救国の英雄
ど~も。ペッターです。
また好きな歴史を小説にしてみました。ほんの少し残酷な表現がありますので、ご注意ください。
吸血鬼と聞いて皆は何を思いつくだろうか。おどろおどろしい化け物、不死、銀が弱点…。このようなものが思いつくだろう。しかし、吸血鬼の元になった人物をご存じだろうか。それは現在のルーマニアに存在したワラキア公国のワラキア公ヴラド三世である。
「そなたをドラゴン騎士団の団長に任命する。励め。」
神聖ローマ帝国からドラゴン騎士団に任命されたのは、ヴラド三世の父ヴラド二世であった。ドラゴン騎士団に任命されたことにより、二世の代からドラクルという添え名で呼ばれるようなった。
「はっ!」
しかし、このような華々しい活躍ばかりではない。ヴラド二世は、神聖ローマ帝国の隣の大国、オスマン帝国に敗北してしまった。それによるものか分からないが、ヴラド二世は何者かによって暗殺されてしまう。この事によって君主なしの状態になってしまったが…。
「こりゃまずいね~。」
そう呟いたのは、ハンガリー王国の政治家、フニャディ・ヤノーシュであった。彼は、ヴラド二世の一族のヴラディスラフ、ヴラド三世から見れば又従兄弟にあたる人物をワラキア公に推薦しその座に付かせた。
しかし、そんな事をされては息子であるヴラド三世は納得がいかなかった。
「か~え~れ!か~え~れ!とっととか~え~れ!しば~くぞ!」
こうしてヴラド三世はワラキア公に返り咲くのだが…。
「邪魔くせぇ!」
またもフニャディ・ヤノーシュによってワラキア公の座を下されてしまう。いよいよ身よりの居なくなったヴラド三世はモルダヴィアという国のモルダヴィア公アレクサンドルの元に身を寄せる。
しかし、モルダヴィア公アレクサンドルは何年か後に病没してしまう。この時、何を思ったかヴラド三世はフニャディ・ヤノーシュに身を寄せる。この時のフニャディ・ヤノーシュは、改心していたようでヴラド三世のワラキア公奪還を手伝ってくれた。
「決して、ヴラディスラフを裏切った訳ではないぞ!」
「そういうことにしておいてやる。」
こうして、ワラキア公に返り咲いたヴラド三世は、中央集権政策を実行していく。
とあるパーティの席に有力貴族とワラキア公ヴラド三世が居た。ヴラド三世はパーティのために貴族を呼んだ訳ではなかった。
「さようならだ、貴族共よ!」
ヴラド三世は、逆らった貴族や敵国の者を串刺し刑によって処断していく。これが、串刺し公と呼ばれる所以である。こうしてヴラド三世は中央集権を押し進め、かの大国、オスマン帝国に戦いを挑んだ。
「敵よ! 殺してみせろ!!この心臓に銃剣を突き立ててみせろ!! 他の国のように!この私の夢のはざまを終わらせて見せろ!!愛しき御敵よ!! 」
オスマン帝国の皇帝、メフメト2世は何度もワラキアに侵攻したが、陥落出来ずにいた。しかし、メフメト2世はワラキアのヴラド三世反対派の貴族を集め、ヴラド三世の弟、ラドゥを支援し追い落としに成功する。
「同じだ。まるで同じ糞たれだ。国を肯定した化物と、国を否定した化物と。そんな敵の戯言を信じてお前も敵になるつもりか。俺を、お前を、俺達の戦争を、彼岸の彼方へ追いやるつもりか!」
居場所のなくなったヴラド三世はトランシルヴァニアに落ち延びたが、ハンガリー王マーチャーシュ1世、つまりフニャディ・ヤノーシュの子に捕らえられ、今まで行ってきた事を暴虐として、牢獄に捕らえられた。
ヴラド三世は、正教会からカトリックに改宗しマーチャーシュの妹と結婚することで12年間の牢獄生活を終えた。しかし、ワラキア公国は正教会の信徒が多くいる国であったために、人心を失ってしまう。
そして、繰り返される戦争の中でヴラド三世は戦死する。彼は何を思って生きていたのかは誰にも分からないが、これだけは言えるだろう。彼は、父の残したワラキア公国の行く末を憂い、わが身を賭してまで戦っていたという事を。
どうやら串刺し公の逸話がドラキュラになったみたいですね…。
英雄なのに化物扱いとか泣けてきますね。まぁ、敵さんから見ればとんでもない化物に見えたんでしょうが(笑)
私はこういう国のために尽力する人は大好きなんです。どんな形であれ。
ではでは~。