第10話
無人島開拓の醍醐味、それは人によって様々だろう。何年も無人島で暮らしていても、また新たな発見があったりするから、奥が深い。
もちろん、開拓団を送り込んで集落を建設し、開発を進めていくのも、それはそれでいいのだろうが、
どうせなら、この無人島でしか手に入らない、果実を食したり、魚介類を採ったりするのも、また醍醐味だったりする。
今日はノボルは山の中へ。山の中は虫に刺されたりするといけないので、虫除けの薬を塗っておくと効果的なんだそうだ。
念のため、今日はカトレーダと、マルセロ、そしてブルース・ウイルスミスを連れてきている。
「おや?あれは…?」
どうやらこの島にしか生息していない、これは、見た感じはマンゴーの一種であるようだが、
こういう果実とかは、実際に口にしてみないと、わからないところがあるからなあ…。
この果実の色は、黄色というか、オレンジ色というか、とにかく、そんな感じの色だ。
「気をつけないとな、こういう果実の中には、不味くてとても食えないようなものとか、
変な味のもの、毒入りのものとかもあるかもしれないからな…。」
それで、まず最初に誰が味見するかということで話し合う。
まずノボルがカトレーダに持ちかける。
「カトレーダ、どう?」
「えっ!?ノボルさん、いきなりそんなこと言われても…。
ここはマルセロさんが、まず最初に味見するべきですよ。」
カトレーダはマルセロに話を振る。
「えっ!?ちょっと待ってくださいよ。ノボルさんに、カトレーダさん。
おおそうだ!このさいだから、ブルース・ウイルスミスに味見してもらおうよ。」
マルセロはブルース・ウイルスミスに味見するように言った。
「おいおい、なんでこの俺がそんなこと…。
不味かったり、毒が入ってたりしたら、誰が責任とるんだよ。
まず最初に、ノボルがやるべきじゃないのか?」
で、結局誰も味見をしたがらず、ノボルに話が戻る。
「それじゃあ、僕がまず味見をするよ。」
「どうぞどうぞどうぞ!」
ノボルは恐る恐る、その果実を口にいれた。すると、
「…うまい!これは甘くておいしいぞ!
みんな、さっそく食べてみてよ!」
「ええっ!?」
「本当か!?」
「本当なのか!?じゃあさっそく食わせろよ!」
そしてみんなで一人一個ずつ、まず一口ずつ味見をしてみる。ついさっきまでいやがっていたくせに…。
「甘くておいしい!」
「これはおいしいな!」
「さすがだぜノボル、これはもしかしたら、島の名産になりそうだぜ。」
評判は上々だった。そうなると、この果実に名前をつけないといけないなと、ノボルは思った。
「そうだ!この果実は、『キングスマンゴー』と名付けよう!」
「キングスマンゴー!?」
こうしてこの果実は、
『キングスマンゴー』
と、命名されたのだった。
それに続いて、今度は、この島でしか採れない、魚介類を採りにいくことになるのだが…。
この島の周辺海域でしかとれない、幻の高級魚があるという。
周辺海域では、いくらでも魚や貝、タコやイカなどもとれるが、それらは別に、ここの海域じゃなくてもとれるようなものだ。
こういう時は、やっぱり腕っぷしの強い漁師に頼むしかない。
「と、いうわけで、僕たちに力を貸してください。」
幻の高級魚をとるために頼み込んだのは、漁師のハルク。この町一番の漁師。
しかしほとんどキングスクラウンと、キングスリング島の周辺以外との交流は今のところ無いため、町一番=国一番ということになる。
「あいよっ!わかった!」
こうして、幻の高級魚がいるという海域に船を出す。
「おおっ!来た来た!」
次から次、魚やら、貝やら、いろいろかかる。
これはまさに大漁だ。大漁ではあるが、異常なほどの大漁で、逆になんだか怖い。
そして!
「来たあああああっ!」
ハルクが声をあげる。
「これぞまさに、幻の高級魚!しかも一匹だけじゃなくて何匹も!何匹もかかってくるぞ!」
クエ、スマ、シロアマダイ、1種類だけでなく、何種類もの高級魚が、次々と網にかかる。
そして、そんなクエ、スマ、シロアマダイの中でも、特にこの海域でしかとれない、幻の高級魚というのが、
『プラチナクエ』
『シルバースマ』
『ダイヤモンドシロアマダイ』
それぞれ、宝石や貴金属の名称がついている。
まさに『海の宝石』という別名がついている、高級魚の中でも個体数が少ないとされる、幻の高級魚たちだ。
「これは一生かかっても手に入らない、食えないようなシロモノだから、ぜひ食っとけ!
それから、あえてこれに値段をつけるとしたら、それこそ一生遊んで暮らせるくらいの値段になるぞ!」
ハルクは自慢気に語る。
「ありがとう!幻の高級魚が釣れたことを、さっそく町のみんなに報告するよ!」
ノボルたちにとってはまさに、感謝感激だった。