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第3話

僕の名前はノボル。


ノボルには、冒険の仲間と呼べる者はいなかった。


この世界は本当に、無人島と大陸と王国以外、何もないようなところだ。


だけど、僕らが開拓を進めていけば、あるいは…。




さて、ノボルは昔から、カレーライスやハンバーグが好物だった。とりわけ、チーズハンバーグとチーズインハンバーグは好きだった。


英才教育を受けている間にも、唯一食事の時間だけは、好きな食べ物を食べられた。


ノボルの母は、料理だけは絶対の自信があったようだ。


そんな両親が常日頃から言っていた言葉がある。


「お前は、島内家の跡取りなのだから、人に使われる人間にはなるな。

逆にお前が、人を使って働かせる立場の人間になれ。」


両親はそんなことを言っていた。ならば今こそ、その人を使って働かせる立場の人間になる時だと思った。


そうだ、この大工たちや、移民たちを使って、開拓の拠点となる町や、その他の施設などを建設させて、自分はそれを高みの見物、何しろ人を使う立場の人間なんだから。


やっぱり、ぐうたらも、人を使う立場の人間にならなければ、楽しくない。


というわけでさっそく、大工のケーンたちを引き連れて、無人島へ行くことに。


建材などは、無人島の外から持ち込んでも別にかまわないだろう。


「それで、ノボルよ。俺たちはまず、何をすればいいんだ?」


まずは開拓をどのような手順で行っていくかという、設計図の作成を依頼した。


「あいよっ、俺たちに任せな。」


餅は餅屋、鳥は鳥屋にまかせておけ、ということで、設計図が出来上がるのを待つことに。


この島には娯楽施設などもそれほどない。


特にやることもなく、このままでは、ただ時間だけをやり過ごすだけで、終わってしまうような気がしていた。だからこの無人島の開拓の際には、そんな娯楽施設なども建設していこうと思った。


やがて設計図ができた。


開拓の拠点となるお屋敷、開拓リーダーの家には、もちろんノボルが住むことになる。


ここで、開拓の方針を決めるための会議なども、行えるようにするのだ。


「開拓のリーダーか。この開拓が進むのは、ノボルの裁量(さいりょう)次第ということか。」


ケーンがそう言った。


まずは、基本的な区画、住宅地域、商業地域、工業地域を建設していかなければならないが、それと同時に食料や衣服なども確保していく必要がある。


いちいち島中を駆けずり回って、探していたら、その間に飢え死にしてしまうことも、ないとはいえない。


まずは自分たちで食料源となるような、穀物や肉などを確保していくため、農地や、畜産のための牧場などをつくっておきたい。


食料と、飲料水は、開拓生活でも欠かせないのだから。


まずはせっせと区画を整備するところから。


「それじゃあ、明朝には出発できるな。」


今晩はもう、一晩寝て、明日からはいよいよ開拓生活に入る。




その夜は星がきれいだった。さえぎるものは何もない。


「さあ、いよいよ明日から、無人島の開拓へと向かうのか。

そして毎日、毎日、開拓三昧だ。さてこれからあの無人島が、いったいどうなっていくかな…。

ワクワク…、だけど今夜は、明日のために寝ておかないとな…。」


ノボルはこれから始める開拓のことを考えると、眠るどころではなかったのだが、そのうちにウトウトし始め、やがて眠りについた…。




そして翌朝、いよいよ船に乗って無人島へと向かう。


無人島開拓のための人員、食料、建材などを積んで、船は出る。


なにしろこの世界は陸地よりも海の方が多いのだから、移動も船で移動する方が多い。


「それじゃ、いくぞー!」


「おーっ!」


それに、なぜか町娘たちも一緒だった。


もちろん、ノボルたちの食事や身の回りの世話をするための要員だということだが、彼女たちも、まんざらでもないようだ。


「この海の向こうに、無人島があるって聞いてはいましたが、実際に行ってみるのは初めてですね。

どんなところなんでしょうね。

でも、それと同時に、こういうところにはいろいろと危険も伴うといいますが…。」


町娘の一人が言った。いや、町娘たちだけでなく、この船に乗った誰もが、そしてノボル自身も、内心は期待と不安の入り交じるような気持ちだった。


やがて船は無人島の方角へと向かっていく。もうまもなく到着のようだ。


ケーン「おお!ついに見えてきたぞ!あれが例の無人島だな!」


町娘「あれが無人島ね。私たちは初めて降り立つのよ。

てか、そもそもキングスクラウン王国からも、外に出たことなかったし。」


一同、到着した喜びを表す。もちろん、ノボルも素直に喜びを表した。


ノボル「さあ、ここから無人島開拓記が始まるぞ!」


思えば、この無人島に飛ばされてきたことから、全ての物語は始まったのだった。




そしてついに、無人島に到着する。船着き場も何もないので、海岸沿いに停泊させる。

船を停泊させた場所は、砂浜になっていた。この砂浜からほどなくすると、平地にたどり着く。

そうだ、この平地に拠点となる家を建て、町をつくっていこう。


「この辺がいいかな。家を建てる場所は。」


とはいえ、さすがに何もしないというわけにもいかないが、ノボルは正直な話、釘の打ち方も知らないような、建築に関しては全くのズブの素人だった。


「そうだ、ガチャでもあれば…。」


ガチャでスキルを入手するという手もあったが、


「いや、やはりだめか…。」


するとそこに、ガチャ登場。さらに、コントローラーが突如として登場した。


そこでノボルは、ある記憶を思い出した。


そういえば以前、無人島を開拓していくような、そんな内容のゲームをやっていたことがあったな…。


そのゲームのタイトルは、まさに『ガチャで進めよう!無人島開拓紀!』という、たしかそんなタイトルだったような。


「えっ、それじゃあ、僕が今いるこの世界は、まさか…?」


もしや、自分が今いる世界はまさに、その『ガチャで進めよう!無人島開拓紀!』の、ゲームの中の世界なのか?


と、思い始めていたノボルだった。


ノボルは思いきって、スタートボタンを押し、ガチャを入手。


「運がよければ、開拓の拠点となる家が、本当にこのガチャで手に入るというのか?

そうなったら、わざわざ苦労して建設させるようなこともないということになるな…。」


するとなんと、声がした。


「おめでとうございます!どうやらそれは、無人島におけるあなたの家のようですね。」


すると、次の瞬間、その家が姿を現した。まさにノボルが思い描いていた通りの、会議室もついている、大きな屋敷のようだ。


これで、開拓の拠点となる、自らの家は確保できたという形になる。


が、せっかく大工たちを連れてきているわけなのだから、彼らの力量を生かさない手もない。


大工たちには、他の住宅地域や、商業地域、工業地域の建設、それから、道路の整備、さらには食料確保のための田畑と、畜産を行うための牧場の建設、


それからさらに、市民警察や市民消防の建物の建設、病院や、学校の建設なども、大工たちにやってもらおうと、ノボルは考えていた。


「というわけで、よろしくお願いします。大工の皆さん。」


「いや、それはいいけどな。ただでというわけにはいかないな。

大工たちに、給料を支払ってもらいたいんだ。

ノボルの下で働く以上は、ちゃんとそれに見合うだけの、給料を支払ってもらわないとな。」


そういう話になった。ノボルはそこまでは考えてはいなかったようだ。


「あのー、もしよければ、大工さんたちへの給料は、イザコ・ドルチェ商人の、あの莫大な財産の中から支払うということにしては、どうでしょうか?」


これを提案したのは、町娘たちだった。


ノボルは当然そこまでの金は持っていなかったので、ひとまずこの町娘の提案にのることにした。




この無人島の開拓には、期待も多いが、当然のことながら、危険もついてまわる。


町娘が語る。


「たとえば、この無人島にしか生息していないような魔物とか。

それと、毒キノコとかも、生息しているかもしれないから、気をつけて。

もしも間違って食べちゃった、なんてことになると、大変なことになるからね。」


あと、この島の奥地には、かつて住民が暮らしていたらしき、住居跡がある。


つまり、かつてはこの島は無人島ではなかったということらしいが、何らかの要因によって、無人島になってしまったという経緯があるようだ。


が、今では人間はもとより、魔物すら近寄らないという。


ということは、何か別のものがいるのではないか。


たとえば、その頃の住民たちの幽霊とか…。


あと、ゾンビとかスケルトンとかのような、アンデッドモンスターがいるかもしれない。


いずれにしても、死後も未練を捨てきれず、この世をさまよっているかもしれないということだ…。


その集落跡からさらに奥地へ行くと、いよいよ全くの未開の地。そこには誰も足を踏み入れたことのない洞窟があるという。


その洞窟は、深い深い地下空間まで通じているともいわれる。


僕ら無人島開拓団はせっせこ、せっせこ、


開拓を進めていった。


まずはひたすら住宅地域、商業地域、工業地域の建設にあたる。


「どうにか、ここを最初の拠点にしたい。」


それから数ヶ月が経過した。まずは住宅地域、商業地域、工業地域と完成した。それから開拓団の食料を確保するための農地と、牧場も完成していた。


商業地域には、武器屋、防具屋、道具屋、食べ物屋、洋服店、宿屋、雑貨屋と、まあとりあえず、ひととおりの店は建ち並んだ格好だ。


「さてと、これでとりあえずは、形は整ったが、中身がな…。」


ノボルが考えていたことは、なんとか基本型は完成したものの、これではまだ、何の変哲(へんてつ)もない、どこにでもあるようなごく普通の集落でしかない、ということだ。


「おい待てよ。数ヶ月も働かせておいて、言うことはそれかよ。」


大工の一人、サジが不満気な表情で言った。


さらに他の大工たち、マジと、バーツも、サジに同調する。


ノボルはなんとか大工たちを制止して、次の説明を行おうとしていたところに、あのイザコ・ドルチェの乗った船が到着する。


「あれは、イザコ・ドルチェの船だな。」


イザコ・ドルチェはさっそうと船から降りてくる。そして集落の完成状況を見るなり言った。


「ほほう、ようやっと、ここまで完成させましたか。いやいや、さすがはノボルさんが見込んだ、開拓団の人たちだ。」


それと、衛兵のマルセロ・ハンス、貴婦人のマルシア・アイーダも、やはり同行していた。


まず衛兵のマルセロ・ハンスが言う。


「やあ、ノボルじゃないか。やっとここまで集落を建設したんだね。」


続いて、貴婦人のマルシア・アイーダが言う。


「なるほど、確かに形にはなりましたが、特徴としてはどうでしょう。

どうせなら、この島のこの集落でしか栽培できないような、特産品とかを考えてみてはいかがかと思いますわ。」


なるほど、マルシア・アイーダは、この島ならではの特産品があった方がいいと、アドバイスを送った。


しかし、特産品といっても、何がいいのか…。


例えば、畑で栽培している小麦とか、野菜類とか、あるいは牧場でとれる牛乳を、チーズや、ヨーグルトや、バターなどにするとか。


そうだ、この牧場搾りの牛乳を使って、アイスクリームを、いや、できればソフトクリームとか、いいかもしれない。


あるいは牧場なら、食肉とか。牛肉、豚肉、鶏肉、羊肉などを、この島の牧場でしか入手できない、ブランド肉として売り出すという手もある。


考えはいろいろとめぐるが、さて、問題は本当にそれが実現できるかどうかだな。


とりあえず、今のところは、頭の片隅にでも置いておこう。




この日はマルセロ・ハンスの他にも、何人かの衛兵が同行していた。


「僕はキム・スネッドン。」


「俺はブルース・ウイル・スミスだ。」


「僕はウイル・テッド。」


「僕はロバート・アルフレッド。」


一人一人自己紹介をしてきたが、そんなにいっぺんに自己紹介されても、いきなり全員の顔と名前と、特徴なんて覚えられない。


ただ、ブルース・ウイル・スミスという衛兵は、この衛兵たちの中ではかなり大柄で、魔法は使えないようだが、かなりの怪力自慢のようだ。


あとの3人は、どちらかというと、おとなしめだな…。


まあ、とにもかくにも、まずは無人島開拓の、いやもはや住人がいるから、無人島ではないな…。


とにもかくにも、この島の開拓を進めていく第一歩を踏み出したわけだ。


「そうだ、思いきって、この島と、この集落と、それからこの牧場と、それぞれ名前をつけましょうよ。」


誰かが言った。そうだな、ここは僕らの島、僕らの集落、そして僕らの牧場もある。


だから、僕らで名前をつけないとな…。


さて、どんな名前にしようかな…。


すると、イザコ・ドルチェが、


「それならば、私がこの地にふさわしい名前をつけましょうか。」


そしてイザコ・ドルチェは、思いつく限りの名前を口にしたが、どれもこれも、イマイチ、センスを感じられないような名前だった。


イザコ・ドルチェ本人もそのことを感じ取っていたようで、


「ううっ、やっぱり私には、すばらしい名前を考え出すことは、無理だったようだ。

まあ、仕方ありませんな。ここはやはり、開拓団のリーダーである、ノボルさんに、名前をつけていただきましょう。」


僕がこの島と、この集落と、この牧場の名前を…。


ということは、僕が名付けたその名前が、この先もずっと、残っていくということになるのか…。


と、ノボルは思っていた。そしてノボルが考えついた名前は、このような名前だった。


島の名前


キングスリング島


「えーっと、この『キングスリング島』という名前は、大陸の名前が『キングスクラウン』、つまり『王の冠』という意味だったので、ここはあえて『王の指輪』という意味で、この島の名前をつけさせていただきました。」


集落の名前


ネオアイランドシティ


牧場の名前


カントリー牧場


さらに牧場の運営会社まで設立させるという。


牧場の運営会社名


オールフードファクトリー


こうして無人島に集落を建設したノボルたち。


しかし開拓が進んだのは、この島全体から見るとまだごく一部だった。


この島には、まだまだ知らないようなことが多いようだ。



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