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その手をとって、反撃を  作者: gacchi(がっち)


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31/55

31.攻撃

「待ちなさいよ!」


振り向いた時には、レベッカ様は魔術式を書きあげ、

私に向かって火球を投げつけたところだった。


「危ない!」


誰かが叫んで、火球に気がついた令嬢たちが悲鳴をあげる。

火球はまっすぐに私とミリアへと向かってきていた。


「ナディア様!」


ミリアが私を庇おうと前に出たが、ミリアに火球がぶつかるよりも早く、

私たちの周りに結界を張る。

レベッカ様が放った火球はすべて結界に吸い込まれるようにして消えた。


「結界!?」

「嘘だろう!こんな早く魔術式を出せるのか!?」


ちょうどミリアが私の前に出ていたから、

魔術式を書かずに発動したのは見えなかったらしい。


レベッカ様の火球はほとんど威力がなかった。

とはいえ、結界がなかったらミリアはやけどをしていたはずだ。


まさかこんなに人が大勢いる場所で、

私を攻撃してくるなんて思わなかった。

たとえ侯爵令嬢であっても許されることではない。


「大丈夫!?ミリア!」


「え、ええ……何ともありません」


「ミリアに何もなくてよかった……。

 レベッカ様、人に向かって攻撃魔術を発動するなんて、

 何を考えているの!」


「うるさいわね!あんたなんかがいるから!

 ずっとロドルフの婚約者にもなれなかったし!

 シリウス様の弟子にもなれない!

 あんたがいなくなれば全部うまくいくのに!」


「そんなこと言われても私のせいじゃないわ」


ロドルフ様の婚約者になんてなりたくなかったし、

シリウス様が弟子をとるかどうか決めるのはシリウス様だ。


私がいなくなったからといってうまくいくようなことではないのに。


まだ私を攻撃するつもりなのか、魔術式を書き出そうとしたレベッカ様に、

学園長が魔力をぶつけて無理やり停止させる。


「っ!」


「これ以上、罪を重くするのは止めなさい。

 レベッカ嬢が選ばれないことにナディア嬢は関係ないだろう」


「学園長……ですが、ナディアはいつも私の邪魔ばかりして。

 ナディアさえいなかったら私はっ」


「レベッカ嬢の邪魔をしているのはナディア嬢ではない。

 こうなっては庇うことはできない。問答無用で退学処分とする」


「でも、なんともなかったじゃないですか!」


「無事だったのはナディア嬢があの早さで結界を張れたからだ。

 普通の学生ではそうはいかなかった。

 残念だよ。自主退学にしておけば、もう一度入学してやり直すこともできたのに。

 処罰として退学になった者を受け入れることはない」


「そんな……」


「バラチエ侯爵家まで送り届けろ」


 「「「「はい!」」」」


「離して!学園長!悪いのは私じゃない!

 ロドルフ!私を助けなさいよ!」


数人の教師たちがレベッカ様を押さえつけて連れて行く。

レベッカ様はロドルフ様に助けを求めていたけれど、

ロドルフ様は座り込んだまま動こうとはしなかった。


「ナディア様、今のうちに寮に帰りましょう」


「そうね、それが良さそう」


学生たちは騒いでいるレベッカ様に気を取られている。

気がつかれないように、こっそりとその場を離れる。


「ナディア様、さきほどはありがとうございました」


「ううん、お礼をいうのは私のほうだわ。

 ミリアは私を庇って前に出ていたでしょう?

 怪我していたかもしれないのに」


「ですが、ナディア様のおかげで何ともありません」


「そうだけど、もうあんなことしないでね?」


「えっと……それはお約束できそうにありません」


「もう……仕方ないわね」


また何かあればミリアも守ればいいかと考え直す。

守るなと言っても、専属侍女としての役割があるのだろうから。


寮の部屋に着くと、テーブルの上に花束とカードが置かれていた。


「花束……?シリウス様からだわ」


「まぁ!素敵ですね!」


カードには一位おめでとうとだけ書かれていた。

結果を知っていたのだろうか。

もしかしたら、結果を知らないまま花束を用意してくれたのかもしれない。

私が一位になると信じて……。


シリウス様の性格からすると、そのほうがあっている気がした。

明日も魔術演習の授業がある。

その時にあらためてお礼を伝えよう。


その日の夕食はクラデル侯爵家から豪華な食事が届けられた。

夜会で見たことがあるような食事を並べられ、

席に着く前に私のお腹がくうと鳴った。


「やだ……恥ずかしい」


「ふふふ。聞かなかったことにします」


「もう。こんな豪華な食事を食べるのは初めてだわ。

 夜会では食べることを禁じられていたし」


「そうなのですか?」


「ええ。それ以上太るなとロドルフ様に言われて、

 ロドルフ様の目の前で食事することはできなかったの」


あの頃は小食というか、まともに食事をすることも許されなかった。

太っていたのは食事のせいじゃなく魔力のせいだったから、

食べなくても痩せることはなかったのに。


「シリウス様からはナディア様の食事量を増やすように言われています」


「そうなの?」


「はい。魔力を貯めていた分がなくなれば、

 魔力を使った分だけお腹が空くことになるからと。

 今の三倍くらいまで増やしていいと言われています」


「三倍?」


「はい。ナディア様の食事量が少なすぎるんです」


「そうなのね……」


「これからは好きなだけ食べてもいいそうですよ。

 シリウス様がその分、修行を増やすそうですから」


その分、修行を増やすと言われると少し怖いけれど、

食事をするのが怖いと思う気持ちはなくなっていた。





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