12 うらやまけしからん寮
【登場人物】
・塚田 卓也…本作の主人公。あらゆるモノの数値を操る能力者。
住んだ人間が次々と亡くなるという曰く付きのお屋敷を内見したことで、そこを拠点に活動する『死神代行』と出会う。悩んでいた死神代行の話を聞きちょっとした助言をしたところ感謝しながらお屋敷を離れたため、そこを買い取ることに。
後日、税金などの資金を稼ぐため依頼を探しに宝来を訪れる。そこで、いのりや真里亜の通う【聖ミリアム】で【生徒失踪事件】が起きていることを知り、調査を受けることになった。
・南峯 いのり…テレパシー能力者。聖ミリアム高等部1年生。友人の周防・板井と校内のカフェで昼食をとっていたところ、佐藤に首を触られている卓也を発見し取り乱した。
学校で卓也と会えたことに少しテンションが上がっている。
・塚田 真里亜…モノを作り替える能力者。聖ミリアム高等部3年生で、卓也の妹。
聖ミリアムで二年間生徒会長を務めたスーパー優等生。品行方正で教職員からの信頼も厚く、運動能力・学力ともに優秀な完璧超人。
ホームルーム中、こっそり学校に来ていた卓也を見かけ突撃し、無理矢理午後の案内役となった。
・花森 恵…聖ミリアムでシスターを務める。調査初日の午前中、学園を案内する役として卓也に同行した。
おっとりした雰囲気と面倒見のよさで、幼稚舎から高等部の男女問わず人気がある。
怒らせると怖い。
・佐藤 聖來…真里亜の友人。高等部3年生。
のんびりした雰囲気と優しい笑顔の【THEお嬢様】。基本は誰にでも分け隔てなく優しいが、男子の大きい声や体格が怖くて苦手。だが筋肉フェチで、日焼けしていない格闘家や水泳選手のような体つきが好き。
勉強は得意だが運動があまり得意ではない。
・小笠原 洋子…真里亜の友人。高等部3年生。
活発でノリが良く、男女ともよく話す人気者。真里亜にも対等に気取らず話すことが出来る貴重な友人。
勉強はそれほど得意ではないが運動神経抜群。
・春日 美鈴…FOS団(ミステリー研究部)団長。高等部2年生。
この世の不思議なものを探す為に日々活動している。普段は図書館三階にある部室で本やインターネットによる調べ物をしているが、フィールドワークもよく行っている。
行方不明になった生徒の一人の"消え方"があまりにも不自然だったことから、事件を【超常現象】によるものだと感じた。
・尾張 悠人…FOS団(ミステリー研究部)副団長。高等部2年生。
春日の幼馴染であり、家が隣同士なことで家族ぐるみの付き合いをしている。
超常現象のことで暴走しがちな春日のブレーキ役として立ち回っている。成績優秀で運動神経も抜群なので以前から様々な部活動・委員会の勧誘を受けていたが全て断ってFOS団に所属している。
・服部 新一…学校法人 聖ミリアム学園の理事長。
学園で起きている生徒の連続失踪事件に頭を悩ませていたところ鬼島から連絡を受け、宝来で卓也に調査依頼をすることに。
・周防…いのりの友人。高等部1年生。幼稚舎からのミリアム生で生粋のお嬢様。華道部に所属している。
・板井…いのりの友人。高等部1年生。周防と同じく幼稚舎からのミリアム生で生粋のお嬢様。茶道部に所属している。
・市ヶ谷 昴…高等部3年生。二番目に行方不明になったとされる生徒で、元図書委員。
行方不明になったことが発覚する前日に図書館の三階で春日と会話をするが、その後三階入口付近で読書をする春日の前を通らず忽然と姿を消した。
誰かと待ち合わせをしていたということだが、果たして…。
・椿琴夜…黄泉の国の住人にして死神代行業務を務める。
本合五丁目にある豪邸に張り込み、住人の魂を黄泉の国に送っていた。ただしこれはあくまで業務であり、本人はとても嫌がっている。
卓也の説得もとい改善提案を受け入れ、感謝しながら屋敷を離れていった。
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「はい、これが市ケ谷くんと八丁さんと小川さんの部屋の鍵ね」
「ありがとうございます、寮母さん」
「ここにいるから、見終わったら戻してちょうだい」
「はい」
"高等部生の寮"に着いた俺たちは、まず1階の管理人室で行方不明となった三人の部屋の鍵を借りに来ていた。
高等部3年の【市ヶ谷 昴】、2年の【八丁 冴子】、1年の【小川 愛華】の三人の部屋がこの建物の中にある。行方不明者の中で唯一の中等部生である【岩城 丈】の住む寮はこの建物とはまた別にある。
高等部生用の寮は10階建てになっており、2~5階までに男子生徒、6~10階に女子生徒が住んでいる。
そして1階には管理人室や食堂、浴場などの共同スペースが設けられていた。
特対施設程ではないが、かなり広い。それに滅茶苦茶豪華な造りをしている。流石はお金持ち学校といった所だろう。
また1階エントランスには『月間スケジュール表』というホワイトボードが設置されており、そこに"炊飯""洗濯""スマホ・PC"といったマグネットが貼られていた。
気になったので真里亜に聞いてみた所、この寮で自主的に行われる【庶民授業】の時間割のことだった。
この学園では幼稚舎~高等部を完全送り迎えで通学したり寮の閉じた世界で過ごしてしまうと、たまに【超浮世離れした純粋培養お嬢様お坊ちゃま】が誕生してしまうらしい。
そのあまりの世間知らずさを危惧した学園がそれぞれの寮で普通の暮らしを知っている生徒を集め、日常生活のアレコレを教えるというイベントを放課後や休日に行うようになったのだという。
内容は『お米は洗剤で洗わない』とか『カップ麺の作り方』とか『洗濯機の使い方』といった、普通に暮らしていれば身に付くような冗談みたいな内容から始まるらしい。
しかしこれまでの人生で、ご飯は専属の料理人が作り洗濯物は着たものを寮から送ると洗われたものが届くという生活をしていると、本当に絵に描いたような人間が出来上がるのだと。
なので初歩の初歩から始め徐々に一般の感覚を身に付けていけるように、それぞれの項目にレベルが設定されていた。
これが思いの外保護者のウケがよく、寮生以外の生徒からの受講希望者も結構居るのだという。
卒業してからも名家で過ごし知識を使わないという事もあるのだが、授業自体が楽しかったと語る生徒は沢山いるらしい。
授業をする側には報酬や内申点といったメリットは全くないが、受講生があまりにも普通の事で感心してくれるので案外ノリノリでやってくれるという。
だが『庶民の味・牛丼を作ろう』の授業で"松阪牛の切り落とし"が用意されていた時は、流石に講師役の生徒も苦笑いだったそうな。
俺も『お嬢様・お坊ちゃまの知らない街中華の世界』という授業でもやろうかな…
「まずは市ヶ谷くんの部屋に向かいましょうか」
庶民授業をちょっと楽しそうと感じていると、真里亜から行き先の提案を受けそれに応じた。
春日のいる図書館3階で消えたとされる生徒。元図書委員の市ヶ谷だ。
俺は真里亜のあとについてエレベーターで5階に行き、彼の住む部屋を目指した。
「名探偵的には、この事件について何か分かりましたか?」
「イジんなよ…」
「ふふ…すみません」
「……まあそうだな。始めは生徒をさらって身代金でも要求するのかと思ったけど、どうもそうではないみたいだな。能力は使われているけど、犯人は内部の人間じゃないかと」
「というと?」
「まず非能力者の犯行は不可能だ。午前中シスター花森と敷地内をざっくり回っただけでも、監視カメラや警備員の数が凄かったし」
「まあ名家のお子さんを数多く預かってますからね。学園もセキュリティ面には相当力を入れてますよ」
「ああ。そして能力者による犯行だとしても、それぞれ行方不明になった生徒が最後に目撃された場所には能力の痕跡が無かったことから、設置型の能力が使用された可能性は低い」
「すると出入り業者などに扮して侵入し、網を張っておいてそれを離れた場所で待つ、ということはないと…」
「ああ。能力の内容によるから断言はできないけど、犯行時は生徒に直接接触したかある程度近くに居ないと厳しいと思う。それをどちらも見知らぬ外部の人間が行えたとは思えない」
「そのあたりは私よりも兄さんの方が能力を多く知っていると思いますから、そうなんですね」
俺の予想では、状況的に能力者・非能力者に関わらず"部外者"が犯行を行うのは厳しいと踏んでいる。
特にキモとなるのが転送能力の性質なのだが、離れた所から好きなものを好きなだけ飛ばせる能力なんてのは考えにくい。
これまで見てきた転送系に類する能力も、【手の中】の一員みたいにスマホカメラによるリアルタイム映像を必要とする者や、Neighborの嶋くんみたいに飛ぶためにその場所に一度訪れる必要がある者、特対の転送班みたいに陣を敷いたり手で触れる必要がある者…。どのタイプも能力を直接行使するか、下準備を要するものだった。
しかし現場には能力の痕跡も、怪しい物証も残されてはいない。そして部外者の侵入も容易ではない。
それだけなら、『実は便利な転送能力があった』で覆ってしまうのだが…
「あと、実はミステリー研究部の春日さんって子から気になる話を聞いてな」
「気になる話ですか?」
「市ヶ谷くんと最後に会話をしたのが彼女のようなんだが、どうやらその時"誰かに呼び出されて"図書館の3階に来ていたんだってさ、夕方に。で、入り口近くで読書をしていた彼女が気付かないうちに図書館から居なくなってたということらしい」
「怪しいですね…」
「だろ?春日の話した感じだと知人と会うみたいだったってことだし、外部の人間には無理だろう。スマホの履歴を見てもそれらしいメッセージが無いっていうから、校内で直接声をかけたんだと思う」
「なるほど…。ちなみにそのスマホはどこにあったんですか?」
「教室に荷物と一緒に置きっぱなしになってたんだって。警察が持って行ったから中身は調べられないけど」
俺は午前中に聞いた話をまとめて真里亜に伝え、内部犯の可能性が高い根拠とした。
まだあくまで春日一人の証言に基づいたか細い糸だし、探偵もどきな俺の推理なんて不確かではあるが、それでも進むしかない。
特に最初の生徒が行方不明になってから2週間が過ぎている。最悪全員殺されている事だってあり得るし、そうでなくても今日まで三食飯風呂付きで優雅に過ごしているというのは考えづらい。
だから1日でも早く助け出さないとな…。
俺の考えを真里亜に聞かせながら市ヶ谷の部屋があるという5階の廊下を歩いていると、少し前の部屋の扉が開き、中から一人の男子生徒が出てきた。
「あ……チッ」
「美濃部くん」
美濃部と呼ばれたその男子生徒はこちらを見るなり、いきなり舌打ちをかましてきた。
俺というよりも…真里亜に忌々しい視線を送っているのか…?
「へっ、元生徒会長さんが授業サボってこんなところで男と逢引きかよ。素行不良で内申点が下がるぜ?」
「ご心配なく。正式な学校からのお仕事ですから。それに内申点など私には関係ありませんからね。美濃部くんこそ、授業サボってまでお部屋で受験勉強しているんですから、私に構っている暇など無いのでは?」
「くっ…飲み物買いに行くんだよ!お前には関係ないだろ!!」
「ええ、関係ないですね。私の仕事も貴方には関係ありませんから、絡まないでもらえますか?」
「チッ…」
再び舌打ちをすると、俺たちの横を通りエレベーターホールの方へと行ってしまった。
「すみません兄さん。不快な思いをしたでしょう?」
「いや、別に。仲悪いのか?今のヤツと」
「いつも向こうから絡んでくるんですよ。テストの順位で私に負けるのが相当プライドを傷つけているみたいで」
「真里亜の方が順位良いのか?」
「私が学年1位で彼が2位です」
「わーお」
この学校で2位ってだけで同い年の中でも相当上位の学力のハズだが、それでもあんなにささくれ立った態度なのか。
凄いプライドだな。
「ちなみに、3位は彼と僅差で聖来さんですよ」
「へぇ。じゃあ彼女も美濃部くんから色々言われたりすんのか?」
「いいえ」
「あ、そう?下の順位の人にはそうでもないのか…」
「いえ。美濃部くんは聖来さんにゾッコンですから」
「あー…」
分かりやすいね、そりゃ。青春の1ページだ。
~ある時の期末テスト結果張り出し掲示板の前~
『わぁ、すごいですね。真里亜さん。また1位ですよ』
『ええ。今回も実力が発揮できましたから。そういう聖来さんも3位じゃないですか』
『はい。良かったです』
『いいなー、二人とも。あたしなんて53位だよ』
『洋子さんは部活だけでなく、もっと勉強もしないと』
『ちぇー…』
『……チッ。またアイツが1位かよ…』
『美濃部くんも凄いですね。また届きませんでした』
『はっ…?べ、別にすごくねーし…こんなのと、当然だし…』
『『クスクス…』』
『そこ、笑うな!』
~回想終わり~
まあ真里亜は言いたいことハッキリ言う方だし、合う合わないは分かれるかもしれないな。それでも支持する方が圧倒的多数なんだが。
対して佐藤さんは誰にでも優しいみたいだから、皆から好かれるタイプだろうな。一部の女子からやっかまれそうではあるが、この学校なら心配するほどでもあるまい。
「さぁ、着きましたよ」
美濃部が出てきた部屋の少し先に目的の部屋があった。
真里亜が先ほど受け取ったカギを使い中に入ったので、俺もそれに続く。
ちなみに部屋のカギは生徒に渡される分と管理人室に保管される分の二つが存在する。
今俺たちが借りているのは管理人室分で、生徒分は四人とも皆持ったまま行方不明となってしまったらしい。
「意外に綺麗だな」
「そうですね。というより物がそれほどありませんね」
「だな」
10畳ほどの部屋の中にはベッドと勉強机、クローゼットに多目的ラック、テレビ等生活に必要な物が一通り揃っていた。
風呂トイレは別でキッチンもある。
ぶっちゃけ俺の住んでるアパートより豪華だ…流石はお金持ち学校。
「前に女子の部屋に遊びに行ったことがありますが、これにもう一部屋ありましたね」
「…ああそうなん」
いいもん…来月から豪邸に住むもん…
「しかし、ここも警察が隅々まで探しているだろうから、多分毛髪のひとつも無いだろうな…」
「でしょうね。だから私たちが探せる手掛かりは泉気の痕跡しかないですね」
「ああ…」
俺は能力で瞳力レベルを上げ、部屋を見回してみた。
すると―――
「あれ…?」
「どうしましたか、兄さん」
「泉気が…見える」
これまでのどの現場にも無かった痕跡が、市ヶ谷の部屋から見つかったのだった。
いつも見てくださりありがとうございます。
ブクマ&評価ありがとうございます。
平成ライダーの話。
私はこれまで平成ライダーを何作品か見ましたが、その中でも
1番好きな作品は仮面ライダー000(オーズ)です。
敵との力の奪い合いをメダルで表現する面白さと、敵存在の一人と
相棒になるという要素、話、カッコよさ、どれをとっても素晴らしい作品でした。
挿入歌のラトラータのやつも未だに聞いたりします。
1 オーズ
2 クウガ
3 ダブル
4 ファイズ
5 ブレイド
ランキングです。




