第一話 〜召喚者は、美少女妖狐?〜
「うむ。目覚めたようじゃな。」
その少女の声と、田舎のばあちゃん家に似た匂いと共に、オレは目覚めた。
眼を開けると、オレはその匂いに納得した。
古びた日本の家屋特有の、畳と障子を基調とした部屋。
壁に貼られた様々なお札、お面。
その他、よくわからない海外旅行のおみやげみたいな、人形やら棒きれやらの、怪しいまじないの道具。
「ふっふっふ……おヌシの目の前にいる美少女妖狐ユウリ様よりも、ワシのコレクションに見とれておるとはのう。」
──オレの目の前?
「いや……だれもいないけど。」
「なんじゃと?」
オレの目の前には、その美少女妖狐?どころか、だれかがいる気配すらない。
「おヌシ、ふざけておるのか?この高貴で妖艶なるユウリ様の姿が見えんとは、いったいどういうことじゃ!?」
焦りと苛立ちを見せる少女の声に、オレは負けじと反論する。
「おまえこそフザけんなよ!妖狐だかなんだか知らないけど、隠れてないで出てこい!」
……?
よく見ると、空中に浮いている一枚のお札がある。
それが地団駄を踏むように、ぴょんぴょんと宙を舞っている。
「なあ。その札って……。」
オレの言葉に、お札がぴたりと動きを止めた。
「フダ?あ──」
少女はそう言うと、苛立ちから納得の声へと変わる。
「ああ〜……どうりで。おヌシがワシの姿を認識できないのも無理ないわい。」
そう言って、ビリッとお札が破れた。
それと同時に、オレの目の前に。
古めかしい部屋に似合わない、近未来風の和服衣装の、狐の耳としっぽを持った──ツインテールの美少女妖狐があらわれた。
「ワシの名はユウリ。歳は200年を優に越えておる、美少女妖狐じゃ。」
「しかし、このワシの透明化の術を見破るとはのう。おヌシには素質があるやもしれぬ。」
要するにこいつは、透明化の呪符を自分に貼っていたことを忘れたまま、オレに話しかけてたのか。
あらためて、目の前の自称200歳以上の美少女妖狐を、まじまじと見る。
頭にはえた狐の耳、ふわふわのしっぽ。
……作り物には見えない。
「ここ、どこなんだ?オレ、死んだはずなんだけど?」
困惑するオレの質問に、ユウリは平然と答える。
「ここはワシの家じゃ。おヌシは死んでいて、ワシがこの世界に召喚した。だから、今は生きておる。」
……なるほど。
これが俗に言う、異世界転生ってやつか。
オレも詳しくは知らないが、聞いたことはあった。
あのウワサが今、まぎれもない現実として、オレの身に起きたんだ──。
「オレはこれから、おまえに従わないといけないのか?」
召喚魔法によって召喚された者は、召喚した者に従う。
レトロRPGの鉄則だが、異世界召喚ではどうなんだろう?
「ワシに召喚されたからには、おヌシにはワシの役に立ってもらう。だがまあ、なにもドレイになれとは言わん。おヌシを悪いようにはせんよ。安心せい。」
そのユウリの言葉に、オレの緊張がすこしほぐれたのも、つかの間。
「これからはじめる試練に合格できれば……の話じゃがな?」
ユウリが、いや──妖狐が。
そう言って、あやしくオレに微笑みかけた。




