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聖獣の保父さん  作者: 結城大輔
プロローグ 俺と三匹の毛玉たち
5/14

第四話 状況確認なう

旅行に行っていて遅れました。

金目鯛うまー。

というわけで第三話です。

 五分間ほど尻尾に見とれていたが、子犬さんと子猫さんが揺れる子狐の尻尾に気が付いたのか、飛び掛かってくんずほぐれつのじゃれ合いに突入したとこで、ようやく我に返った。


 こんなことをしている場合ではない。


 さあ、まずはじめに所持品の確認をしよう。


 財布 所持金 1532円

 カード類

 携帯電話

 アパートの鍵

 お守り

 デジタル腕時計


(サバイバルに使えるものが何もない……)


 夜、コンビニに買い物に出かけるような軽装だ。所持品って言っても、パーカーのポケットに入っているようなものだ。とてもサバイバルの役に立つようなものが入っているわけがない。


 大学にいたのだから、教科書の入っていたバッグを持っていたはずなんだけど、どこかで落としてきてしまったのか、姿かたちもない。あれさえあれば、お弁当やビニール袋、十徳ナイフが入っていたりしたのだが。どこかに落としてきてしまったのだろうか。


 まあ、無いものはしょうがないので、現地調達でそろえていくしかない。


 アケビの蔓を編めば籠ぐらい作れるし、黒曜石なんかが手に入ればナイフを作ることができる。


 伊達や酔狂で田舎で育ってきたわけじゃない! もやしっ子の現代人に比べれば、サバイバル技術の一つや二つ、ちょちょいのちょいですよ。


 まあ、現時点で現在一番問題になる可能性が高いのは、時間だけど。


 腕時計で時刻を確認すると午後五時三十二分。


 日の長い夏とはいえ、あと二時間もすれば日が暮れてしまう。それまでに最低でも寝床と、何よりも火と水の確保をしなければならない。まあ、最悪水は何とかなるだろう。最悪の方法であるが確保することができる。しかし、火ばかりは生き残る上で重要な要因である。


 俺の周りでじゃれ合っている三匹の毛玉たちは見れば見るほどほんわかする素晴らしい生き物であるが、子供がいるということは大人がいるということである。


 子犬さん、子猫さん、子狐。この三匹に共通する点で重要なものが一つ。




 かわいすぎることである。




 じゃなかった。


 捕食者であるということである。


 毛玉たちが大人になれば、非力な人間など簡単に狩られてしまう。


 野良犬は集団で狩りをし、ネコ科の肉食獣は無音で近寄り喉仏を噛み砕き、狐は……狐は……あれ? あんまり怖くないな。狐が怖いのはエキノコックス症くらいか。まあ、不意を突かれて噛まれて病気になる恐れがあるのは怖いよね、うん。


 あの、その、すいません、子狐さん。お願いですから噛みつかないでくださいな。甘噛みなのはあまり痛くないのでわかるのですが、こちらを見ながらだんだん力を入れるのをやめてください。子犬さんと子猫さんが真似をしますから。子犬さん、子猫さんやめてください、噛まないでください。遊びではないので噛みつかないでください、痛い痛い痛い痛い! 



 しばらくお待ちください



 許してもらえました。喉をやさしくなでて土下座をしたら許してくれました。ちょろいもん―――いえ、何でもないです。


 は、話をもどそう。


 火を熾しておけば野生動物対策にもなるし、火の明かりは目印にもある。生水や生肉を沸かしたり焼くことによって、寄生虫や食中毒を防ぐことができる。



 火を制する者が、サバイバルを制するのである。


 格好良く決めたところで、現在の時刻は午後六時。


 毛玉たちをなだめている間に予想以上に時間がたっていた急がなければ。


 俺は立ち上がって、とりあえず歩き出した。目的地はないし、とりあえず子供のころに野山を駆け巡った勘を活かすしかない。頑張ってくれ、俺の勘。


 そんな俺の後をはしゃぎながら、そして時にじゃれつきながら、追いかけてくる三匹の毛玉。ナニコレカワイイ。


 微笑ましい光景に心なごませながら、森の出口に向け、ゆっくり歩き始めたのだった。



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