第五話 狩りなう
第四話終りのほう少し修正しました。
ほのぼのとしたエピソードを追加しようと思っていたのに………なんでこうなった?
森の中を歩くこと十数分。泉を発見しました。
泉の水は底がはっきり見えるほど澄んでいている。泉の周りの地面は大きめな石がごろごろしており、座る分には申し分ない。
「ここで野宿をするか」
わう!
俺の独り言に子犬さんが返事をする。ありがとうございます。人恋しいから独り言を言った寂しい人になりませんでした。
周囲を見渡せば、サバイバルに利用できそうなものはたくさんあるし、理想的な野宿ポイントである。
利用できそうな石とか道具とかたくさんありそうだし、工夫次第では、意外と快適な野宿ライフができそうだ。
さあ、二十年の人生で培われた俺のサバイバル技術がここで火を噴くぜ!
一時間後……
あの後、泉の周囲を探索した結果、丈夫そうな蔓と黒曜石のような石、あと焚火に使う枝を手に入れた。
蔓は手ごろな大きさの丸石と組み合わせて狩猟用のポーラを作る。
黒曜石のようなものは石を使って砕いてナイフのように形を整えたのと、槍のように尖らせた石を一メートルほどの棒の先端に蔓で巻きつけて槍を作る。
共に不恰好だがポーラは投げれば目標に巻きつくし、槍はそれなりの強度を持っている。
運よく獲物を捕れれば、毛玉たちに貧しい思いをさせないで済む。
ポーラを右手に持ち、槍を左手に持つ。
さあ、狩りの時間だ。
獲物を探してすぐににわとり(?)を発見しました。
なぜ?がつくかというと、一言でいえば大きいです。とても大きいです。
普通のにわとりだったら大きくても三十センチメートルぐらいだったと思うんだけど、このにわとり(?)は一メートルぐらいありました。
あれですか。放射能で巨大化してしまったのですか? ここは世紀末ですか? それともチェルノブイリですか。とても不安です。
そして何よりも………目付き怖っ! ゴルゴ張りの目付きの悪さです。あの目つきを見ていると、昔ヤクザにからまれた時のことを思い出すなぁ。同級生がヤンキーに絡まれていたから、適当に助けたんだけど、ヤンキーさんのバックにはヤクザさんがいたらしくって、ヤンキーの敵討ちに来たんだ。あの時はさすがに死ぬかと思った。数少ない友人の父親が実はヤクザの大親分で話をつけてくれて助かったけど、それがなかったら、死んでたな、俺。
そんなことよりも、今重要なのは、にわとり(?)の嘴です。大きいです。鋭そうです。あれに突っつかれたら、痛いってレベルじゃねぇぞ。体に穴あくぞ、マジで。
でも、あれだけ大きければば、一人と三匹の食欲を満たすことができるのでは?
そう考えたら行動あるのみ。
幸い、あちらはこちらに気が付いていない。
素早くポーラを振りかぶると素早く投擲する。普通の小鳥相手なら胴体と翼を巻き込むように投擲するのだが、相手は一メートルと巨大な肉体を持っている。ぶつけてダメージを与えることはできるだろうが、それだけだ。
ポーラはぶつけてダメージを与える武器ではない。あくまで相手の体に巻きつけ、行動を封じる投擲具である。ゆえに、狙いはにわとり(?)の足である。
手から放たれたポーラは狙い通りににわとり(?)の両足に絡みつく!
それを確認し、素早く槍を右手に持ち替え、一気に接近する。そして素早く突き出そうとした瞬間、想定外のことが起きた。
飛んだ。にわとり(?)が飛んだ!
あれ、おかしくない? にわとりって空飛べたっけ?
って、ちがうちがう。飛ばれたら逃げられ―――って。
飛んで逃げようとするにわとり(?)。そして飛び上がったにわとり(?)に襲い掛かる小さな影―――子猫さん。
何時の間にそんなところにいたんですか、子猫さん!
ツッコミを入れている間に子猫さんのかわいらしい肉球付きの前足がすれ違いざまに一閃。
子猫さん、一回転して無事に着地。
にわとり(?)は首から鮮血をまき散らしながら落下する。
こ、子猫さん?
ぴくぴくしているにわとり(?)に近づく影。子犬さんでした。
子犬さんはにわとり(?)の首元にかみつくと、とどめを刺しました。
子犬さん、真っ赤です。血にまみれています。
にわとり(?)が息絶えたのを確認した子犬さん、子猫さんとハイタッチ。なにこれかわいい。
呆然とその光景を眺めていた俺の視界の片隅で、優雅にあくびをする子狐。かわいいけど、少しは働け。
それにしても、子犬さんも子猫さんも、小さいながらもすでに捕食者としての本能を持っているのか。下手すれば俺、狩られるんじゃね?
しかし、俺と子犬さんと子猫さんの一人と二匹の即席コンビプレーで獲物をしとめたのだ。少しうれしい。
よし、キャラじゃないけど、獲物をとった礼儀として、お決まりのあれをやりますか。
せーのっ!
「にわとり(?)とったどーーー!」
にゃー!
わぉ~ん!
ご感想をお待ちしています。
にわとり食べたいなぁ。