第二話 〜挑戦、妖狐の試練。〜
「こっちじゃ。ついてこい。」
試練の間へとユウリに案内されながら、オレは考える。
「試練……か。」
主人公への試練──
いままでプレイしてきた、数々のゲームのそういった場面を思い出す。
頼りになる仲間たちと一時的にわかれ、たった一人でボスに立ち向かう勇者。
難解なギミックや、トラップが仕掛けられたダンジョンの、単独での攻略。
あるいは、自らの心に巣くう「悪」との対峙……。
「そういえばおヌシ、名はなんという?」
考え込むオレを案じたのか、ユウリがたずねる。
「安済独真。」
オレの名前を聞いたユウリは、目を丸くする。
「ドクマ……変な名前じゃな。」
すかさず、オレは言い返す。
「おまえの名前、ユウリってのもどうなんだよ?妖狐だったら、なんとか御前とか、なんとか君とか、もっとこう、威厳がある名前でもいいんじゃないのか?」
オレはてっきり、さっきみたいな軽口が返ってくると思ってたが。
「……。」
美少女妖狐は、言いたいことが言えないといった様子で、うつむき、ただ黙って口をつぐむ。
……気に、してたのかな。
オレは彼女の、地雷を踏んでしまったようだ。
「いや、その……言い過ぎた。オレが悪かったよ。『ユウリたん』って名前も、けっこう親しみやすいしな!うん。」
オレの言葉に、妖狐は足を止めた。
「……ユウリ、たん?」
……まずい。
オレはユウリを和ませるつもりで言ったが、今度こそ、妖狐の逆鱗に触れたか──?
「なんと──なんと若者的な響きじゃ!!そのように呼ばれたことは、ワシは、ワシは……今の一度もなかったぞ!!!」
美少女妖狐はしっぽを振りながら、感動の声と、興奮した目でオレを見る。
どうやら、気に入ったらしい。
「よいかドクマ、命令じゃ!これからこのワシのことは、かならず『ユウリたん』と呼ぶように!わかったな!?」
「あ、ああ……わかった。よろしくな、ユウリたん。」
すっかり上機嫌になったユウリの命令に返事をしながら、内心で動揺するオレ。
扱いが難しいな……こいつ。
試練の間に着くと、そこには。
畳の部屋の真ん中にたたずむ、ブラウン管のテレビ。
その前に置かれてるのは、ビデオデッキと、ビデオテープ。
「ユウリたん、これは……?」
「試練開始じゃ。これらの装置を使い、その中に封印されし『古代の知識』を映し出してみせろ。」
……。
オレは頭の中で、ユウリの言った内容を解釈する。
とどのつまり、この古ぼけたテレビに、この年季の入ったビデオを再生してみせろ、と。
──これが、試練?
おもわずオレは、ユウリの目を見る。
彼女の眼は真剣で、オレをからかっているようには見えない。
……。
まあ、召喚者の機嫌を損ねるわけにもいかない。
さしづめ、知能テストといったところなんだろう。
オレは黙って、ビデオ再生の「試練」に取りかかる。
……懐かしいな。
今でこそ映像メディアはDVDとかブルーレイディスクだけど、昔はテープでテレビ番組とかを録画してたんだよな。
つうか、異世界にもビデオってあるもんなんだな。
オレはビデオデッキの入力端子と出力端子のコードを、テレビの裏の挿し込み口につなげる。
──あれ?
「……ユウリたん、コンセントは?」
さりげないオレの質問に、ユウリは身体と声を同時に震わせた。
「ご……ご……!」
「……ゴ?」
そして。
ありったけの音量で、妖狐は叫んだ。
「──合格じゃあーーーっ!!!」




