表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
やり直した先の未来に、あなたが隣にいなくても【仮】  作者: 三愛 紫月


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/11

あの日

 あの日をやり直せば未来は変わる。

 やり直すってことは、私達が歩んできた未来を全てなくすこと。

 結婚生活の20年も。

 交際期間の3年も。

 全部、全部。

 泡のように消えてなくなる。

 それでも、私は。

 四月に生きていて欲しい。

 生きて、そこで笑っていて欲しい。


ーー高校2年 8月8日

 この日、私と四月の未来は大きく変わったのだ。

 それまでにも、この子のせいで変えられていたんだけど。




夏希なつきは相変わらず元気だねーー」

「それだけが取り柄ですからね!六月先輩」

「そっか、そっか」


 高校一年の冬。

 四月と六月は、人数が不足しているという理由でサッカー部に入部させられた。

 私と三月もマネージャーになったのだ。

 そして、今年に入り新たなマネージャーとしてやってきたのが笹本夏希ささもとなつき二階堂葉月にかいどうはづきだった。


 二人が入ってきたことによって、私達の未来は違う場所に舵をきっていった気がする。



「五月先輩、お疲れさまです」

「お疲れさま」

「五月先輩、大丈夫ですかぁ?」

「えっ、何が?」

「だってぇ。皆さん、五月先輩より三月先輩の方がやる気がでるって言ってましたよーー」

「確かに、三月は綺麗だからね」

「ですよねーー。だから、六月先輩も好きになるんですよねーー」

「えっ?そんな話したの?」

「はい。夏希にだけは教えてくれたんです。内緒だって」



 これは、彼女の嘘。

 だけど、この頃の私は気づいてなかった。

 1度目の人生の私は、夏希このこに振り回されていた。

 夏希このこが嘘をつく理由は知っている。


ーー1度目の人生


「夏希ちゃん、六月が三月を好きだって言ったよね?」

「あーー、あれですか。嘘に決まってるじゃないですか」

「どうして、そんな嘘をつくの」

「どうしてって決まってるじゃないですか。ライバルは1人でも少ない方がいいんですよ」



 思い出した。

 夏希ちゃんは、六月が好きなんだ。

 だけど、ここでバレてはいけないので。

 スルーする意味も込めて。



「そうなんだ。三月は、綺麗だもんね」

「あれーー、五月先輩悲しくないんですか?」

「ど、どうして?」

「だって、五月先輩。六月先輩のこと好きじゃないですか?」

「な、何の話?」

「バレバレなんですよ。あんな風に見つめてたら。キモいと思いますよ、六月先輩」



 グサグサと心を刺してくるような言い回しは夏希ちゃんらしい。

 って、こんなの言われなかったのになんで。

 当たり前か……。

 私が選択肢変えたんだもんね。



「四月先輩は、五月先輩のこと可愛いって言ってましたよーー」

「えっ?」

「嬉しいですか?五月先輩」



 嬉しいんじゃない。

 夏希ちゃんが私にこの話をするのは、もう少しあとだから驚いただけだ。

 この言葉のせいで、傷ついた私は四月に惹かれていった。



「ライバルの多い六月先輩より。普通より少しかっこいい四月先輩の方が普通の五月先輩には合ってますよ」

「アハハハ、そうかなーー」



 本当に夏希ちゃんは嫌みを言うのが得意だ。



「夏希ちゃんはいいの?六月が三月と付き合っても」



 とんでもないことを言ってしまったか?

 夏希ちゃんの気持ちを知るのは、まだ先なのに。



「あーー、それですか。大丈夫です」

「大丈夫?」

「はい。三月先輩は、六月先輩を絶対に選びませんから」



 すごい自信。

 たぶん、三月の好きな人が四月だって知っているんだ。

 だったら、私だって。



「そっか」

「はい。ご心配していただきどうも」

「夏希ーー、昼御飯行こう」

「葉月ーー、行く行く」



 2人は中学からの親友だって前に葉月ちゃんから聞いていた。

 葉月ちゃんは、クールで我関せずタイプだったから。

 たぶん、私が夏希ちゃんに振り回されてるのも知らない。



「五月、今日は購買?それとも弁当?」

「し、四月!!」

「どうしたんだよ。驚いた顔して」

「う、ううん」



 たぶん、四月も夏希ちゃんに何か言われて。

 それから、私を好きになったんだと思う。

 ってことは、今の四月の好きな人はきっと三月。

 




ーー1度目の人生・プロポーズ前



「今さらだけど五月に話さなきゃって思って」

「何?」

「俺ね、高校の入学式で三月に一目惚れしてたんだよ」

「えっ、そうだったの?全然知らなかった」

「そりゃそうだよ。告白せずにフラレたんだから」

「何で、告白しなかったの?」

「夏希ちゃんから聞いたんだよ。三月は、六月が好きだって。それでショック受けてたら、五月が俺をカッコいいって言ってたって言われてさーー。もしかして、五月って俺が好きなのかな?って思ってるうちに気づいたら俺の方が夢中になってた」

「何、それ。じゃあ、私も言うね。私はずっと六月が好きだった。まあ、途中からだったんだけどね。それで、夏希ちゃんに六月が三月を好きだって言われて落ち込んで。そしたら四月が可愛いって言ってたって伝えられて。初めはえっ?てなったけどさ。四月は、優しいし。六月には及ばないけど、それなりにイケメンだし。気づいたら好きになってた」

「って、それって俺ら夏希ちゃんに騙されてたってことか?」

「そうなるね」

「まっ、いっか。結果オーライじゃん。だって、俺。五月と一緒にいると幸せだから」




 騙されていたのに気づいたのは、19歳の冬に四月がカミングアウトしたからだ。

 夏希ちゃんは、四月が私を好きになるように仕向けた。

 だけど。

 それは、まだ先だ。



「あのさ、四月」

「何?」

「四月って、三月のこと好きだよね?」

「はあ?な、何言ってんの急に」

「バレバレだよーー、ほら、顔赤くなってるじゃん」

「あーー、もう。一番気づかれたくない相手に気づかれたわ」

「じゃあ、やっぱり好きなんだ」

「好きだよ!入学式からずっと」



ーーズキン。


 四月の言葉に胸の奥が痛む。

 あの笑顔も泣き顔も怒った顔も。

 もう2度と私には向けられない。

 これから先は、三月が見るんだ。



「五月どうした?泣いてるのか?」

「違う違う。目にゴミが入っちゃって」

「それって痛いやつじゃん。見せてみ」

「大丈夫、大丈夫。ちょっとトイレ行ってくる」



 決めたはずなのに。

 心が痛む。

 


「危な」

「あっ、ごめん」

「何だ、五月か!って、どうした?」



 運命は修復を始めた。

 だって、こんな展開あり得ない。



「六月……」



 涙がポロポロこぼれ落ちる。

 こんな話を誰にもできない。

 だから、よけいに辛くて悲しい。

 


「大丈夫か?ちょっとそこ入ろう」



 六月は、私を空き教室に引っ張っていく。

 今の私の心臓はドキドキして五月蝿いぐらいだ。

 だけど、頭は違う。

 1度目の記憶を持っている私の頭は四月が好きで。

 涙を止める術が見つからない。



「五月大丈夫か?」

「ごめん、何か止まらなくて」

「何かあったって聞いたらウザイだろうから。これぐらいはさせて」 



 運命は加速する。

 捻れたものを正すように。

 六月は私を自分の胸に引き寄せる。

 今の私の心臓は早くなって苦しいのに……。

 涙が止まらない。



「うーー、うーー」

「泣きたいだけ泣けばいいんだよ。我慢しなくていいから」



 六月の優しさが胸を締め付ける。

 本来の運命はこれなんだ。

 だったら、このスピードにのらなくちゃ。

 じゃないと、四月は。



ーーガラガラ


「五月ーー、えっ?」



 ゴトッと何かが落ちる音がする。



「いきなり開けるなよ!四月」


 四月が入ってきたんだ。

 私は、慌てて六月から離れた。



「ごめん、ごめん。でも、2人ってその」

「違う、違う。五月が泣いてたから、それだけで」

「なーーんだ。ビックリした」

「ビックリって何だよ」

「いやーー、お邪魔かなーーって思ってさ」

「何言ってんだよ!そんなわけないだろ。ってかさ、俺の飲み物は?」

「フッ……」

「あっ、五月、やっと笑った」

「ごめん、何か。アハハハ」

「止まらなくなってんじゃん」

「アハハハ」


 

 そうだ。

 私は、このために戻ってきたんだよ。

 四月と付き合ったことによって、三月と六月と次第に仲が悪くなった。

 卒業したら2度と会うこともなくなって。

 だから、こんな風にやり取りをすることもなくなって。




ーー懐かしい。

 嬉しくて悲しくて。

 散々泣いて笑ったら気づいた。


 もう、頭の中に支配されないでいい。

 私は、ただ四月に生きていて欲しいだけ。

 どれだけ、悲しくても苦しくても。

 四月の生きていない未来より、悲しいものなんてないんだから。




「あーー、心配して損したよ」

「損ってなんだよ、四月」

「だってさ、何か五月が変だったから」

「変じゃないよ!だって、四月が三月を好きだって告白するからだよ。あっ、ごめん」

「えっ?四月って三月が好きなの?」

「あーー、もう五月!何で言うかなーー」

「ごめんね、わざとじゃないの」



 わざとだよ、四月。

 だって、六月に協力してもらえた方がうまくいく確率はあがるでしょ。

 運命を戻すには、多少強引な手段を使わなくちゃ。



「いいじゃん、いいじゃん。俺、協力するから」

「協力って?」

「じゃあ、まずは今日のカラオケ。俺と五月は遅れるから」

「ちょっ……。まだ、心の準備が」

「必要ないって、いつも通り頑張れ」



 六月は四月の肩を叩く。

 この選択が正しかったのなら、20年後も2人は笑い合っているはず……だよね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ