親玉ゴブリン
ステージボスの部屋に通じる扉を開いた、ノボル率いるパーティー。
そしてついに、ここのステージボスといえる、親玉ゴブリンが登場する。
しかしこの親玉ゴブリン、普通のゴブリンとは比べ物にならないほど、巨大なゴブリンだ。それに力もありそうだ…。
「うおおおおっ…!これが親玉ゴブリンか!」
「そうだ、俺様が親玉ゴブリンだ!
ただのゴブリンとは違うぞ!なにしろ、さるお方から、力を授かっているのだからな!」
「それでその、さるお方というのは…。」
僕らが思いつくのは、ただ1人しかいない。
おそらくは、ヤツハカ教団のミツクビ神…。
僕は親玉ゴブリンにそのことを尋ねてみた。
「あのー、その『さるお方』というのは、ひょっとして、ヤツハカ教団の唯一絶対の神、ミツクビ神ではないかと…。」
すると親玉ゴブリンは、怒り心頭。
「ええいうるさい!それを言うな!それに関しては断じて口を割らないぞ!
お前たち、ここまで来て生きて帰れるとでも思ったか!」
どうも話し合いも無理のようだ。こうなったらもう、戦うしかない。
僕は拳銃を構える。ちなみに、この拳銃の正式名は知らない。
僕はそのへんのところは詳しくないので。
ダーン!ダーン!ダーン!
親玉ゴブリンに拳銃を放つ。しかしダメージは僅少だ。
「しまった…。弾切れだ…。」
とうとう拳銃の弾が切れた。
ガッ!
親玉ゴブリンの攻撃。僕は弾き飛ばされる。
それとともに手に持っていた拳銃も、弾き飛ばされてしまった。
親玉ゴブリンは大きな足で、転がった拳銃を、踏みつぶす。
ドガッッ!
これでもう拳銃は使えないか…。
「おい!こいつは普通の武器なんかじゃ、ひとたまりもないぞ!
魔法のかかったような、特殊な武器でもないとな。」
ブルースが口にする。
親玉ゴブリンはニヤリと笑う。
「ぐふふ、俺様はただのゴブリンとは違う、強大な力を授かったと、言っただろう!」
ちょっと待て、まさかこんなところにまで、邪教ヤツハカ教団、邪神ミツクビ神の影響力が及んでいるなんて…。
「くくく、そうだ、ちょうどいい機会だから、冥土の土産に教えてやろう。
ミツクビ神様は、強大な力を持っている。
むろんお前たちの信仰する神など、足元にも及ばないほどにな。
だが不幸にして、お前たちの信仰する神に戦いを挑み、果敢に戦いを挑んだものの、その時は結局、敗れ去ってしまった。
そして長らく、『封印の間』という部屋に閉じ込められ、そこから一歩も外に出られずにいた。」
ゴブリンの化け物の分際で、そこまで詳しく語るとは…。
要するに、その『封印の間』から外に出してやろうという、実に単純かつ明快な理由だ。
「いまだに外には出られない、ということは、ミツクビ神の力は、まだ不完全ということか。」
「そうなるな。かくいう俺様も、人から聞いた話だからな。
ミツクビ神様は長い間、『封印の間』に閉じ込められていたせいで、その力を失ってしまっている。
『封印の間』への封印はあまりに長すぎた。
ミツクビ神様が完全なる力を取り戻すためにも、ヤツハカ教団が一丸となって、そのためのイケニエを集めなければならない。」
その話を聞いているうちに、なんだか退屈で眠くなってきた僕、ノボルだった。
そんな時だった。なんと偶然にも、いやこんな偶然があろうかと思うほど、本当に偶然に、そこに一振りの剣が、ミスリルソードが、地面に転がっていたのだ。
僕はそのミスリルソードを手に取る。
「ええっ!?」
僕の手におさまった瞬間、ミスリルソードは輝き出す。
そして一同、僕がミスリルソードを装備できるということに驚く。
なにしろ、ミスリルソードといったら、
ミスリル銀という特殊な金属でできていて、魔法のかかった特殊な武器の中でも、かなり強力な部類に入る。
このくらい強力な武器はめったにない。それを僕が装備しているのだから。
「ノボルさん!私も加勢します!」
そう言ったのは、カトレーダだった。
カトレーダは親玉ゴブリンの守備力を下げる魔法をかける。
すると、効いた!親玉ゴブリンの守備力が下がった。
「守備力を下げたところで、本当にお前にその剣が使いこなせるのか?」
親玉ゴブリンは、なおも挑発してくる。
「剣の使い方はただ斬るだけじゃないんだ!
こんなふうにも使えるんだよ!」
そして、もうヤケクソだとばかりに、僕はミスリルソードを、親玉ゴブリンめがけて投げつける。
ザシッ!
すると、ミスリルソードは親玉ゴブリンの、眉間に、見事に命中!
「あ!ミスリルソードが親玉ゴブリンの眉間に!」
ちゅどーん!
「ぎょえーっ!」
親玉ゴブリンは爆発!
その次の瞬間、あれだけ巨大だった親玉ゴブリンは、ただの普通サイズのゴブリンに戻ってしまったようだ。
「わーっ!参りました!許してください!」
そう言って、ただのゴブリンに戻った親玉ゴブリン?は去っていった。
僕はなんとなく、拍子抜けしていた。
「なんだかおもったよりもあっけないな。
さて、それよりも何かアイテムとか持っていなかったかな。」
そして、調べてみると親玉ゴブリンは、たくさんの金銀財宝、金貨銀貨銅貨、ゴブリンアックスという戦斧、
それからさらに、その他装備品や所持品、それと石板を隠し持っていたようだ。
「また石板か。この石板をはめ込めば、またまた新たな無人島や大陸が現れるという。その繰り返しだな。」
これまでの順番では、
キングスクラウン大陸→キングスリング島と名付けた無人島→レディーファースト大陸→第2の無人島→ラクシャーサ大陸
という順番で現れてきたが、となると次の順番は、またまた無人島か?
ということになる。
「いよいよ、ヤツハカ教団とも本格的に戦うことになっていくのか…。」
そう思っていた僕に、またまた、クギをさしたのはブルースだった。
ブルースもブルースなりに感じ取っていたのだろう。そして他の仲間たちも、やはりそうだった。
「おいおい、言っておくがな。どうやらヤツハカ教団というのは、並の組織じゃねえぞ。
あんなゴブリン野郎が大将なわけねえんだ。
きっともっとすごい大物がいるに違いねえ。」
ノボル「それにしても、もう少し手ごたえがあるかと思ったら、所詮は最弱のザコ敵か…。」
ノボル、マルセロ、ブルース、キム、ウィル、ロバート、そしてカトレーダの7人は、ようやくゴブリンの洞窟を攻略した。
しかし、思ったよりもあっけなく攻略できたということもあって、なんだか拍子抜けしていた。
ブルース「てか、この程度のダンジョンなら、わざわざ7人で行くこともなかったんじゃないか?」
マルセロ「それこそブルース1人でもよかったんじゃないか。」
ブルース「おいおい、よせよ。俺は魔法も使えないし、1匹ずつしか倒せない、それに素早さが低いから、敵に先に攻撃されてしまう。」
雑談が続く中、ノボルの持っていたミスリルソードは、ますます輝きを放つ。
そして、『スーパーミスリルソード』に進化したのだった。
そしてノボルは、ダンジョン脱出用の魔法を使った。
ノボルが使える魔法は、このダンジョン脱出用の魔法と、瞬間移動の魔法。あとは、ファイアボールなどの基本的な攻撃魔法と、初歩的な回復魔法のみ。
ひとまずこれで、地上に戻った。さっそくコロボックルのココロに報告しにいかないと…。
ノボル「ほう…、意外と小さな島なんだな。
そうだ、この島は『コロボックル島』とでも名付けよう。」
というわけで、第2の無人島は、ノボルの独断と偏見によって、『コロボックル島』と名付けられた。
「ココロー!戻ってきたぞー!ゴブリンたちを退治してきたぞー!」
「あっ!ノボルさんたち!それは本当ですね!
よかった!これでゴブリンたちも、おとなしくなりますよ!」
ひとまず報告を終える。
しかしそれと同時に、ある疑問が浮かんでいた。
「もしかしたら、世界各地で、ヤツハカ教団、それとミツクビ神は、あのように魔物たちを強化しているのでは…。」
あの親玉ゴブリンのことを言っていた。
ということは、やはり、ミツクビ神を復活させようとしている、ヤツハカ教団の息のかかった者たちが、魔物たちを強化したりしているのか…。
あるいは、ヤツハカ教団の教祖とか、大幹部とかが…。
その疑問もあったが、考えたところで、今のところはらちがあかない。
ひとまずは、キングスリング島に帰還することにした。
「さあ、もう行こうか。」