第十二話 ゴブリンと妖精なう
初めて予約投稿してみました。
目を開くと、そこは見知らぬ天井だった。
あれ、何か、前も同じことなかったっけ?
まあ、いいか。
俺はベッドから降りると、ストレッチを始める。
起きたばかりのためか、全身が突っ張るような違和感があったが、ストレッチを続けるうちに気にならなくなる。
体の違和感もなくなったし………ここはどこだ?
窓辺によって外を見てみる。どうやら、この建物は二階建ての大きなロッジ風の建物のようで、俺がいる部屋はその建物の一階のようである。
にしも、何時の間にこんなところに来たのだろう。
確か、大学でアルバイト募集のポスターを見て、電話したらいつの間にか気を失っていて、気が付いたら森の中にいて、子犬さんと子猫さんと子狐の三匹にであって、それからそれから。
後ろで人の気配を感じたため、振り返ると、醜い化け物が立っていた。
そうそう。野営していたら、こんな化け物に襲撃されて―――って、うぉい!
俺は前に襲ってきた化け物がいることに気付き、慌てて窓から飛び出そうとする。
『待て。そんな恰好で外に出るつもりか』
化け物が外に飛び出そうとした体勢でいる俺の肩に手をかけていた。
にしても、そんな恰好ってなんだ?
自分の格好を見てみると………パンツ一丁でした。早く気付けよ、自分!
気を失うまで服を着ていたはずなのに、何故? ま、まさか、お、俺、こ、この化け物に服を脱がされた? 気を失っているうちに俺………。
『安心しろ。けがの治療のために脱がしただけだ。それ以上のことはしておらぬ。自分の誇りにかけて誓おう』
俺は化け物を振り返ってみてみると、醜い顔がかすかに歪んでいる。どうやら、苦笑しているようだ。
そんなことよりも、俺、こいつのいっている言葉がわかる? 前、森で襲われた時は『ぐぎぎぎ』とか『ごあ』って喋っていたはずなのに。
『まあ、その体勢で話をするのはお主にとって辛かろう。とりあえず、座って話そう。お主は憶えておらぬであろうが、お主は死にかけておったのだから』
俺は化け物の目をじっと見てみる。化け物もそれに気が付いたのか、俺を見つめ返す。
思い出してみれば、こいつは確か、俺を攻撃した化け物に似ているが、たしか、蛇から助けてくれたような気がする。目からも、凶暴な感情は感じられず、理性的な光が見える。
まあ、とりあえず、話を聞いてみるのもいいか。俺はそう思い、とりあえず、ベッドまで戻ることにした。
『挨拶が遅れた。自分の名前はセガルと申す。種族は見ての通りゴブリンである』
「俺は愛原想司」
俺はベッドに腰掛けながら、化け物を見る。どうやら、この化け物の名前はセガルというらしい。
にしても、ゴブリン? ゴブリンって、ゲームに出てくる雑魚モンスターだよな。何でそんな化け物が地球にいるんだよ。まさか、
『アイハラ・ソウジ。すまぬが、お主の姓と名はどちらであろう?』
「姓が愛原、名が想司。想司でいい」
『すまぬ。それではソージ殿。今、お主が置かれておる状況が理解できぬのは無理もない。お主にとって信じられぬ話であろうが、聞いてほしい』
まあ、疑問は化け物の……化け物は失礼か、セガルの話を聞いてから質問すればいいか。にしても、えらい時代がかった喋り方をするものだ。まるでサムライのような口調だ。いや、サムライとしゃべったことないけど。
『単刀直入に申そう。ここはソージ殿が住んでいた世界ではない』
へー。
『セージ殿はこの世界に召喚されたのだ』
召喚? あれか。ゲームとか小説でよくある、あれか。
『お館様がソージ殿を召喚した理由はお館様が説明するであろう。故に、自分はあえて申さぬ』
ふむ。俺を召喚したのはセガルのいうお館様という奴か。
『驚かぬのだな』
「驚いてはいる。だが、異世界というのは理解できる」
巨大なにわとり(?)とか、化け物に追いかけられたからな。怪我もしたし、痛かったし。夢じゃないのは確かだ。
『兎も角、ソージ殿。これからお館様と会うことになる。詳しい説明はお館様がするであろう』
「……分かった」
『ではソージ殿』
『ゴブリン。ちょっといい?』
セガルが何かを言おうとしたその時、窓から何かが入ってきた。
大きくて美しい蝶の羽を背中にもつ小さな少女だった。こいつは、妖精か。ファンタジーだな。
『妖精殿。藪から棒に、どうした?』
『バカ様が呼んでいるわよ。そこの』
妖精はこちらを睨み付け、
『薄汚い人間も』
薄汚いか。確かに、昨日は風呂に入っていないから、汚いのは無理もないか。お館様だが、バカ様だかよくわからんが、そいつに会う前に、シャワーでもいいから浴びたいな。
「セガル」
『何であろう?』
「この妖精は?」
『妖精殿である』
いやいや。妖精だってことはわかるけど、そういうことを聞きたいんじゃなくて、名前は?
それに妖精さん。怪訝そうな表情で俺を見ないでもらえる?
『あんた、前に会った時よりまともね』
「前に?」
会った事などないだろう。ゴブリンはともかく、妖精なんてファンタジーな生き物なんて見たことなどない。見ていれば、ここが日本じゃないことぐらいすぐに分かっただろう。
『(ゴブリン。こいつ、本当に何も覚えていないの)』
『(妖精殿の電撃のせいで記憶を失ったのではないか? 現に二日間生死の境を彷徨っておったし。やり過ぎではないか)』
『(うっ。でも、あれはこの人間が悪いんだから!)』
『(殺すほどのことでもなかろう)』
『(万死に値するわよ!)』
『(お館様の客人を殺してどうする)』
何か、二人で内緒話している。妖精と化け物。はたから見てみれば、美女と野獣だな。いや、この配置だと幼女とロリコンか。
「セガル。バカ様だかお館様が呼んでいるんだったら、早く行こう」
時は金なり。というか、いい加減、自分の置かれている状況を把握したい。バカだかお館様だが何だか知らないが、早く会いに行くべきだろう。
『そうであるな。ではソージ殿。お館様に会いに行こう』
セガルがドアのほうに向け歩き出したので、ベッドから腰を上げ、後を追う。
『行くのはいいけど、あんた、服ぐらい着なさいよ』
呆れたように俺を見る妖精さん。
………すいません。誰か俺の服を持ってきてください。
想司くん、最後までパンツ一丁です。
ストレッチしているときに気づけよ、というツッコミは無しということで。
ご感想お待ちしています。
会話シーン意外と難しい。