第13話 イザコの過去
「それにしても、どうしてイザコは、そこまで僕たちに肩入れしてくれるの?」
ノボルは思わず、聞いてみたくなった。
「それはね、君たちが私の若い頃に、よく似ているからだよ。」
実はイザコも、一度はあの無人島に足を踏み入れたことがあったのだった。
「私が君たちくらいの年齢の頃、私はドルチェ家の跡取り息子として、それにふさわしい人間になることを目指して、英才教育を受けていたんだよ。」
英才教育を受けていた…。
ノボルもそうだった。それが見事に一致した。
「ノボル君がキングスリング島と名付けたあの島に、私は当時の調査団の一員として、上陸した。」
さらに話は続く。
「あの集落跡や、遺跡の洞窟、そして石板の間も、一番最初に発見していたのは、私たちの調査団だった。
だけどね、調査を行ってはみたものの、謎を解くことはできないまま、そのまま調査は途中で打ち切りになってしまった。」
「…そうだったのか。そんなことがあったのか。」
「当時のドルチェ家の当主、つまり私の父も、先々代、つまり私の祖父も、この調査には乗り気ではなく、結局この時の調査では、何の成果もあげられなかったんだよ。
それから20年以上が経った。
そして私の目の前に、あの時の謎を解き明かしてくれるかもしれない、その人物が現れたんだよ。
そう、ノボル・シマウチ君、君が私の目の前に現れたんだよ。
どうやら運命は、私ではなく君を選んだんだと、その時は思った。
しかし、財力を得た今、私も君たちの旅に同行させてもらおうと思うよ。
あの時、私たちが叶えられなかった夢を、君たちなら叶えられるやもしれない。」
このイザコに、そんな過去があったとは…。
知らなかった。しかしそもそも、この世界にはまだまだ、僕らの知らないことが多すぎると、ノボルは思っていた。
そうだ、一刻も早く、ここは第2の無人島に向かわなければ…。
「ここも安全とはいえない。国軍に見つかったら、一巻の終わりだからな。」
そして急いで、全員を船に乗せて、まもなく出発することにした。