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問い掛けてしまった僕に対して、君は辛く悲しそうな表情で答えてくれたのでした。
コンプレックスを掘るようなことになってしまったのでしょう。
好きな人を傷付けて、最低なことです。
「私は別に、強いわけじゃないわ。私は私を女だと思っているから、あなたとの恋に間違えを感じないというだけよ……」
なんでもないように言ってくれましたが、傷付けてしまったのは明白でした。
自分が弱いからだと僕は開き直って、君を苦しめてしまっていました。
何も間違ってなんかいないのです。
最初に会ったとき、君は男として僕に接しようとしてくれていました。僕がそれを求めていたからでしょう。
徐々に君の中から見えてくる愛らしさに、僕は惹かれていってしまい、それを伝えると君は全て話してくれました。
こんな僕に、話してくれました。
女の子になるのだと、なりたいのだと言った君を、応援すると僕は言いました。
僕は応援しているつもりでした。
そして僕は君と約束しました。
君のことを、女の子として愛するのだと、そう言いました。
本当にそのつもりでいました。本当にそのつもりでいます。
間違った恋愛ではなく、僕と君は他と変わらない恋愛を、男と女として繰り広げられていくのだと、約束しましたものね。
最初のうちから、恋愛に間違いなどないのだと、偏見をなしにして言えていたなら、わざわざ約束をする必要もなかったでしょうに。
危うく僕はその約束を忘れて、大切な約束なのに、破ってしまうところでした。
本当ならば、僕が守るくらいのことを言えないといけませんでした。
可愛い君を心無い言葉から守るのが僕のやるべきことだと言いますのに、弱さに甘えている場合ではなく僕はそうあるべきだと言いますのに、心無い言葉で僕が君を傷付けてしまうのです。
一番近くで寄り添わなければいけないのに、僕がそうできないことで、どれだけ君を傷付けてしまっていることでしょう。
誇りを持って信じているからだとわかっていますのに、君は強いからだと言いそうになります。
最低なのはわかっています。
自分を責めることもまた、君が良くは思わないであろうことをわかっています。
そうなってしまうことを、そうした壁ができてしまうことを、君は自分のせいなのだと考えることでしょう。
それは僕の弱さが原因ですのにと、また全ての責任を弱さという言葉に押し付けてしまいそうになります。
「私はね、あなたのことを愛しているのよ。でも、あなたのために、女の子にまでなったわけじゃないわ。夢だっただけよ」
最後に君はそう言い切って、立ち去っていきました。