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その手をとって、反撃を  作者: gacchi(がっち)


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40/55

40.お父様の事情

「……お父様?」


「……まさか……ナディアなのか?」


お父様とはずいぶん長いこと会っていない。

見捨てられてしまったのだと思っていたけれど。


ゆっくり近づくと、そこにはやせ細ってしまったお父様がいた。


「どうしてそんな姿に……」


「保護した時、クレールはアンペール侯爵領の屋敷で監禁されていた。

 再婚した時点で行動を制限されていたようだが、

 ナディアを助けようと王都に戻ろうとして監禁されたようだ」


「私を助けようとして?」


「……私が愚かだったんだ」


お父様はかすれた声で話し始めたら、咳き込んでしまう。

慌てて駆け寄って手を取ると、骨が浮き出るほど細くなっていた。


「まだ体調が戻ったわけじゃないんだ。俺から説明しよう」


「お願いします」


代わりに説明してくれたのはクラデル侯爵だった。

お父様から事情を聞いているらしい。


「学園時代のリアーヌは誰からも求められていた。

 クラデル侯爵家の血を引く唯一の令嬢だったからね。

 それこそ陛下の妃にも打診されたし、世界中の王族からも求婚が来ていた。

 だが、クラデル侯爵家は政略結婚をさせない。

 リアーヌが選んだのは同じ学園に通っていたクレールだった」


「お父様とお母様が恋愛結婚だというのは聞きました。

 でも、お母様が亡くなってすぐに再婚したので、

 ちょっと信じられなくなっていましたけど……」


「その再婚はナディアを守るためのものだった」


「え?」


「魔術師でもあるリアーヌがいればナディアを守れたのだろうけど、

 アンペール侯爵家にナディアを守る力はなかった。

 世界中から来る求婚を断り続けることは難しい。

 だから、モフロワ公爵家の後見を得るためにオデットと再婚した」


「だからお義母様とあんな契約を……」


お父様とお義母様の再婚の契約は、

お義母様の産む子にアンペール侯爵家を継がせるものだった。

お義母様が産んだジネットはお父様の子ではないと聞いた。

相手がわからない子を孕んだお義母様を押しつけることで、

モフロワ公爵家の力を借りることにしたのか……。


「モフロワ公爵家ならナディアを守る力があると思ったんだろうけど、

 それはそこまでの力ではなかった。

 再婚した後妻がナディアを守ろうとしなかったのもある。

 そのため、国王から王家が全力で守ると約束すると言われて、

 ナディアが第二王子の婚約者になることを承諾した」


「それはモフロワ公爵家の思惑とは違ったのですね?」


「ああ。モフロワ公爵家は孫のレベッカかジネットを王妃にする予定だった。

 それを相談もなしに奪ってしまった形になる。

 モフロワ公爵と手を切って王家と結ぼうとしたようなものだしね。

 結果としてナディアは更に冷遇されることになった。

 まぁ、八つ当たりされたってことだな」


「八つ当たり……そうですね」


レベッカ様からもジネットからもひどく当たられていた。

なりたくもないロドルフ様の婚約者になったから。


「その時にはもうすでに王都には来られないようにされていたクレールだが、

 噂でナディアが第二王子から冷たく当たられていることを知った。

 王家が守ってくれる約束はどうなったのだと抗議しようとしたクレールに、

 モフロワ公爵家は屋敷で監禁することにしたんだ。

 ナディアの状況が改善されたら困るからね」


「そういうことでしたか……。

 お父様は私のせいでこんなことに」


「それは違う。ナディアのせいではないよ。

 少しずつ嫌な方向にずれて上手くいかなかったんだと思う。

 俺もナディアが魔力がないのなら、

 クラデル侯爵家では肩身がせまいだろうと声をかけなかったし、

 クレールも同じ理由で助けを求めてこなかったんだと思う」


「そうですね……私も同じ理由で助けを求めませんでしたから」


魔力なしで役立たずの私がクラデル侯爵家の血筋だというだけで、

保護されたとしても幸せにはなれないと思っていた。


王家との婚約やモフロワ公爵家の後見も、

私にとっては大変な状況になるだけだったけれど、

それがなかったらもっとひどいことになっていたのかもしれない。


「クレールはその時にできる最善のことをしたんだ。

 結果はどうあれ、ナディアのことだけを考えて」


「ええ……わかっています」


こんな身体になっても、まだお父様は私を心配するような目で見ている。

ずっと離れていたから見捨てられたのだと思っていたのに、

どれだけ私のことを思ってくれていたのだろう。


「お父様……心配させてごめんなさい。

 ずっと守ろうとしてくれていたのね」


「ナディアが……悪いんじゃない。

 私の力がなかったんだ。すまない。

 守るとリアーヌに約束……したのに」


「ううん……お父様のせいじゃない」


本当にお互いのせいではないけれど、

クラデル侯爵家の血に振り回されている気がする。


「アンペール侯爵」


「あなたはシリウス様ですか?」


「そうだ。シリウス・クラデル。魔術師の塔の管理人をしていた」


寝台のそばに座り込んだ私の肩に手を置いて、

シリウス様がお父様を呼んだ。

お父様とシリウス様は初対面のようだ。



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