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やり直した先の未来に、あなたが隣にいなくても【仮】  作者: 三愛 紫月


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10/11

死んだのか……?

 急いでいた。

 ただ、急いでいたのだけを。

 ハッキリと覚えている。

 何で、急いでいたのかと聞かれると。

 それが、よく思い出せない。

 

 何だか記憶がぶつ切りで。

 何だろう。

 大事な事を忘れている。



ーーブー

ーーブー


 思い出した。

 


『止まれーー、止まれーー』


 肉体が、死んだのか生きてるのかわからない。

 ただ、目の前のトラックを止めなきゃ。

 止めなきゃ。



『神様……五月を助けてください。そのためなら、俺。何だってするから』

『本当に?』

『えっ?』

『本当に何でも出来るって約束できる?四月』

『か、母さん』


 神様だと思ったら、母さんだった。

 俺は、母さんに向かって頷いてみせる。


『それなら、諦めなきゃいけない命もあるのよ』


 母さんは、五月のお腹を指差した。


『そんな……望んだんだ。俺が、望んだんだ。五月との』

『無理なのよ、四月』

『どうして?』

『だって、四月と五月ちゃんは運命の相手じゃないから』

『えっ……?何言ってんの、母さん。運命は、自分の手で』

『切り開いて掴み取るもの。確かに、言ったわよ。だけどね、四月。運命に逆らっちゃうとね、こうなるんだよ』


 母さんは、自分の顔を指差して笑う。


『母さんはね。後悔なんか1つもしてないよ。だって、四月が産まれて幸せだったから』

『それなら、俺だって』

『五月ちゃんを諦めて、赤ちゃんの命を選ぶ?そこに、四月も五月ちゃんもいなくても』

『な、何言ってんだよ』

『痛みはなかった?それならよかったわ』


 母さんに言われて思い出す。

 事故にあったことを。

 救急車の中で、どんどん意識が遠退いていって。

 気づいたら、ここにいて。

 って事は……死ぬんだ、俺。


『四月、時間がないよ。選択しなきゃ』

『そんなの出来るわけないだろ』

『五月ちゃんと赤ちゃん。どっちを選択する?』

『そんなの……出来るわけ』

『パパ』

『えっ?』

『ママはパパを選んだよ、だから、パパもそうして』


 繋がれた手。

 温もりはないけれど。

 俺と五月の子供なのは、すぐにわかった。


『ごめんな』

『ううん』

『本当に、ごめんな』


 大きくなったら、可愛い女の子になるのがわかった。

 目の前にいるのは、5歳ぐらいかな。

 産まれることのない命。

 

『ごめん、本当にごめん』

『大丈夫だよ!パパもママもちゃんと愛してくれたのをわかってるから。覚えてるから。だから、大丈夫だよ。安心して』


 身勝手な選択だってわかっている。

 だけど、俺は。

 五月に生きていて欲しいんだ。

 例え、五月と付き合えなかったとしても。

 それでも、俺は。


『行きなさい』


 母さんに背中を押されて。

 光の奥に吸い込まれていく。

 俺達の未来は。

 どこに向かうのか。

 ちゃんと五月は、生きているのか。

 教えてよ。

 母さん……。

 いや、神様。


 


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