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その手をとって、反撃を  作者: gacchi(がっち)


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36.謁見

次の日、王宮に向かうためにドレスをミリアに着せてもらい、

派手にならない程度に化粧と髪を結ってもらう。

昨日のシリウス様が気になっていて、

ミリアに話しかけられてもどこか上の空だった。


「そろそろお時間ですね」


「そう……」


シリウス様にどういう顔をすればいいのか悩んでいると、

空間が魔力で揺れてシリウス様が転移してくるのがわかる。


「準備はできているな?」


「はい」


「では、行こう」


今日はミリアを連れて行かないのか、私だけを連れてシリウス様が転移する。

飛んだ先はシリウス様に初めて会った控室だった。


ドアを開けると、近衛騎士が二人待っていた。


「シリウス様とナディア様ですね。ご案内いたします」


シリウス様に手をひかれるようにして近衛騎士の後をついていく。

行先は謁見室のようだ。


だが、部屋に入ると陛下は玉座ではなく、降りて出迎えている。


「お呼び出しして申し訳ない。どうしても謝罪させねばいかんと思い」


「謝罪か」


「おい、ロドルフ、早くしろ」


「は、はい!」


後ろで控えていたロドルフ様がシリウス様の前に出る。

そのまま腰をしっかり曲げて頭を下げる。


「申し訳ありませんでした!俺の負けを認めます!」


「ほう。ナディアに敵わなかったのを認めるのか」


「はい!俺の魔術とは全然違っていました……今の俺では勝てません」


「ふうん。素直に負けを認めるとは思わなかった。

 国王、こいつのことはどうするつもりだ?」


ロドルフ様がいさぎよく負けを認めたからか、シリウス様の機嫌が少し良さそう。

だが、陛下の言葉にふたたび不機嫌になってしまう。


「ロドルフは負けを認めて謝罪したので、退学は取り消してもらえませんか?」


「取り消す?退学を?」


「ええ、最初は退学の話はでなかったそうですし」


「ああ、そうだな。退学だと言い出したのはロドルフ王子とレベッカだ。

 だから、俺は夜会にまで顔を出して確認したよな?

 本当にその条件でいいのか、と」


「あ……ですが、王子が退学だなんて」


「自主退学なら、来年に入学し直すことができる。

 それで卒業すればいいだろう」


「そんなことをすれば卒業するのが三年後になります!

 それでは俺は王太子になれない!」


ロドルフ様も退学を取り消してほしかったのか、本音がこぼれた。


「お前が王太子になるのはもう無理だろう。

 婚約者にするはずだったレベッカは平民になったぞ」


「は?……平民?レベッカが?」


「ああ、そうだ。二日前、バラチエ侯爵家に行って話をしてきた。

 あのような愚かな娘は侯爵家に必要ないそうだ。

 妃が王太子妃教育まで終わっていなければ、王太子になる資格はない。

 第一王子に譲るんだな」


「……いえ、ナディアと結婚すれば問題ありません!」


「は?」


え?私と結婚?ロドルフ様が何を言っているのか理解できずに固まる。


「俺はナディアと婚約し直します。

 そして学園を一緒に卒業してすぐに結婚したいんです。

 この国を俺とナディアが守っていくためにも、お願いします!

 退学を取り消してください!」


「……ちょっと待て。どうしてナディアと結婚することになるんだ」


「シリウス様、ロドルフは心を入れ替えたようです。

 ナディアに冷たくしていたことを深く反省して、やり直すと。

 ロドルフとナディアが私の跡を継いでくれるのなら安心です」


陛下まで私とロドルフ様がやり直すことを認めようとしている。

まさか無理やり王命で再婚約を命じられてしまうのでは。

怖くて身体が震えてくる。

すがるような気持ちでシリウス様のローブをつかもうとしたら、

その手を引っ張られて、腕の中に閉じ込められる。


「ナディアは渡さない」


「「は?」」


「……え?」


今、シリウス様はなんて言ったの?

転移するわけでもないのに引き寄せられて、抱きしめられたまま。


「シリウス様!ナディアに何を!?」


「ナディアは俺のものだ。どうしてお前ごときに渡さなければならない」


「シリウス様、ナディアはずっとロドルフの婚約者でした。

 ナディアはロドルフの妃になるために頑張ってきたのですぞ!

 どうか、お認めになっていただきたい!」


「嫌だ。何があっても、ナディアはお前たちには渡さない」


「そんな!ナディアの努力を無駄にするおつもりですか!?」


陛下が勝手なことを言っている。

今までずっと放置されてきたことを思い出したら我慢できなくなる。


「私は!」


シリウス様の腕の中から叫んだら、シリウス様が少しだけ腕をゆるめてくれる。

そこから顔を出して、陛下とロドルフ様を見た。


「私はロドルフ様の婚約者になりたいと思ったことなんて、

 一度もありませんでした!」


「……え?」


「命じられて仕方なく婚約したのに、ロドルフ様には冷たくされ!

 二人の仲を引き裂いたのは私じゃないのにレベッカ様に恨まれ!

 会うたびに魔力なしの役立たずだって言われて!」


「いや、それは……」


「そんな状況で結婚したいと思うわけないでしょう!」


今までのことをそのまま言っただけなのに、

なぜかロドルフ様がショックを受けたような顔をする。

冗談じゃない。どれだけロドルフ様に傷つけられてきたと思っているの?


「婚約を解消できて喜んでいるんです!

 私は一生シリウス様の弟子として生きていきます!

 もう二度と関わりたくありません!」


「ナディア、だが、王妃になれるんだぞ?

 お前の両親が喜ぶとは思わないのか?」


「思いません。お父様だって婚約解消に賛成してくれます」


「亡くなった母親は喜ぶだろう」


「いや、クラデル侯爵家の者が王家との結婚を喜ぶわけがないだろう。

 リアーヌ様のことは俺がよくわかっている。

 そんなことで喜ぶような人じゃない。

 むしろ、好きな男と結婚させられないことを嘆くだろう」


「そんな……」


お母様を知っているシリウス様も加勢すると、さすがに陛下も黙った。


「俺……もうナディアのこと傷つけない。

 大事にするから、だから」


「だからといって、今までのことはなかったことになりません。

 謝られても、嫌いだったものが好きに変わるわけはないんです」


「嫌い……俺を?」


「はい。嫌いです」


「……嘘だろう」


本当です、という前にロドルフ様は崩れ落ちた。

どうして私に嫌われていないと思っていたのか疑問でしかない。

あんなにも私を虐げていたくせに。



「話は終わったな。では、帰るか」





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