表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖獣の保父さん  作者: 結城大輔
第一章 俺は君と出会う
12/14

第十一話 寝ぼけ中なう

20000PV、5000ユニーク突破しました。

ありがとうございます。これからもがんばって書いていきます。

 目を開くと、そこは見知らぬ天井だった。


 夢を見ていたことは覚えているが、それがどんな夢か思い出せない。


 しかし、悪夢ではなかったようだ。何しろ、心が軽い。何だか救われたような気分になってくる。


 一体どんな夢を見ていたのだろう。


 気になるのだが、確認する術がないので、気にしないことにするしかない。


 さて、ここはどこだろう。


 とりあえず、起き上がって確認しようとしたところ、目の前に突然クマが現れた。



 あれ、いきなりゲームオーバー?



 俺とクマ。見つめ合う一人と一匹。


 よくよく見てみれば、どう考えても大人のクマではない。


 それはそうだろう。大人のクマが俺の胸の上に座っていれば、その時点で押しつぶされて終わっている。


 大きさは四十センチぐらいだろうか。毛皮はもこもこで、つぶらな瞳が可愛い。恐る恐る俺の顔のにおいをすぴすぴ嗅いでいる。


 ふむ。臆病な性格なのだろうか。つぶらな瞳には怯えと好奇心の色が見える。


 俺はゆっくりと子クマさんの頭を撫でる。一瞬、怯えた瞳で俺を見てきたが、目を見て軽く微笑むと子クマさんは頭を手に押し付けるように甘えてきた。


 さすがに寝ている状態で撫でるのはさすがにつらいので、上半身を起こす。起こした時、左肩と右腕が突っ張るように痛んだのだが、何故だろう。頭の中が霞がかったように、何でこのベッドで寝ているのかわからない。


 上半身を起こした時に、コロンと俺の上から転げ落ちた子クマさんの首根っこをつかんで、目の前に持ち上げる。


 子クマさんは前足を伸ばして俺に触ろうとする。そこで子クマさんの両前足に甲羅のようなものがくっついているのに気が付いた。あれ、クマに甲羅なんてくっついてたっけ?


 んなわけないな。図鑑で見たことしかないけど。


 まあ、可愛ければどうでもいいけど。


 子クマさんを抱きしめながら、ここはどこだろう、と考えた。


 辺りを見渡すと、ベッドと木製の机しかないシンプルな部屋だ。壁や床は木を使っているのか、木目が美しく、何より匂いが懐かしい。


「あーっ! 起きたのね!」


 懐かしい匂いを胸いっぱい吸い込み、子クマさんをもふもふといじりながらボーっとしていると、窓のほうから女性の声が聞こえた。


 窓のほうを向いてみると、きれいな蝶の羽が見えた。


「なんだ、虫か」


「誰が虫よっ!」


 蝶々が俺の目の前まで飛んできた。虫か喋るなんて、なんてファンタジー。疲れているのかな、俺。


「あんたね、こんなかわいい妖精を見て」


 蝶々は一回転して俺を指さし、


「虫だなんて、目、腐ってるんじゃないの!」


 何これうざい。


「うざい言うな!」


 ふむ。うざいものはうざいのだが、蝶々(?)をじっくり見てみる。


 いや、蝶々と可愛らしくいっているが、大きさが半端ない。


 翅の大きさは四十センチ四方ぐらいの大きさ。その二枚の羽と羽の間に身長四十センチぐらいの可愛らしい少女がいた。いた、というか飛んでいる。翅をひらひらさせながら。


「夢か」


 どうやら、俺は夢を見ているらしい。


 こんな奇天烈な生き物が地球上に存在しているわけがない。仮に存在していれば、ニュースになっているだろう。そんなニュースは聞いたことがない。


「寝直すか―――っ!?」


「あんた、人を無視して寝ようとするなんて―――蹴るわよ?」


 蹴ってから言うな! 俺は抗議するように自称妖精(笑)の蝶々を睨み付ける。


 すると、蝶々は真っ赤にしていた顔が急に青くなって目をそらした。


 ったく、夢が人様の頭を蹴飛ばすんじゃねぇ。


 蝶々が蹴飛ばしてきたのはあまり痛くなかったのだが、俺の手にじゃれついていた子クマさんが加減を間違えたのか、甘噛みが本噛みになってしまったのだろう。かなり痛い。


 子クマさんも加減を間違えてしまったことに気が付いたのだろう。固まってこちらを見上げている。

まったく、仕方がないな。


 まあ、子クマさんのやることだし、あんまり怒ってはいないのだが、まあ、最初が肝心か。


 俺は抱きしめていた子クマさんの首根っこをつかみ、目の高さまで持ち上げる。さあ、注意をしようと口を開きかけたところ、子クマさんの後ろで手を振り上げている蝶々に気が付く。振り上げている手からバチバチと危険な音が聞こえる。


「あたしの話を―――聞けっ!!」


 罵声とともに蝶々が手を振り下ろす。嫌な予感がして子クマさんを放り投げた次の瞬間、衝撃とともに目の前が真っ暗になった。




《妖精 side》


「人間の分際で、あたしの話を無視するからよっ!」


 あたしが気を利かせて様子を見に来てあげたのに、あたしの存在を無視するばかりか、あたしを虫扱いするなんて。異世界からいきなり召喚されて可愛そうだから見に来てあげていたのに。まったく、失礼しちゃうわ。


『妖精殿。大きな音がしたが、どうかしたのか』


 ドアを開けて、醜い顔をした大きなゴブリン――まあ、あたしから見れば、たいていの生き物が大きく見えるんだけど――が入ってきた。


「気にしないで、ゴブリン。無礼な男に天罰を与えただけよ」


 怒っているあたしと黒焦げになった男と部屋の片隅でなぜか丸まって震えている御子様を見て、何があったのか察したのだろうか、ため息をつくと、


『妖精殿。客人は、異世界に召喚されたことを理解しておらぬ、とお館様から説明されたではないか。

 森で見つけた時も自分の姿を見て驚いておったから、我らのような存在が存在せぬ世界であったのだろう。混乱するのは当然。

 それ故に妖精殿に対して失礼な態度をとったぐらいでこの仕打ちは、あんまりではないか』


「あたしをコケにしたのだから、当然の仕打ちよ!」


 あたしは自分のプライドを傷つけた男に天罰を与えただけだ。何も悪いことをしていない。


 あ、ため息をついた。ゴブリンの分際であたしを馬鹿にしているの?


『妖精殿の言いたいことはわかった。ここはもうよいから、白エルフ殿を呼んできてくれぬか? このままではせっかく助けたのに、無駄になってしまう』


 あたしにも言いたいことがたくさんあったのだが、ゴブリンがこちらを見たので口をつぐむ。


 そ、そんなに怒らなくてもいいじゃない。あー、わかりました。わかりましたよ。


「呼んでくればいいんでしょ、呼んで来れば」


『すまぬが、頼む。―――ああ、妖精殿』


 あたしが窓から出ようとしたところで、ゴブリンが声をかけてきたので振り返る。


『この御仁は心優しきお人である。今は混乱していた故に、妖精殿に失礼をとってしまったが、話してみればきっと気に入られるとおもう。次に会った時には、冷静にな』


 何をいまさら。まあ、ここはあたしが大人になってあげてもいいかな。………二度目はないけど。


「わかったわよ、ゴブリン。あんたの顔を立ててあげる」


『重ね重ねすまぬ。すまぬが』


「急いであの高慢ちきを呼んで来ればいいのね。言ってくるわ」


 あたしは窓から外に出ながら、内心でこの後が楽しみになってきた。


 無礼で目つきが悪いが、見たことの無い面白い顔をしている人間。どんな騒動が起こることやら。


「あははっ。たのしみ~♪」


 これから起こる騒動に心躍らせながら、あたしは宙を舞った。




今回主人公以外の視点を入れてみました。

別視点は投げっぱなしになっていますが、後々説明していきます。

ちなみに、ゴブリンはあの化け物です。意外と紳士です。


ご感想お待ちしてます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ