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その手をとって、反撃を  作者: gacchi(がっち)


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28.試験

気がついたら三時間は過ぎていた。

集中していると時間はあっという間に過ぎていく。


「このくらいにしておきましょうか」


「はい。いよいよ明日ですね」


「ええ、今日は早めに休みましょう」


「私の勉強のためにナディア様のお時間を使わせてしまって申し訳ありません」


「いいのよ。私の復習にもなるし」


試験の前日、ミリアに勉強を教えつつ自分の復習もする。

今まで勉強に集中できる環境ではなかったからか、

ミリアの成績はよくなかった。


同じ学年の学生は六四名。

ミリアは五十位に入ったことがないそうだ。

子爵令嬢のミリアが下手に上位にいてもにらまれるだけだし、

あまり目立つことはしないようにしていたらしい。


だが、勉強が嫌いというわけではないようで、

私が教えるようになってからは毎日頑張って勉強している。

この様子なら今回の試験は上位に入ることができるだろう。


クラデル侯爵家の侍女になった時点で、

他の学生からのやっかみは受けているだろうし、

それなら上位にいて実力で黙らせた方が良い。


試験は明日から学科の試験が三日続き、

その後の四日間で魔術演習の試験が行われる。

魔術演習の試験は一人ずつ受けることになるので、

どうしても時間がかかるからだ。


今回から学科の試験結果も公表されるとあって、

教室内の雰囲気も引き締まっているように感じた。

今までになく休憩中も自習している学生をよく見る。


ロドルフ様とレベッカ様もめずらしく真面目な表情で授業を受けていた。

シリウス様に警告されたこともあって、

学科でも上位を目指しているのかもしれない。


私も負けるわけにはいかないので、

試験時間いっぱい使い最後まで見直しをする。

結果が出るのは来週だが、問題なく解くことができたと思う。


初めての魔術演習の試験。

指定された個別訓練室に入ると、そこには学園長がいた。


試験監督は教師のはずなのにと思っていたら、

その理由を説明してくれる。


「驚かせてすまないね。今回の試験は特別なものだ。

 後から不正があったと疑われては困る。

 前回の試験の上位十名とナディア嬢は私が試験監督をすることにした」


「わかりました。よろしくお願いいたします」


「ああ、それでは試験を始める」


たしかに王族、侯爵令嬢二人の退学がかかっている試験だ。

後から何か言ってくる可能性もある。

ただの教師が責任を負いたくないのもあるだろう。


学園長に指示された魔術をその場で発動させる。

シリウス様の訓練の時よりもずっと簡単だったので、

少しだけ拍子抜けしたけれど最後までやり切る。


学園長の評価がどうだったのかはわからないけれど、

表情だけ見るなら悪くはなさそうだ。


学園長に試験の終わりを告げられ、礼をして部屋から出た。


廊下には試験を待つレベッカ様がいた。


「ようやく試験が始まったわね。ずっと楽しみにしていたのよ。

 あなたがシリウス様の弟子でいられるのもあと少し。

 学園から追い出せるのがうれしいわ」


「そう……私は負けると思っていないけど」


「魔術訓練を始めて一週間のあなたが勝てるわけないじゃない」


「どうかしら」


私の訓練をのぞきに来ていたのはレベッカ様の取り巻きだったのか、

一週間しか魔術訓練をしていないことを知っているらしい。


ただ、レベッカ様はその訓練内容を知らない。

知っていたら自分が勝てるなんて簡単には思えなかっただろう。


あの訓練を終えた今は、レベッカ様に負ける気はない。


「泣いて謝っても許してあげないから」


「そう。レベッカ様が負けたらどうするのかしら。

 潔く退学して去るの?」


「私が負けるわけないじゃない。

 でも、そうね。もし負けたとしたら潔く去るわ。

 あなたと違ってみっともない姿はさらしたくないから」


「安心したわ」


思わず微笑んでしまっていたのか、レベッカ様の気に障ったらしい。

レベッカ様は舌打ちをして個別訓練室に入っていった。


結果が出るのは来週。

一位にならなかったものは学園から去らなくてはいけない。


ロドルフ様は私が負けても退学しなくていいと言ってきたけれど、

レベッカ様が条件を増やしてしまった以上、それは認められないだろう。


この試験の結果が出たら、確実に何かが変わる。

祈るような気持ちで結果が出るのを待つ。




そして、結果が出る日。

ミリアと試験結果が掲示される場所へと向かう。

そこには掲示を待つ学生たちがたくさんいた。


ふと前回の掲示された日を思い出した。

あの時はロドルフ様が一位でレベッカ様が二位だった。


最下位だった私は周りの学生からも見下されて、

どうして自分には魔力がないんだろうと悔しかった。


今は違う。両手の指輪を見る。

シリウス様が私の体質に気がついてくれなかったら、

今でも魔術を使うことなく最下位のままだった。


いや、もっとひどいことになっていたかもしれない。

夜会でひどい目に遭って、婚約破棄されて、

家から追い出されたとしたら生きていけなかったはずだから。


試験結果が掲示される時間になり、

教師たちが結果を張りだそうとする。


前方にいた学生たちがざわめきだした。

結果は……


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