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説明パート、パート2



 城下町。城を囲む町にはスラムと呼ばれるような貧困層の住むような町は見かけない。皆が皆、それなりな暮らしをしていた。少なくとも俺はそんな風に思えた。

「悪意や敵意がない。誰もが打ち解け合っているし、見ず知らずの俺や優にも優しい。内政が安定しているからなんだろうな。一体どんな素晴らしい人間がこの国を統治しているんだろう?」

「お前には悪意があるよな」

「これがいつも通りなんだよね。おかげでよくトラブルに巻き込まれちゃってさ~」

「そうなんですか。傍迷惑ですね」

「ズバッと言うなぁっ!?」

 そんな会話をしながら城下町を隅々まで探索する。王と王女、そして異世界人である俺と優。ありふれたこのパーティでこんなことをしているのは、俺の発言のせいである。だからこそ嫌な予感しかないのだが、優は常にそんな感じであり聡も舞も俺の『不運の運命』の実力(?)を見たいらしく、普通に賛成した。

 どうして町に行きたかったのかと言えば、ある種のフィールドワークである。異世界にいるということは、常識が違うということだ。魔法があったり、『運命力』なる未知の力があったりするだけでも、常識外といえば常識外だ。しかし、それでもまぁ、俺や優のようなオタク文化に多少なりとも親しみを持っている人間からすれば許容できる範囲内の常識外だ。しかし、もしかすればまだ他にも常識外のことがあるかもしれない。だからせめてと俺は安全圏であるこの城下町だけでもこの目で見て確認したかったのだ。

 途中で優と舞には『女王の運命』と『英雄の運命』を持つ人間だからこその用事がある為に別行動になる。すると聡はさらっと丁度いいタイミングで俺に尋ねてくる。

「……それで? どうだ。何か気になったことはあるか?」

「あー、まぁ、幾つか疑問はあるな」

 この世界に来てから幾つか疑問は湧いていた。とりあえず気になっていることの内、幾つか解明しておこう。

「例えば、この世界の経済システムとかはどうなってるんだ? どうやって物価が決まっている?」

「基本そちらと変らないな。国が三つしかねぇから、通貨は共通だけどな。エルドライっつう銅貨、銀貨、金貨、あとは紙幣。銅貨がそっちで言う百円。銅貨十枚で銀貨一枚、銀貨十枚で金貨一枚、金貨十枚で紙幣一枚、って感じだな。それが一応この世界の共通通貨だ。まぁ、一部じゃ、物々交換もできるところもある」

「じゃあ、もう一つ。どうしてこの世界と俺らの世界は、あらゆる物の名称が共通しているんだ? 特に言語だ。俺らで言う日本語。こっちで言う人語。それがどうして共通しているんだ?」

 最大の疑問だ。

 どうして日本語という、カタカナひらがな漢字、外来語や和製外国語などが混在する言語と共通しているのか。言語というのは土地の状況や環境に大きく影響される。この世界は巨大な大陸を三分割し、それぞれに森や砂漠、川、湖、海などの特殊な地形や環境を配分している。そんな国が、島国である日本と同じ言語になるはずがないのだ。まるで、どちらかがどちらかの世界に合わせているような、そんな雰囲気を俺は感じ取っていたのだ。

「やっぱり興も、こちらに連れて来てよかったな。お前は十分な戦力になる」

「俺はただのバカだよ。戦力になんて数えないでくれ」

「謙遜はよせ。そこまで気付かれているのなら答えない訳にはいかないな。隠し事をしていては、王としての威厳が保てない。――この世界には過去にも一度、お前らと同じ世界から人間が来て、世界を救った。約、二十年前にな」

「ああ、戦争を終結させた訳か」

 記憶を辿って、領土争いの戦争が終わった時と同じ時期だと理解し、納得と確認の為に声に出す。どうやら正解らしく聡は露骨に嫌な表情をしていた。

「お前は全力で俺の予定を崩しにかかるな。もう少し雰囲気を合わせろよ。まぁ、簡単に言えばソイツは真の『神の運命』を持っていた。そして、戦争を終結させた後に、必ず同じ世界の人間を呼ぶ時が来る、だから世界の言語を統一したんだ。強制的にな」

 それこそまさしく、神の力で。

「なるほどな。そりゃご親切なことで」

「まぁ、そんな馬鹿げたことはしたものの、世界に平和をもたらしたのも事実だ。それに俺らにとっては新しい知識を得たようなものなんだよな。何せ知らない単語がわんさか脳内に埋め込まれたようなものなんだから」

「そうか、日本語で統一化させたならこの世界とは違う知識も言語として、意味として得ることが出来るってことか」

 日本語は様々なものが対義語、同義語、もしくは類語の観点で繋がっている場合が多い。つまり、この異世界にもある概念を日本語として表す為にこの異世界にない知識が必要となる。それを神の力は

「ああ、だからこの世界はますます発展した。だから俺たちは『神の運命』を持つ人間を敬うし崇めるし信仰する。それにもう一つ」

「神を謳う人間が、『神の運命』を持っていないと分かった時点で断罪する」

「ああ、正解だ」

 『神の運命』を持つ人間を崇める。つまりは神聖なものだと信じ、信用し、頼る。それがまがい者だと分かった時点でそれは神聖なものを汚した者であり不届き者だ。そんな人間は罰当たりな人間には、罰せられるに決まっている。

「だから、自称『神』の正体を知りたいのか。国民を代表して、噂の自称『神』の正体を見つけ出したいのか」

「正解だ。嫌なやつだな、お前」

「お前に言われたかねぇよ、ストーカー」

「監視だ。馬鹿者」

 『神の運命』を持つ者を皮切りに、異世界に本来生まれるはずのない『運命力』を持つ者が生まれるようになった。それがどんな事態を生み出すのかを危惧した『神』は、『王の運命』を持つ者に異世界にいる『運命力』を持つ者を監視する役目を与えた。

 そして王の任意のタイミングでこの世界に連れてくることを許可した。興と優のそのタイミングがたまたま今回だった。そういうことらしい。

「まぁ、実のところこの国、つまりは青水で呼ぶのは初めてなんだよな。それに今のところ、この国の人間は異世界から来たということを知らせていない。俺の演説中に異世界召喚を行ったからな」

「敵を騙すにはまず味方から。まぁ初歩的な方法だな。しかし、それにしてもこの国は王に対して畏怖がないよな。お前の顔見ても顔色一つ変えねぇ」

「ああ、言ってなかったか。この世界じゃ、王としての役目を行うときは仮面を付けるんだ。だから基本的に王の顔を知る人間はいない。それに他の国じゃ、それを利用して演説とか表舞台の際は替え玉を使う王もいるしな」

「あー、なるほど、『王の運命』を持つなら、表舞台の際に殺されるなんてこともまた運命だもんな」

 国民全員を目撃者にして王を殺す。それが国王を信頼する国の国民に最も精神的苦痛を与える見せしめだ。そういう裏政治的な面すらも『運命力』によって起こりやすくなっているということなのだろう。

「うし、大体分かった。サンキューな」

「そうか。なら今度は俺のオススメの場所を教えてやるよ」

 そう言って馬車に乗せられ連れて行かれたのは、城下町から少し離れた場所にある、ありきたりの草原。野原とも言えるそんな場所だが、そこには全くもって人間がいたという形跡が見つからない。

「お前らの世界にはこんな場所少ないだろ?」

「……まぁな。人工的に整備された自然なら幾らでも見たことがあるが、こんな本物の自然は初めて見る」

「自慢じゃないが、この世界には幾らでもこんな場所がある。むしろこういう場所の方が多いくらいだ」

「人間の全体数が少ないからか……? いや、戦争で死者が多いから……?」

「違う。人数は多いさ。特に黄雷なんざ、四十億人が住んでいる大国だ。領土も、俺らの国の数百倍くらいだ」

「こっちは多くて二億人くらいか? やっぱり国家間には格差があるんだな」

「そうだな。いや、まぁ、黄雷は特殊なんだ。今はある種の鎖国状態だし、改善されたかは分からねぇけどな」

「へぇ、じゃあ、赤炎は?」

「人口も面積も青水と同じくらいだ」

「なるほど、国家間の事情もなんとなく分かった」

「っ、お前、どんどん俺から知識を吸収していきやがるな」

「そりゃまぁ、異世界転生において最重要なのは情報だからな。まぁ、でも自称『神』の正体にも大方の目星が付いたし、それでチャラでいいだろ?」

「なっ!? どういうことだ!?」

「ヒントは、魔法と文明レベルと国家間の事情だな。だから今度は魔法について教えてくれ」

「ああ、それなら、舞が優に教えているはずだと思うぜ。だから、優に聞けばいいんじゃないのか?」

「……あいつ、馬鹿なんだよな。魔法の原理とか仕組みとか、理解出来るとは思えないんだが。そのくせ、感覚とかニュアンスとか、そういうのでマスターしやがるし」

「ははっ、そりゃ不運なことで」

「俺の台詞を奪うなよ!」

恒例のパターンを踏襲して、次は優へと視点が変わります。

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