じゃんけん大会
私はあるイベントの決勝戦を見に来ていた。
そのイベントの名は『国際じゃんけん大会』。地元の自治体が観光客誘致のために低予算で開催した。
今年初開催のこの大会に、全世界からじゃんけんの強者達が集った。
しかし会場はいまいち盛り上がらない。
野外フェスでも始まりそうな会場だが観客は静かだ。ステージの上には選手の手元を映す巨大なディスプレイがあるが、結局は他人のじゃんけんを見ているだけで、面白さなんてものはなかった。
しかも一回勝負だから、試合はあっさりと終わってしまうのである。
しかし流石は決勝戦、試合が長引いている。
だがずっとあいこになっているわけではない。
確かに他の試合よりもあいこは多いが、既に何度も決着はついていた。
というのもこの大会、負けても相手の要求する金額を支払えばじゃんけんをやり直せるという意味不明なルールがあるらしく、アフリカ系の男が負けても負けてもイタリアのサバサバ系女に5万円を支払って試合をやり直していた。
正直飽きてきた。この大会を観るのも今回が最初で最後かもしれない。
そんなことを思っていると、ついに決着がついた。
10回もやり直されたこの試合だがついに女が負けた。
男は両手を挙げて喜んでいる。
観客はというと、結末に驚いたのが半分、何かから解放されたかのようにため息をついたのが半分といったところだろうか。
女は試合をやり直さなかった。男の要求金額が1千万円だったからなのか、それとも試合が長引きすぎたからなのかは分からない。だが観客は早く終われと思っていただろう。
表彰はその場ですぐに行われた。
男には産廃で作られた金銭価値のないメダルと、賞金50万円が送られた。