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説明パート。

 簡易の闘技場のような場所の真ん中で剣と剣がぶつかり合う音がする。俺は闘技場の周囲を囲むように並んでいる観客席のような場所で聡にの説明を受けていた。

 戦っているのは舞と優であり、二人共中々に様になっている。様になっているなどと言うとまるで俺が戦闘の経験者であるようだが、要はアニメで見た戦いに似ているというだけだ。

「凄い成長ですね。ついさっきまで剣の持ち方すら分からなかったというのに」

「あはははっ、まぁ、さっき言ってた、『英雄の運命』の効果なんじゃないの? 考えてみれば、私がスポーツとか運動とかそういうの割と得意だったのもそれのおかげなのかもね」

「なるほど。しかし、負けません、よっ!」

「甘いっ!」

 舞が更なる連撃を決めようとしたが、優はそれを剣で受け流して舞の目の前まで寸止めする。確か寸止めや峰打ちというのは戦闘技術が無ければ出来ない芸当だと聞いたことがあるが、どうやら優は既にそれを物にしているらしい。

「……完敗です。まさか、負けるとは思いませんでした」

「いやぁ、ビキナーズラックだよ。ちょっと、その戦い方に見覚えがあったからさ」

 ふと、そういえばアニメ化されたライトノベルにそんなシーンがあったと思い出す。イメージがあったから体が動いた。恐らくそんな感じなのだろう。

 いやはや、凄い。優はどうやら、もうこの世界に慣れてきているらしい。――それに比べて。

「あれが『英雄の運命』、か。期待以上の運命力だ」

「悪いな、俺は『不運の運命』で」

「そう拗ねるなよ。それはそれでレアリティの高い運命力だぜ?」

「レアリティが高けりゃ嬉しいのはトレーディングカードかガチャくらいだろ」

「ははっ、でも使いようによっては使える運命力だぜ?」

「ほう? 囮にか?」

「まぁな。さっきも言ったように、『運命力』ってのはこの世界の全生物の運命を象徴する力だ。例えば俺の『王の運命』なら、人々からの信頼を得られやすい傾向にある。そしてその変わり、俺は独占欲や所有欲などが強い。正直、舞がいなければこの国は俺の絶対王政になっていたかもしれない」

 人々に信頼されやすい王もいれば独裁する王もいる。どちらにせよ王に変わりはないが、要するに良い面もあれば悪い面もある。そういう運命を背負っているということになる。

「で、基本的に『王の運命』を持った人間の子は『王の運命』を持ちやすいのは、王の血統による世継ぎ制度があるから、か。しかし稀に、『王の運命』を持たない王の子も生まれることもある」

「ああ、逆に言えば、そこらの市民にだって『王の運命』を持つ人間が現れることだってある。そういう場合は養子や養父、養母にしたりもする。そうやって身内にしておかないと、誰かに唆されて反逆の王になったりする可能性があるからな」

「なるほど、『運命力』ってのは言わば、素質の体現したものって感じなんだな」

 舞が持つ『女王の運命』。『女王の運命』は王に付き従う傾向にある。また的確なアドバイスを導き出すことが出来る。ただ、そのアドバイスが良い方面のアドバイスなのか悪い方面のアドバイスなのかは『女王の運命』を持つ者にしか分からない。つまり、王の運命を左右する存在ということになる。

 そして優が持つ『英雄の運命』。『英雄の運命』を持つ者は、世界を変えると呼ばれるくらいには世界そのものの影響力が強い。運命力を計測する信託板が壊れてしまうくらいには強い。

 壊れてしまった故に俺の『運命力』は計測出来なかったのだ。それに対して聡がぼそっと「壊れにくいはずだってのに計測する直前に壊れるなんざ、『不運の運命』なのかもな」という呟きで確定した。聡にとっては冗談のつもりだったのだろうが、つまりはそういうことなのだ。

「話を戻して、お前の『不運の運命』は、選択をする時、必ず悪い方向へ選択するってことだろ? だから興は直感的に物事を選択すればいい。その逆が正解だっていう仮定の元で考えていけばいい話だ」

「そういうことか」

「まぁ、『不運の運命』だからそれはそれで間違うかもしれないけどな、そこら辺は他の情報も頼りにしていけばいい」

「……じゃあ、俺必要なくね?」

「俺がお前らをこの世界に呼んだのは、『運命力』じゃなくてその生き方や在り方が気に入ったからだって言っただろ?」

「俺や優の在り方、ねぇ。基本的に優に振り回されてばっかだからな、そういうのを意識したことがないんだが」

「そう、それだ。この世界じゃ、どうも『運命力』を絶対視する傾向がある。正直、俺もその気がある。だけど『運命力』は変えられるってことが最近になって分かった。……これは秘匿情報だぜ?」

「『運命力』を変えられる?」

「正確には変化させる、だ。そうだな、俺の『王の運命』が、『貴族の運命』に落ちたり、逆に『賢王の運命』に昇華したり、そういうことだ」

 『運命力』の大筋は変わらないが、その細かな性質を変化させられる。それを表現するならば、運命は変えられるという言葉が適切なのだろう。

「……あー、ややこしいな」

 あまりにも情報が多い。頭の中で情報が氾濫し、控えめに言って混乱してしまっている。『運命力』の話だけでもまともに整理出来ていないというのに、他にも幾つか重要な項目があるのだ。情報の整理に時間が掛る。

「そうか? んじゃあ、簡潔に説明してやるよ」

 そう言って聡は小さく息を吸い込み、のべつまくなしに言葉を挟む余地なく淡々と大雑把にこの世界について説明する。

「この世界は『運命力』という力があり、それによって大体の運命が決まる。ただし『運命力』は堕落や昇華の可能性がある。またこの世界には魔法があり、単純な魔法を使う人間を魔法使い、複雑な魔法――魔術を使う人間を魔術師と呼んでいる。この世界には赤、黃、青の名を冠する三つの国があり、青の名を冠する青水の王と王女が俺こと西連聡と西連舞。国名の通り俺達は水系の魔法を使う。赤の名を冠する赤炎は炎系、黃の名を冠する黃雷は雷系だな。領地争い等は二十年前の戦争によって終結し、今は不戦条約によってお互い友好的な関係を築いている。で、問題は俺が統治する国の青水。――今、この国は神を自称する人間に狙われている」

「で、その自称神の正体を見破り、国を守るのが俺と優の使命と」

「そうだ。よろしく頼むぜ、救世主さんよ」

「それは優に言ってくれ。俺はただの不運な人間だ」

 聡のおかげなのか、それとも実は最初から理解していたのか、ようやく思考がまとまった。

「あっ、これもしかして割と面倒臭い感じの話なのか?」

 思考がまとまったおかげで気付く。

 よく分からない『運命力』という未知なる力に、魔法や魔術。そして国交やら内政。そして、神を自称する者。

 ややこしいったらありゃしない。

「そうだな。ややこしい話だ」

 流石に三回目はくどいと思いつつ、とりあえず呟いておこう。

「不運だ……」

毎日投稿してるのはテスト期間でやることがないからです。

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