覇気のないおっちゃんの話も今日は眠くなれません。
朝食が無事片付くと、大広間の食器や机椅子が全て綺麗に整った。
これも城に住む生活魔法のエキスパート達のおかげである。
聞くところによると、生活魔法の適合者は多いいものの極めるのに時間がかかり、
城で働くのはエキスパート達であり、下手すると政治を語るおっちゃん達より給料がいいらしい。
隣にいたアイシスが俺の手をぎゅっと握る。
俺たちはおでこをコツっと合わせた。
「大丈夫。ずっと俺たちは一緒だ。」
そんな事、実は俺も分からない。
もしかしたらアイシスは城で働き、俺は兵士かもしれない。
そしたら俺たちの厩舎は離れてしまう。
ずっとなんて一緒に入れない。
ただの気休めだ。
「シン。僕はシンとずっと一緒にいたいよ。シンは何でも出来る天才だ。僕の力なんてここではありふれてる。それでも僕に会いに来てくれるよね。」
アイシスは心配そうな顔に少し困った様な笑みを浮かべてた。
「そんな顔しないで。いつか二人でここを出よう。大きな世界を見に行くんだ。」
アイシスの耳元で静かにつぶやく。
この国で国を出る事は大罪だ。結界を一度超えたら二度と帰ってこれない。
アイシスはそれでも綺麗な笑みを浮かべて、俺と視線を合わせると、
力強くうなづくのであった。
同級生が刻々と集まりだす。
あともうちょっとしたら能力値を図る装置で順番に格付けされていく。
自分のステータスが目にまんま見える様になるのだ。
そしてそのステータスで俺たちの職、住む場所、仲間。全てが決められてしまう。
とっても怖い事だった。
もうこれから俺たちは、そう言うレッテルの内でしか生きていけない。
アイシスはああいうが、アイシスは珍しい先読みと洗脳を持っている。とても手の届かない様な職にアイシスが付いてしまったら、。もう滅多に会えずに、俺はアイシスを遠くから毎朝眺めるだけになってしまうかもしれない。
対して俺がつけるのは、兵士か技術者だ。俺は精神作用系の能力がめっぽう低いのは測らないでも分かる。
精神干渉や作用系の能力はてんで使えないのだ。
<僕達、対照的で対になってるみたいだね。>
アイシスが昔言った言葉を思い出す。
「俺たちは二人で完璧なんだ。ずっと一緒だ。」
アイシスを強く抱きしめた。
「おいおい。甘すぎて砂糖を吐いちゃうぜ。まあ美少年が二人抱き合うって構図は目の保養だけどよ。」
野太いざらついた声が邪魔に入った。
「シーラ先生。僕達の感動的な時間を邪魔するなんて、子供じみてますよ。」
赤い目をしたアイシスがいつになく不機嫌だ。でもテンプレ化してる笑みは絶やしてない。
「おーこわいねー。俺も二人の間に入って一緒にギュッてしたいなー。可愛い子ちゃん二人をはべらかすイケメンの図の完成。」
「シーラ先生ってイケメンの部類だったんだ。俺変態オヤジの部類だと思ってた。」
シーラ先生はここの国の上級職の大人にしてはなかなか軽口の叩きやすい話の分かる先生だ。
なんだかんだで俺もアイシスも信頼してる。
「でももうラブラブタイムは終わりよ。ただでさえ目立つのに10歳のお子様達には刺激が強いから。ていうか君らどうしてそんなにませてんの?先生そんな育て方してません。」
続けた様に式典開始のチャイムが鳴る。
「もう自分の席に座っていい子にしててね。」
ガタイの良い片足オヤジの域に突っ込んだあごひげオヤジのシーラ先生のウィンクは最高に気持ち悪かった。
「席行こう。また変態に絡まれる。」
アイシスの手を引いて席に向かった。
みんなが着席したのを見計らって、国王陛下のありがたいお話が話される。
「みんな分かってるかもだけど、
この能力測定が終わったらそれぞれにあった職に就いてもらいます。まだ12歳まではみんな見習いだけど、
お金を稼いで国に貢献する立派な大人の一員です。
友達と一緒になりたいからって駄々こねたり、泣いたり、喚いたり、ズルしたりしない事。
まあこに測定でズルできた奴は今までいないけれども。。。
それでは測定を始める前に祈りの言葉を唱えましょう。」
一万人弱しかいないこの国では国王っと言ってもただのちょっとえらいおっちゃんである。
まあ女王様の時もたまにある。けど10年くらい前から即位して以来、ずっとおっちゃんは国王のままだ。
でも国王のおっちゃんは、やる気の無さそうな絞まんない顔つきをしたおっちゃんである。
詳しい事は知らないけど、おっちゃんはマスターローが75歳で国王を引退してからずっと国王だ。
ってことは能力で言えば国で2番目に強いみたい。
詳しいことは知らないけどね。
テンプレ化したお祈りの言葉を唱える。
「:::<"%{";'*\"]$_$"誇り->{"\'+つねに>]^;!|*守り"}^;・k」
この祈りの言葉は2分くらいの典型分で食事前とか授業前とか事あるごとに言わされる。
「さあ、この儀式が新しい人生の第一歩となります。はりきって臨みましょー。」
超覇気のない声だが今日はそれくらいの方がやり易いのかもしれない。
俺は隣に座るアイシスの手をもう一度ぎゅっと握った、
引っ張りすぎたか