第5話
そしてついに、深い森の中に広がるダンジョンにたどり着いた。
ここに来るまでに、見たこともない虫系や、毒キノコ、あるいは食虫植物などに遭遇した。
島の最奥地は、どうやらこのような者たちの住み家になっているらしい。
これもイザコの邸宅内にある、大図書館で調べたのだが、このダンジョンは、何百年も昔に、まだこの島が栄えていた頃の都市遺跡だという。
昔は栄えていたらしいが、
やがて少子高齢化、人口減少といった人口構造の変化などにより、
次第に都市の力が衰え、そしてついには、住民たちが都市を捨てて去っていき、
そしてそのまま打ち捨てられたという。
今では密林に埋もれ、地下深くへと続くダンジョンとなり果てたという。
「このあたりには、笑いキノコが群生しているようだ。
ところで、笑いキノコを食べても笑わんっていうやつはいるのか?」
またまた、わけのわからないことを言うノボルだった。
「このあたりに、セーブポイントでもあればなあ…。」
すると、あった。セーブポイントだ。ここまで苦労して来たんだから、セーブポイントがあって当然だろう。
それにしてもこの、セーブポイントというものは実に優れものだ。
今までの冒険の記録を残すことができる。
HPとMPと、さらには疲労も全回復することができる。
そのうえ、一度行ったセーブポイントに再び行くことができる。
ノボル、イザコ、マルセロ、マルシア、カトレーダ、それとブルース・ウイル・スミスの6人で、このダンジョンの奥地へと向かっていく。
中はやはり、人工のダンジョンだ。入口の重い扉を開ける。
ギギギギギィーッ!
重い扉が開き、ダンジョン内部へ。
まずはノボル。
「ここがダンジョン内部か…。」
続いてイザコ。
「このダンジョンの奥地には、まだ誰も行ったことがないのだよ。
いや、正確に言うと、行った者は誰一人、帰ってきていないのだよ。」
マルセロは、あたりを見回した。
「ダンジョンですから、たいまつなど明かりをつけないと。
問題は、いったい誰が、たいまつを持つかですね。」
次の瞬間、開いていた入口の扉が閉まってしまった。
「おいおい、何だよ!」
ノボルは扉を開けようとしたが、押しても引いても開かない。
「くっ!くそっ!これじゃあ外に出られない、脱出もできないな…。」
6人は完全にダンジョン内に閉じ込められてしまったようだ。
「ねえ、どうするの?このままじゃ真っ暗闇の中で、魔物とかに襲われて、ひとたまりもないわ。」
貴婦人マルシア・アイーダが言った。
たいまつとかないのか、と思ったら、実はカトレーダが、ダンジョン内を明るくする魔法を使っていた。
「もう大丈夫よ。これでひとまず、魔法の効果があるうちは、回りを見渡せる。
後戻りはできそうにないみたいね。だったらとにかく、先に進んでいくしかないわね。」
町娘カトレーダ、実はこうした魔法の使い手、思ったよりも役に立ちそうだ。
ダンジョン内部を奥に進む。
すると、堅い装甲を持つ、カメみたいなヘンな魔物が現れた。
「でやっ!」
ガキンッ!
「かってー!」
ノボルはその堅い装甲に斬りつけたが、ほとんど効かない。
「うわっ!」
不覚にもこのカメノコ装甲の頭突きをくらったノボル。
「おおっと!こいつは、俺様に任せな!」
ここで怪力、ブルース・ウイル・スミスの出番だ。
「とおりゃあっ!」
ブルース・ウイル・スミスが装備していたのは、バスタードソード。
ザシッ!ドガッッ!
堅い装甲のカメノコ装甲を一撃で真っ二つに斬り裂いた。
「ふふん、このブルース・ウイル・スミスの手にかかれば、こんなもんさ。」
今回はブルース・ウイル・スミスに、いいところを持ってかれた…。
ノボルは無性に悔しかった。が、そんなことを考える暇もない。
すぐに、B1のフロアの攻略にかかる。まずはアイテム回収だ。
薬草や、旅人の服などが見つかったが、めぼしいものは、それほどなかったようだ。
ただ、軍資金を500ゴールドほど手に入れた。
さらに奥に進むと、今度は下へと向かう階段。
次のフロアに降りていく。
B1からB2に降りていくが、さほどかわりばえのしないフロア。
魔物の気配もなければ、宝物の気配もない。
B3も同様。そしてB4へと降りていく。
「おかしいな…。ここは魔物の気配を感じない…。」
あとで知ったことだが、どうやらこのダンジョンは、B100、
つまり地下100階まであるという、とんでもなく深いダンジョンだという。
下の階になるほど、敵が強くなり、巧妙な罠なども仕掛けられているという。
さては、僕が転生してくる前に、この世界に転生してきた転生者が、このB100、地下100階まで続いていくダンジョンを建設したのか?と、ノボルは思っていた。
そういう人間の執念によって発揮される力は、すごいものだな。
その力があれば、何でもできるな、と、あらためてノボルは思っていた。
「僕にはこの世界で何が…。
いや、僕はこの世界の無人島、大陸、そして全ての陸地を、僕好みに開拓してやるんだ!」
ノボルはあらためて決意を新たにした。
そして、みんなで降りていく。
そしてB4に来た。ここはどうやら、滝が流れていて、小舟に乗って、滝の下まで流されていかないと、先に進めないようだ。
ノボルたちは小舟に乗り込む。全員がやっと乗れるほどの大きさだ。
「さあ、行くぞ!」
ノボルたちは満を持して滝の下へ、そのまま勢いよく落下していく。
ヒューッ!
落下した先が、B5となるようだ。そして、そこはまた通路となっていて、B6へと通じる階段があるようだ。
案内板がある。こう書かれていた。
『この階段の下はB6、石板の間』
「石板の間…!?」
ノボルたちは階段を降りていく。
そしてB6、そこに広がっていたのが、石板の間だった。
「なんだろうな?この石板ってのは?」
『石板の間』には、石板をはめ込むための台が、たくさん並んでいた。
その配置は、そのままこの世界の大陸や島の配置であるようだ。
つまりは、石板を集めて、それをはめ込んでいくと、新たに大陸や島が姿を現すということのようだ。
それぞれはめ込む石板が決まっていて、決められた石板をはめ込んでいくと、ほのかな光を放つという。
まるでパズルのピースをはめ込んでいくような感覚だ。
手前の2つ3つの台には、もうすでに石板がはめ込まれているようだ。
1つ目は無人島、キングスリング島を表しているようだ。
2つ目は、キングスクラウン大陸。この2つの台には、最初から石板がはめ込まれているようだ。
そして3つ目は、レディーファースト大陸のようだ。
が、今のところ石板がはめ込まれているのは、この3つだけのようだ。
それ以外の台には、まだ石板は、はめ込まれていないようだ。
そして残る台は、17あるようだ。次の4つ目の台は、またも無人島のようだ…。
無人島もそうだが、この世界の大陸は、大陸といっても、都市国家が1つくらいあるだけで、
あとは広大な森林や山岳地帯や原野、あるいは砂漠やら湿地帯などが広がる、
いわば全くの未開の地となっているような大陸が多いようだ。
そう考えると、何やら気の遠くなる話に思えてきた…。
さて、このまま開拓を進めていくか、
あるいは、考えようによっては、時が過ぎるのを待ちながら過ごす、
何かしらの事態の進展を期待する、というのも、ありかもしれないな…。