人間はあまりに醜悪だった。

 力を手にした途端、脅し、すかし、色と金にまみれ、贅の限りを尽くした。

 人間をよく知る霊獣に言わせれば

『ああ、そんなんフツーフツー。でもそれが面白くない? ピークから転落の時の顔とか、傑作だよ?』

 私は醜すぎて耐えられなかった。

 だから契約を切り、もう人間に関わらないことにした。

 そうして彷徨う事数百年…。とうとう現れる。

 水晶玉のように清らかな心の持ち主。とりわけそんな人間は少年時代に色濃く出るのだ。

 ピュアオーラ純度100%。


 でも今際の際から救ったら、元気に走り回っていた。

 その様子があまりにも可愛くて、ずっと見ていた。

 10年くらいずっと…


 それだけじゃ足らなくて、憑いたら嫌われ始めてしまう。

 嫌われているというより…煙たがられている? よく分からない。

 人間のことはあまり知らないから。

 ただ、一方的に愛でるのが不正解だったという事に気付いたのが、最後の瞬間なのが、悲しい。


 無限の爆破攻撃。

 恐らく、璃桜の状態保存を利用したのだろう。

 そしてそれは単独の業ではない。伏兵が居たハズ。

 恐るべき男だ。本命から気を逸らすために霊獣すら囮に使うなんて…。


 丁寧にこちらの手札を落としつつ、新たなカードを引かせないよう動かれた。

 完璧とはいかないモノの、それに委ねる思い切りの良さは称賛に値する。

 我々は…もっとよく観察していれば見破れたのだろうか。

 きっとそうさせない細工も沢山してきただろうけれど。


 璃桜も、今の状況では無限の爆破を何とかする術がないのを理解した。

 だから彼の走馬灯のようなもの…心の奥底の本音が流れ込んできたのだろう。

 私に恩を感じつつ、自分の力を見失ってしまったこと。

 それが私に抱いていた感情の正体。それを受け抱いた私の心が璃桜に逆流し、あの発言…


 絶対にやめろ


 これから私がやろうとしていることを悟ったのだろう。











 _________














「―――っ! なんだ?」


 神経を尖らせ後鳥羽と周囲を観察していた卓也に訪れた大きな変化。

 突然空間から一人の女性が現れたのだ。

 金色が差し込まれた深紅の長い髪と、十二単を身に纏いどこか悲しそうな瞳をした女性。

 初めて見る姿だが、卓也にはその正体がすぐに分かった。

 後鳥羽璃桜の契約した霊獣、その人間態であることは発するオーラからすぐに辿り着く。


「…やる気か」


 女性が水をすくうように差し出した両手の上に光る球体が現れ、自身を直接攻撃する気だと直感する卓也。

 だがそれを"彼女たち"が否定した。


『落ち着いてください、卓也さん。あれは攻撃ではありません』

「琴夜!? もう戻ったのか…」

『タク! 寂しかったぞ!』

「ユニも! よく戻ったな」


 予想外のタイミングで二人が帰還し、思わず表情が緩む卓也。

 しかしすぐに気を引き締め、先ほどの琴夜の発言の真意を問いただした。


「…あれが攻撃じゃないって、分かるのか? 琴夜」

『はい。もう彼女に敵意はありません。その証拠がアレ…"霊獣の核"です』

「霊獣の…核? 心臓のようなもんか」

『ああ。あれが破壊されたら、フェニックスはこの世界から消える。外部からは壊せない…自分で取り出すことしかできない、フェニックスという存在そのものがアレに集約されているんだ…』


 同じような存在のユニコーンにはあれの重要性がよく分かる。

 故に、敵ながらフェニックスのあの行動に多少の緊張感を覚えた。

 そしてそれは話を聞いた卓也も同様で、敵が何故そんな行動を取るのか分からずにいる。

 そんな彼らに透き通った声が届く。


『貴方の霊獣は解放しました。そして私の核を捧げます。だから…』


 フェニックスの―――


『璃桜を…彼を助けてください……!』


 心が折れた―――



いつも見てくださりありがとうございます。


鬼滅の刃の映画見てきました。

普通に泣いた…石田彰さんはやっぱりすごいわ…。

もしかして400憶の男って、猗窩座じゃね?

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不死殺しは『刀語』がよかったなぁ
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