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その手をとって、反撃を  作者: gacchi(がっち)


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38.動き出す

ひざの上で抱きしめられたまま、シリウス様の熱を受け止める。

重なる唇が押しつけられるのが苦しくて口を開いたら、

口づけがより深くなった。


息苦しくて苦しいのに気持ちよくて何も考えられなくなる。

しがみつくようにシリウス様に抱き着いて、

ただ流されるように口づけしている。


するりとシリウス様の手がスカートの中に入り、足を撫でられる。

そんなところをふれられるとは思っておらず、身体がびくりとする。


驚いた私に気がついたのか、シリウス様が唇を離した。


「……嫌か?」


「……足にふれられるなんて初めてで」


「そうか……」


もしかして、このまま……?

このままシリウス様と身体を重ねることになるの?


結婚すると決めたけれど、結婚前に身体を許してもいいのだろうか。

令嬢としてはありえないけれど、魔術師としてはどうなの?


嫌なら止めればいいのに、本当に嫌なわけじゃない。

このままシリウス様がしたいというのなら……


「……悪かった」


「え?」


急に謝ったシリウス様は手を離して、乱れたドレスを直す。

……私、嫌がったと思われた?


「あ、あの……」


「ナディアと結婚できると思って、理性を失くすところだった。

 こういうことは結婚してからだな」


「……あ、はい」


「ナディアを雑に扱ったりはしない。

 ちゃんと大事にしたいんだ」


「はい……」


嫌われたわけじゃなかったことにほっとする。

シリウス様は私の唇を指で拭うと、もう一度軽く口づけた。


「そのような顔でいたら、また手を出してしまいそうだ。

 ……落ち着いたらクラデル侯爵家に行こう」


「え?クラデル侯爵家ですか?」


「今のナディアの義父はクラデル侯爵だからな。

 結婚の許可をもらいに行こう」


「わかりました」


クラデル侯爵家の養女になって、いろいろとお世話してもらっているけれど、

まだ一度もお会いしたことがない。

挨拶やお礼に行った方がいいのかシリウス様に聞いたことがあったが、

忙しいから卒業後でいいと言われていた。


お父様を保護してもらっていることもあり、

忙しいだろうから、私に会う時間がないのも仕方ないと思っていた。


それなのに急に行って大丈夫なのだろうか。


真っ赤になっていた私の顔が落ち着くまで待つと言われたけれど、

シリウス様のひざの上で抱きしめられている状況で落ち着くわけがない。


「あの……シリウス様に抱きしめられていたら、

 少しも落ち着きそうにないのですけど……」


「どうしてだ?」


「だって……恥ずかしくて」


正確に言えば、好きすぎてこんなに近くにいるのが恥ずかしい、だ。

さっきまで口づけしていたのを思い出すだけで顔が熱くなる。


ずっと好きになってはいけない人だと思っていたのに、

両思いだとわかっただけではなく求婚までされて。

舞い上がらない人間なんていないと思う。


「それは俺がそばに居る限り難しいということか?」


「……はい」


少なくとも数日はかかると思う。

へたしたら数か月……。


私の真っ赤な顔を見て、無理だとあきらめたのか、

シリウス様は私を抱き上げたまま立ち上がる。


「え?」


「無理なら、このまま行こう」


「ええ?」


「リンデルには顔を見せないように」


「えええ?」


顔を見せないように?

聞き返す前にぐらりと空間が揺れて転移したのがわかる。

私はシリウス様に隠されるように抱きしめられたまま。


転移した先は屋敷の玄関前だった。

シリウス様が現れたのを見て、使用人が扉を開けてくれる。


「あ、あの、シリウス様、私、歩きます」


「このままでいい」


「え、あの、恥ずかしいので……下ろしてください」


「……仕方ないか」


渋々といった感じでようやく下におろしてくれる。

いろんな衝撃があったせいか、うまく足に力が入らない。

だけど、抱き上げれたまま侯爵に会うのは避けたくて、

シリウス様の腕につかまるようにして立つ。


「……そのまま俺に隠れていればいい」


「まだ顔は赤いですか?」


「真っ赤だな」


「……わかりました」


シリウス様の腕にしがみつくと、ちょうどローブのゆるみで顔を隠しやすい。

私がゆっくりしか歩けないからか、シリウス様もゆっくり歩いてくれる。

ふわふわした気持ちのままついていくと、目的の部屋にたどりついたようだ。


「リンデル、開けるぞ」


「ん?シリウスか?」


ドアを開けると同時にシリウス様が呼びかけると、

机に座って作業をしていた男性が顔をあげた。


銀色の髪に緑目。穏やかそうな顔立ちの男性。

この方がクラデル侯爵。そして私の伯父様。


「え?誰か連れてきたのか?

 その髪の色はもしかして……ナディア?」


「そうだ」


「ようやく連れて来てくれたのか」


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