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恋愛に正解などありません。
口では何度も言いながら、自分でもそう思い切れていなかったのでしょうか。
絶対に否定してはいけないと思うのに、信じなければいけないと思うのに、思ってしまっているからだからこそか、心の中では間違いだと思っているのかもしれません。
「どうして?」などと、問い掛けえてしまいそうになるのです。
そのような問いを投げても、どうせ答えなど返ってきません。
正解が存在しないのが恋愛というものなのですから、答えなど期待するだけ無駄なのでしょう。いえ、答えなど期待してはいけないのでしょう。
それはわかっていますが、わかっているのですが……。
どこかで僕は思ってしまっているのです、僕の恋は確実に間違いですから、だなんて。
もし正解があるのだとしたら、模範解答の恋とは遠いものかもしれません。
ですが、間違っていることこそ恋の正解だとも言えましょう。
そうして適当な言葉を並べて、何かに答えを求めてしまうのは、僕の弱さの象徴なのかもしれませんね。
僕は自分の弱さのために、大切な君さえも傷付けるのです。
「どうして、好きになってしまったのだろう」
つい口から洩れてしまったのです。
一人で悲しくなってしまう僕に、強い君は優しくそう言い放ってくれるのです。
「理由なんてどうでも良いわ。愛し合っているのは本当よ」
そう、愛し合っているのは本当なのです。
だれに何を言われようと、禁断だとか、そんな適当なことを言われても、止められて止められる恋ではありません。
手放せる君ではありません。
それでも僕は弱いのです。
愛を理由に、軽蔑の視線に耐える決意はできないのでした。
「どうして? どうして君は、そんなにも強くいられるのでしょうか」
思わず漏らしてしまった言葉が、更に君を傷付けてしまったことがわかりました。
さっきから、もっと口をきつく締めないといけませんね。
目の前に君がいてくれると、あまりに君が優しいものですから、そういう言葉を抑えられないのです。
正解という、つまらないものを求めてしまいそうになるのです。