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【現実ノ異世界】  作者: 金木犀
【卓也VS廿六木VS後鳥羽 下】
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40 行かない組の思惑

『あ、水鳥さん。お疲れ様です!』

『ええ、お疲れ様です』

(やった、挨拶返された)

(ズルっ)


 特対職員も


『水鳥さん、こっちのカメラに笑顔くださーい』

『あ、はい。ちょっと恥ずかしいですね…』

(ぐはっ!)←鼻血

(ぶふぉ!)←悶絶


 一般人も


『美咲お姉様…さ、サインください…!』

『ええ、いいですよ』(←明朝体サイン)

(尊ひっ…!)←吐血


 たぶん、女の子も

 みんな美咲に夢中だ。

 特対の…いや、今やみんなのアイドル。彼女の動向に、世間が注目している。

 それは超能力と共に突然舞い降りた。


「ねぇ…美咲はどうする?」

「………どうって?」

「作戦…参加する?」

「……日中は…ずっと仕事が入っていますね。敵が夜に来てくれるなら…」

「でも、いつもヘトヘトじゃない…仕事終わりは」

「そうですね…。戦闘よりも気を使う分疲れるわ…。なごみはどうするの?」

「私はホラ…そんな強くないし…」


 食堂に残された私たちは、二人でため息をつく。

 もう食事はとっくに無くなっており、ただただ時間を浪費しているにすぎない。

 卓也くんに言われた作戦会議の時間まであと1時間弱。

 参加するのなら、いい加減部屋に帰っておかなければならない。

 にもかかわらず、私たちはこの場を動けないでいる。


 いつもの明るい美咲とは打って変わって、その表情はジメジメ曇り。

 こんな表情にさせることが出来るのは、おそらく卓也くんだけだ。


 彼女は元々根が優しくて、誰かを恨んだりなどしない子だった。

 あたしたちピース生には親に見放されて施設に来る子が結構いて、捨てた相手を恨んでいる子が一定数存在する。

 でも美咲は同じ境遇にもかかわらず、両親に恨み言を吐いているのを聞いたことがない。

 それどころか、逆に周りを励まして、雰囲気を良くしてくれていた。


 そんな彼女でも、視力と歩く能力を失った時は流石に自棄になっていた。

 どうして美咲ばかりが不幸を重ねるんだと、本人も周りも思っていたことだろう。

 そしてそんな彼女だからこそ、黒瀬くんの豹変も頷けた。

 ただの練習試合の相手。美咲の能力の暴走を一番間近で見てしまった。

 責任感がおかしな方へ転じて、周りを傷つけるようになった。不幸な数年間…誰にとっても何もない時間が長く続いた。


 そこに現れたのが彼だ。

 突然、他の治療術師と同じように現れ、あっさりと誰も出来なかった美咲の完治という偉業を成し遂げた。

 しかも皆を巻き込んで仇敵であるネクロマンサーをも炙り出す。

 公式には、ネクロマンサー本人は衛藤班の銃撃で弱ったところを四十万班が発見した…ということになっている。

 でも卓也くんが暗躍していることは、彼を知る一部の人間は知っていた。

 その巻き込まれ体質故、たびたびココに避難しては準備をしている。

 今回も大したことは無いと思っていたのに…


「いやー…彼も酷いよねぇ。協力するか、お別れかなんて…あはは」

「…」

「…いやでもどうせ、大丈夫なヤツでしょ?」

「…私は、本当に危険な相手だと思っていますわ」

「なんで…?」

「勝算があるというのは多分本当なのでしょうけど、それでも彼が"万が一"を想定するくらいには…危険な相手だからかしら」

「それは…」


 分かっている。

 危うくないなら最初から私たちに声なんてかけない。

 声をかけるときは戦略上必要な時か、本当に危険な相手…としか思えない。

 でも、さっきはいつもと感じが違った。

 それは美咲も感じている。違和感…。


「…どこ行くの? 美咲」

「ちょっと、確かめに行くわ…」

「確かめにって、どこに?」

「卓也さんのところに」

「あ、ちょ…私も行くよ」












 __________________













「よくよく考えたら、持ち切れないな…」


 俺は志津香や光輝といった協力が確定している人たちを先に駒込さんの部屋へ向かわせ、ひとりパントリーへと足を運んでいた。

 打ち合わせをするにあたり飲み物くらいはご馳走しないとな…と思ったからである。

 そして全員が参加したとして、それだけの本数の飲み物を両手で持ち切れるはずもなく…袋を取りに部屋へと戻ってきた。


「塚田くん」

「あれ、みゃーさん?」


 俺の部屋の前には鷹森班の班員のひとりである【小木曽(おぎそ) 美也(みや)】が立っていた。

 彼女は同じく班員の【小木曽おぎそ 沙也さや】の妹さんで、鷹森班にはあとから加入したとか。

 そして何故か最年少なのにみんなから【みゃーさん】と呼ばれていたので、俺もならってその名で呼んでいる。他の班員同様、ここ最近けっこう仲良くなった。

 少し垂れ目がちな大きい瞳に泣きぼくろは、彼女のおっとりした性格をそのまま表現しているようだ。

 そんな彼女が何故ここにいるのか確かめるために、俺は質問をしてみることに。


「どしたの? 打ち合わせ部屋はここじゃないけど」

「いえ、私の能力では今回はお役に立てそうにないので、伝言を」

「ああ、そういう…」


 申し訳なさそうにそう告げる彼女は【空も飛べ(sky's the)るはず( limit)】という、『対象に飛行能力を付与する』能力を持っている。

 確かにあると超便利だが、今回は危険だから待機しててもらうのが良いかもしれないな。

 付与される側にも飛行のコツみたいなのがいるから、鷹森班と俺以外の者に突然付与してどうこうできるワケでもなし。作戦には組み込めない。


「それで、お伝えすることを考えてきたのですが…」

「おう。なになに?」

「無事に帰ってきたら、今度購入するゲームを一緒に見繕っていただけませんでしょうか」

「ゲーム?」

「はい」


 何かと思えばゲームを一緒に選んでくれとは、予想外だったな。

 彼女はアクションはそれほど得意ではないが、その分戦略系のゲームに長けていた。

 鷹森班のみんなで一緒にやる時も、金太郎電鉄やごちそうストリートなんかはかなり良い成績を残している。

 しかしいかんせん持っている種類が少なすぎて、彼女の本領がそこまで発揮できていない。


「レパートリーを増やしたいってこと?」

「はい。わたし殴り合うゲームや飛行機で撃つゲームなどは不得手ですので、もっとみなさんに勝てるゲームを買って、練習したいんです」

「そっか」


 知らなかったな。

 まさか彼女がそこまでゲームが好きで、しかもそこそこ皆に対抗心を燃やしていたなんて。

 まあ付き合いが短いだけかもしれないが。


「いいよ。俺でよければ付き合うよ。この件が片付けば使える時間も増えるだろうしね」

「ありがとうございます」


 嬉しそうに目を細めて、両手を胸の前で合わせるみゃーさん。


「ちなみに、こっそり練習したいんで、みんなには内緒でお願いしますね」

「りょーかい」


 そういってエレベーターの方へと歩いていくみゃーさんを見送った俺は、部屋へ入り袋を取って再び廊下へと出た。

 するとそこには別の人物が立っていた。


「ああ、和久津か」

「やあ、塚田くん」

「俺に何か言う事があって―――」


 喋っている途中で視界が揺れる。

 パンっという破裂したような音と、頬に熱と痛みが走った数秒後だった。

 俺が和久津にビンタされたことに気付いたのは。


いつも見てくださりありがとうございます。

一応スイッチ2を予約しました。アマゾンで。

やる予定のゲームとかないけど。


1の時も、全く情報収集すらしていなくて、ゼルダのBotWの動画を見て

面白そう!と思った時にようやく気付いたくらい。

だから買ったのは2017年の末。

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