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聖獣の保父さん  作者: 結城大輔
プロローグ 俺と三匹の毛玉たち
3/14

第二話 現実逃避中なう

 ぺろぺろぺろぺろ、きゅーん


 ぺろぺろぺろぺろ、くーん

 

 ぺろぺろぺろぺろ、にゃーん、かぷっ



(く、くすぐったひ)


  生暖かい何かが俺の顔をくすぐっている?


 昨日は友人に勧められたハートフルわふわふ動物漫画を読んで夜更かししたため、寝不足なのに……。



 わう?


 くぅ~ん?


 にゃふ~?

 


 俺は安眠を妨害する不埒ものを捕獲し、抱きしめながら寝返りをうつ。あ、もふもふしているわ~。


 そういえば、東京に上京してきたばかりのころは、一人で寝るのが寂しかったんだよね。


 別に、女の子といつも一緒に寝ていたとか、甘えん坊の妹がいつも添い寝をせがむとか、そんないい思いい出なんかじゃなくて、実家で飼っている猫の鬼平(ノーブルジャンフォレストキャット メス 10歳)がいつも俺の布団にもぐりこんでくるんだよね。夏場は暑くて地獄だけど、寒い時期には理想的な湯たんぽだった。


 そういえば、鬼平は元気かな。あいつ、ツンデレだったし、俺以外の家族を嫌ってたからな。特に爺ちゃんを。さすがに雌猫に鬼平という変な名前を付けた張本人だったから、自業自得って言っちゃ、自業自得だけど。


 ああ、それにしても暖かくて気持ちいい。このまま二度寝でもするか………。



「って、ちがうわっ!!」



 わふっ!?


 くぅん!?


 にゃふっ!?



 違うし。違うし。違うしっ!


 俺、大学にいたよね? 俺大学でアルバイト募集の連絡先に電話してたよね?


 な・ん・でっ!


 俺はなんでこんなところにいるんだよっ!?


 一面、緑、緑、緑っ!


 木、木、藪、草、草、白い子犬、きつね色の子狐、白い子猫。


 上京して東京のコンクリートジャングルに目を白黒させ、田舎の緑しかない空間を懐かしく思っていたのは事実だよ? 


 でもさ、でもね、さすがに一瞬でこんな田舎に行けるはずねーだろ。そんなことできるんなら、実家から大学に通ってるわっ!!


 たしかに、東京の空気の悪さや人の多さや水の不味さや狭いアパートなのにくそ高い家賃とか、絶望しかけたけど、獣医になる夢をかなえるために六年間頑張っていこうって心に決めたってのに、現実逃避でこんな光景を見るなんて……疲れているのかな、俺。


 ああ、俺の足にじゃれついている動物の赤ちゃんかわいいな~。


 子犬さんに子狐さんに子猫さんか。かあいいなぁ。


 動物っていいよね。昔から同級生から距離を取られていて、友達の居なかった俺を慰めてくれて、いつも一緒に野山を駆け巡った飼い犬の大吾郎(ゴールデンレトリーバー 雄 享年十二歳)は虹の橋の向こう側で元気にやってるかなぁ。俺がそっちに逝くのはまだだいぶ先。


 ―――というか、現在の状況を冷静に分析すれば、もしかしたら、もう近くにいるような気がする。


「よし、現実逃避は終了だ。落ち着け、愛原あいはら想司そうじ。現実を見つめよう。戦わなきゃ、現実と」


 状況を確認するために、まず第一に情報収集だ。次に持ち物の確認。そして周囲の散策。どんな状況でも、最後まで生き残るのは冷静な行動をとる人間だって、爺ちゃんが言ってた。


 そして一番最初に死ぬのはお調子者かセックスをした人だとも言ってたんだけど。ゾンビ映画見ながら。


 そうだ、冷静に、冷静に。情報を得る方法は幸いにしてある。


 貴重な情報源であるかわいい三匹の毛玉を見る。


 そう。今、俺の命を握っているのはこの、ふわふわで、もこもこで、とてもかわいらしい三匹の毛玉たちである!




 ………大吾郎がいい笑顔でこちらを見ながら微笑んでる姿が、一瞬見えたのは気のせいだろう。


 ………おいでおいでしているのも気のせいだろう。



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