第11話 とんでもないこと
島内昇ことノボルは、決して自らが望んで転生をしてきたわけではない。
しかし、いざ転生してみると、いろいろとやりたいことが見えてきた。
(1) 無人島や未開の地を開拓していくこと
(2) 無人島や未開の地に移民を集め町を建設していくこと
(3) 町にカジノを建設し、自らは『カジノ王』になること
(4) カジノでの賭け事で大儲けし、稼いだコインで、ここでしか手に入らないようなレアアイテムを入手すること
(5) 無人島で隠しダンジョンを見つけ、そのダンジョンを攻略し、レアアイテムを入手する、そして隠しダンジョン内にしか生息しない、レアモンスターと戦い、これを倒すこと
そうして開拓を進め、町づくりを進めていくうちに、カジノまで建設し、どうにか軌道に乗せられるところまで来ていた。
しかし無人島は1つだけではなかった。また次の無人島が発見された。
しかもそれは、今まで人間が誰1人として足を踏み入れてこなかったようなところ。
もしかしたらこれは、今までがんばってきたご褒美なのではないか、と、ノボルは思っていた。
なぜなら、ノボルにとっては、開拓を進めていくこと、冒険を進めていくこと自体が、何よりのご褒美だ、という考えだったから。
そして、ネオアイランドシティの住民の代表者が集まった定例会議が、また今回も開催された。
その定例会議において、ノボルから発言があった。
「えー、カジノと劇場も完成して、客の入りも上々のようです。」
ネオアイランドシティの町の運営の方は、カジノや劇場からの特別な収入もあり、問題なく軌道にのっているようだ。
そこに割って入ったのは、ゼベクだった。
このゼベクという男は、事あるごとに、ノボルの方針にケチをつける。
実際、このゼベクに同調する住民たちも、ごく一部ではあるが、いるようだ。
「ふん、町の方は、まあまあうまくいっているといった感じだな。
しかしな、これで開拓の方は一段落で、あとはもう適当にエンジョイするだけだとか、考えてるんじゃないだろうな。
だいたい、ここまでは軌道にのっているというのを、あたかも自分だけの手柄であるかのように、気取りやがって。」
それに対してノボルは、
「いや、別に自分の手柄をひけらかすつもりもないし、気取っているつもりもない。
実は、まだ開拓の方は、これでもまだ、ほんの一部しか目標達成できていないんだ。
このキングスリング島の、遺跡の洞窟よりもさらに奥地のジャングルの調査とか、あとは、遺跡の洞窟の、もっと深い階のダンジョンの攻略とか、
なにしろあそこは、地下100階まであるからね。」
「ほう…。他には?」
「まだまだ行きたいところもあるし、とても適当にエンジョイして気楽に、なんて気分にはまだまだなれないよ。
キングスクラウン大陸の、ゲド村のあたりとか、そのさらに奥地とか、
あとは、レディーファースト大陸なら、メローヴィス王国領とかにも行ってみたいし、
あとは、第2の無人島なんかは、まだ全く何も、実態がつかめていないんだ。
それと、ラクシャーサの住む、悪鬼の国がどういうものなのか…。
だけど、あれもこれもと欲張ってもしょうがない。
一つ一つ、順番に解明していかないとね。」
ノボルは熱弁を振るった。
場面は移り変わって…。
それから、ノボルたちはなぜか、キングスクラウン王国の、ミッテラン国王に呼ばれたが、そこでノボルたちは、ミッテラン国王から衝撃の言葉を投げかけられる。
「くるしゅうない、面を上げよ。」
「ははーっ!ノボルです。
本日はキングスリング島の開拓の進捗状況について、お伝えいたします。」
こういう堅苦しい場面は苦手だと言っていたノボルだったが、さすがに慣れたものだ。
「お前たちが開拓を進めてきたおかげで、ネオアイランドシティの方は、ずいぶんと発展しているそうではないか。
確か、4億5000万ゴールドの建設費をかけて、カジノと劇場まで建てたとか。
このミッテランも、暇があれば、行ってみたいものだな。」
「ははーっ!」
「うむ。ここまでやるとは、上出来だ。」
ここでミッテラン国王は、不敵な笑みを浮かべた。
ミッテラン国王がこの笑みを浮かべる時は、何かをたくらんでいる時だった。
実はこのことは、国民たちも知っていたことだった。
キングスクラウン王国では、王家の力は絶対的であり、国民や、兵隊、家臣である貴族たちなども、王家の人間に対しては絶対服従というのが、習わしとなっていた。
「さてノボルよ。今後の新大陸や無人島の開拓及び調査についてだが…。
今後は、このミッテランの管轄のもと、わが国軍がこれを引き継ぐ。
今後は、このミッテランの許可なく、勝手に行動することは禁じる!
今後は全て、このミッテランと、大臣のシラクとが、取り仕切る!」
「なっ…!そ、そんなこと、いきなり言われても…。」
ミッテランはまたまた、不敵な笑みを浮かべた。
「おやおや、お前たち、何か不服でもあるのか?
あそうそう、それとな、キングスリング島と、ネオアイランドシティは、今後わが国軍の統治下に入ることになった。」
「おい待て!そんなこと勝手に決めるなよ!」
「やはり不服なのか?
それ以上文句を言うなら、牢屋にでも入ってもらうが、いいか?
お前たちも、自己判断で勝手な行動はするなよ。
さもないと、本当に牢屋に入れるぞ。」
どうやら、ある程度開拓が進んだところで、頃合いを見計らって、せしめようという魂胆があったようだ。
この様子ではこれ以上何か言ったところで、本当に牢屋に入れられてしまうだろう。
この日はそのまま、キングスリング島の宿舎に帰ることにした。
「さて、とんでもないことになってしまったぞ…。
このまま何もしないで、手をこまねいていたら、それこそミッテラン国王とシラク大臣の思うつぼだぞ…。」
ノボルは何か手だてを考えようとしていたが、その時は何も思いつかないまま、ただただ、途方に暮れるばかりだった…。
そうこうしているうちに日は暮れて、夜の星が輝く時間になった。
夜食をとりながら、次の手だてについて考えることにしたノボルたちだった…。