15 絆とか
「おい、アンタんとこのヒーラーどうなってんだ!? つかホントにヒーラーか?! アレが!」
卓也と敵四人の応酬を見て取り乱す戸川。
おかしな強さの能力者四人に回復役として配置された人間が無双しているので、事情を知らない彼からすれば仕方のない混乱なのだが、観察に注力したい火実ら三人は早く静かになるようなだめる。
「落ち着け」
「落ち着けって…デカくなったりしてるし、てか回復能力使ってないし…!」
「使ってるじゃないですか、巨大化とか発勁とか」
「ヒールヒールどうした!?」
「副班長は回復系というより癒し系なんだよ、川井遥(女優)とか高めぐみ(グラビアアイドル)みたいなね」
「誰!?」
それぞれが適当になだめた結果、ますます混乱が深まる戸川。
それと皆川の列挙した一昔前の癒し系タレントは二十代の三人には全く刺さらず、逆に皆川がショックを受ける始末である。
「いいから黙って見てなよ。あれがウチの副班長だ。つか手持ち無沙汰なら刀の一振りでも作って副班長に届けて差し上げろ」
「………」
よく分からないが言われるがままに戸川は金属を集めると、それを刀に成形し操作した。そして超人化を解除した卓也のすぐ横の地面に突き刺し渡す。
届け物に気付いた卓也は一度火実たちの方を向くと軽く手を振り礼をする。
そして目の前で真横に掲げて
「いい感じだな」
と呟いた。
当然ながら銘もなく、柄も鞘もない、ただ形だけの日本刀。刃引きはしていない。
金属の持ち手と鍔と刀身があるだけのオール金属のギリギリ刀。
それでも卓也が持つことで、強烈な殺意を纏うのである。
「…回復の調子はどうだ?」
「…なんとか。ようやく意識がハッキリしてきましたよ」
「私も、羽がだいぶ生えてきた」
「俺は…イテーけど軽傷だ」
一番先頭に立つノアが卓也を見つつ後ろにいる三人に呼びかけた。
最初の応酬で比較的軽傷だった彼は、アルファード(ゴリラ)がふっ飛ばされた隙に尻尾でヴォクシー(ハチ)とエスクァイア(クモ)を引き寄せそれを庇うように前に出る。
その後二人を起こすと回復に専念するよう指示を出した。
一方の卓也もノアたち三人が揃ったのを確認すると、ゆっくりと歩き出す。
視線をノアに合わせながら獲物を前に舌なめずり…とまではいかないが舐るように見ながら一定の距離を保ち、やがて火実たちとノアの間に来る。
万が一人質を取られることのないよう、しかしそれを悟られないように巧妙に移動をした。
その間ノアは少し遠くにいるアルファードも引き寄せ、何とか四人で固まることができたのである。
無論瞬殺しようと思えばできる。が、卓也は待っていた。彼らが助けを呼ぶのを。
後鳥羽璃桜をここで討つために、あえてすぐには無力化しなかった。
後鳥羽が来るまでの時間が欲しいノアたちと、助けを呼ばせるために少し泳がせる卓也。
両者の利害は一致していた。
とはいえ単にボーっと見ているわけがない卓也は仕掛ける。何も五人全員を五体満足にしておく必要などないからだ。
貰った一振りの名もなき刀を携えて、刺客に襲い掛かろうとする。
「俺らが襲撃部隊に選ばれたのは、実力も勿論だが(ここ重要)、毒とか糸とか…とにかくヤツを殺さずに捕まえる為の手段を持っているからだと思われる。が、今となってはそれも難しい」
「難しいって、そんな簡単に…」
一見すると弱気なノアの発言にエスクァイアが反論しようとする。
が、それを手を軽く上げて止めると真意を話す。
「落ち着けって…俺が言いたいのは諦めろってことじゃなくて、生け捕りに『しようとしても』難しいってことだ。つまり、全力で殺りにいって、丁度ほどよく死なないくらいにできるってことだ」
「ああ…そういう」
「…………それよりヤツの能力はなんだ? 俺みたいなゴリラに変身ができるみたいだが」
「そういえば、自分の糸もおかしな変化を受けました」
「おかしな変化?」
「なんというか…伸縮性が無くなって普通のロープみたいになったというか」
「でもちゃんと治療もしてたよね? ノアにやられた候補生とかさ」
それぞれの報告をまとめても『○○の能力』と断定するには至らず、思わず全員が考え込む。
ここにきて"ひとり1能力"という前提まで覆す必要があるかもしれないという方向に舵を切りかけるが、生憎とここは会議室ではなく戦場。
考察よりも目の前の問題に対処しなければならない。
「考えても分からんし、一旦後回しだ。超強い治療術師が相手と思っておこう。全力で殺しにかかるぞ」
「「「了解!」」」
ヴェルファイア以外の四人がまとまる。
そのタイミングで卓也も声をかけた。
「よォ…作戦タイムは終わったか?」
「…………ああ」
「そうかい。まあせいぜい長持ちしてくれや」
意趣返し。
火実がノアにやられたことをそのまま返す卓也。
部下の仇は上官が取る。
「あんた…性格悪いって言われねーか……?」
「初めて言われたな」
そういうと、卓也は振りかぶり手に持った石をノアめがけて発射する。
「原始時代アタック!!」
こちらも火実の仕返しと言わんばかりのネーミングを付けて攻撃を繰り出した。
自身の筋力と石の重さを操作して放たれた攻撃は投石の域を超え、もはや砲弾となってノアに迫り…
「―――っ!」
ノアの右肘を軽く消し飛ばした。
そして痛みが来るよりも、石が地面に着弾し土が抉れるよりも先…風圧が通り過ぎたことでノアが僅かに目線を右にずらしたところで。
「そらっ!」
急接近していた卓也の右手がノアの顔を掴むと、そのまま後方へと投げ飛ばすのだった。
「ノアっ―――がっ…!?」
目の前で仲間がやられたアルファードがゴリラに姿を変えようとした矢先に、卓也の地獄突きがモロに入る。
初動の差。まともにやり合うことなく、アルファードは膝をつき喉を押さえながら苦しみはじめた。
「変身する前に叫ぶやつがあるか」
「っ!」
「このっ!」
「おっと」
クモの糸とハチの針を上体を思いきり反らして回避する卓也。そのままバク転のような形で2撃目3撃目を回避すると、左手に持った刀を使って飛んできた針を弾く。
キンキンキンと金属音が響くと、針は卓也に刺さることなく地面に落ちた。
糸の方はまたしても手で受ける。
そして右前腕部に張り付いた糸を掌で掴むと、数値を操作して反撃を試みた。
しかしそれを読んだエスクァイアはすぐさま手から糸を切り離す。
しかし
「同じ手は使わないっ…! っと」
「ぐっ……!」
切り離された糸は卓也の数値操作で硬度と長さを変え、まるで伸びる棍棒のようにエスクァイアの腹を突くと、そのまま奥にある木まで運び叩きつけた。
と同時に左手の刀の切っ先をヴォクシーに向け伸ばしていた卓也は腹部を刺し貫いた。
「あ…ぐっ…!」
腹部に傷を負い膝をつくヴォクシーの脳天にかかと落としを決め、そのまま元いた位置まで走り出し、同じく地獄突きを食らって膝をつくアルファードの顔面に飛び膝蹴りを叩き込みKOする。
まるで流れ作業のように再び四人を叩きのめす卓也に、投げられたノアは恐怖する。
(俺たちじゃ、無理だ…。こんな…鬼のようなヤツが相手じゃ……。でも、ボスなら………。”あの状態のボス“なら負けない…!)
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時は遡り、まだ卓也とノアが交戦する前のこと。
ヴェルファイアは才洲と対峙していた。
担当を高らかに宣言したヴェルファイアと、それを聞いていた才洲は自然と皆から距離を取りお互い睨み合う。
いや、睨んでいるのはヴェルファイアの方だけで、才洲は自分がなぜ目の前の女から恨まれているのか見当がついていなかった。
「覚えてるか? あたしのこと」
「…? どこかでお会いしましたっけ」
「“パープルリンクス”ってチームのリーダーだ、あたしは」
「すみません、いちいち覚えていませんね!」
とてもいい笑顔で言い切る才洲に、表情がより一層強張るヴェルファイア。
自然と気も高まり、すぐにでも襲いかかりそうなほどである。
それをギリギリで抑えているのは、ひとえに仲間のため。やられたチームメンバーに詫びさせるために、彼女は動いていた。
「その様子だと、私はお仲間の仇ってわけですね」
「そうだ…。アンタのおかげで未だに私の仲間は一人で飯も食えない。この無念がアンタに―――」
「分かりません!」
ヴェルファイアの恨み言を遮り、元気よく笑顔で発言する才洲。尻尾をブンブンと振り卓也の周りをうろつくワンコ系女子の片鱗が見える。
しかし直後に、驚くほど冷たい目でこう語るのであった。
「以前の私が対応してたってことは、貴女…もとい貴女たちは結構なチームだったってことですよね? 街の半グレなんか比じゃないくらいの」
「……当然だ」
「色んな人達を殺して…るかどうかは知りませんが、迷惑をかけて、それで自分たちがやられたら無念? バカも休み休み言ってくださいね」
「なに……」
「貴女たち、仲間との絆とかアピってますけどね…それくらい普通の組織にでもありますからね? しかも誰にも迷惑をかけずに。どうしてそれができないんでしょうか。ていうかもうそろそろいいですか? 私も副班長の戦ってるとこちゃんと見たいんで」
多くの犯罪者と相対してきた才洲の理。
犯罪者が絆アピールをすることに辟易としている様子だ。
それを聞いていたヴェルファイアは我慢の限界を迎え…
「……もういい」
静かに、しかし確実に変身を遂げた。
両手から鎌のようなモノが生え、薄い緑の羽が背中を彩り、他の四人と同様体が大きくなる。
カマキリの能力を持つ彼女の基本スタイルだ。
「…殺す」
「無理ですね」
奇しくも似たような攻撃方法の二人がまみえる。
塚田陣営VS後鳥羽陣営
その別バトルの火蓋が切って落とされようとしていた。
いつも見てくださりありがとうございます。
冬アニメ
オススメはありますか?
今のところリゼロとダンまちしか見てませんぬ!




