第三話 〜機械オンチ妖狐、ユウリの野望。〜
どうやら、オレが晴れて合格した「ビデオ再生の試練」は、今までの召喚者にとって困難をきわめたらしい。
ユウリは、げんなりした様子で話し始めた。
「どいつもこいつも、装置のまえで儀式をはじめたり、よくわからん呪文を唱えだしたり、果ては装置を叩き壊そうとしたり……散々なものじゃったわい。」
オレとユウリはテレビの前に正座し、「いまからでも遅くない!老後からはじめる機械講座」とラベルの貼られた、ビデオテープの映像をみていた。
「オレ以外にも、ユウリたんが召喚した人間がいるってことか。その人たちは、いまはどうしてるんだ?」
テレビから流れる機械講座を見ながら、ユウリはオレの疑問に答えた。
「うむ、全員お帰り願った。」
「──は?」
死後の世界に?
それってつまり、殺……
ドン引きするオレの顔を見て、ユウリは補足する。
「物騒なことを考えるでない。ちゃんと正規の手順を踏んで、天界へと返したんじゃ。今ごろは別の世界で、みな元気に暮らしておることじゃろう。」
ユウリの言葉に、オレはほっとしたのと同時に、なんだか不思議な感覚になる。
天界、か……。
少し前まで、オレもそこにいたわけだよな?
ちょうどビデオの再生が終わり、ガチャッ!という音と共に、ビデオテープが差し込み口から顔をだした。
「──ひっ!?な、なんじゃ!?」
不意に動いたビデオデッキに、ユウリがビクッと怯え、身構える。
「ビデオは再生が終わると、こうやって自動的に出てくるんだよ。ユウリたん、知らないのか?」
オレの説明に、ユウリは目を点にする。
「び、でお?」
……いやな予感がする。
「これがビデオデッキで、いま再生したのがビデオテープ。ビデオの中身を映してたのが、このテレビ。ユウリたん、オーケー?」
オレがひとつひとつ、電子機器を指差しながら伝えるも。
「びでおでっき、てーぷ、あと、テ……テ……。」
ユウリは目を泳がせながら、オレの言葉を復唱するが、言葉につまってしまう。
……。
バグったゲーム画面のように固まってしまった美少女妖狐に、オレは助け船を出す。
「テレビ。」
「て、てれび……ええい、そんなに一気にまくし立てるでない!わかりづらいぞ、ドクマ!」
ユウリの苛立ちと、恥じらいの混ざった声。
……マジかよ、これは。
オレは頭をかかえた後、決断した。
今一度、状況を整理する必要がある。
オレはユウリを正座させ、問い詰める準備に入った。
ユウリは気まずそうに、畳の床に目線を落としている。
「まずは質問一つめ。コンセントを知ってるのに、装置自体の名前を全然知らないのはおかしいよな?これはどういうことだ?ユウリたん?」
オレの質問に、ユウリは目線を落としたまま答える。
「コンセントが『装置を起動するための原動力』ということだけは知っておったのじゃ……知らなければ、生活もままならぬからな。」
……なるほど。
この異世界では日常生活に電気が使われていて、人々も電子機器を扱って暮らしている、と。
そこんところは、オレが元いた世界と変わらないってことか。
「質問二つめ。さっきの試練は、べつにオレをテストしたわけじゃなくて、おまえがビデオの使い方を知らないから、代わりにオレに使わせただけだった。つまりオレは、おまえの機械オンチをごまかすためだけに召喚された。そうだな?ユウリたん?」
ユウリは、今度はオレの眼を見て反論した。
「それは違う!いや、半分は正解なのじゃが……ワシがおヌシを召喚したのには、ちゃんとした理由があるのじゃ!」
「理由?」
オレがそう聞くと、ユウリはすくっ!と立ち上がり、拳を握りしめ、こんこんと語り始めた。
「この度、美少女妖狐ユウリは──100年ぶりに下界へとおもむく!それにともない、おヌシには付き添いとして、このワシに同行してもらう!それが、今回おヌシが召喚された、真の理由なのじゃ!!」




