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その手をとって、反撃を  作者: gacchi(がっち)


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24.誕生祭

陛下の誕生祭の日、シリウス様に準備をしておくように言われ、

ミリアにドレスを着るのを手伝ってもらう。


ミリアは手慣れた様子でドレスを着させてくれると、

私の髪をハーフアップに結い上げ、化粧までしてくれる。


「どうしてこんなに手慣れているの?」


「家にいた頃は使用人のように扱われていまして、

 義母や義妹の準備を手伝わされることが多かったのです」


「そこまでひどかったなんて……」


私も離れに追いやられてはいたけれど、使用人のように働かされることはなかった。

王子妃教育で忙しかったから働かせるのが無理だったのかもしれないけど、

離れにいる間は自分の時間を持つこともできた。

ミリアはおそらくそんな時間さえなかったに違いない。


「そんな顔しないでください。

 このおかけでナディア様の専属侍女にしていただけたのだと思います」


「このおかげって」


「シリウス様とクラデル侯爵家が調べたんだと思います。

 私がどういう人間なのか。

 ナディア様に近づけるのですから当然のことです。

 使用人として働かされていたのなら侍女にちょうどいいと判断されたのでしょう。

 私にとっては幸運なことでした」


「そう……ミリアがそう思っているならいいけど」


たしかに何も調べずに雇うとは思えない。

ミリアの身の上を調べた結果、問題ないと思われた。

侍女になってから本当によく働いてくれている。




夜会に向かわなくてはいけない時間になってもシリウス様は来ない。

どうしたものかと思いながら待っていると、夜会が始まる時間になってしまった。


シリウス様が部屋に転移してきた時には開始から一時間は過ぎていた。


「用意はできているな?」


「はい。もう始まってしまっていますが、いいのですか?」


「かまわない。最初から出席する必要などない。

 さぁ、行こうか」


「はい」


ドレス姿だと抱き寄せにくいはずなのに、シリウス様と身長差があるからか、

すんなりと腕の中に閉じ込められる。

一瞬だけぐらりと揺れたと思ったら、あの時の控室にいた。


「さぁ、行こうか」


「はい」


差し出されたシリウス様の手をとってエスコートされる。

手をつながれることはあっても、こうしてエスコートされるのは初めてだ。

見上げたら、シリウス様はめずらしく機嫌が良さそうだった。


「その化粧はミリアがしたのか?」


「はい。髪もそうです。ミリアは優秀な侍女ですね」


「そうだな。夜会にいる誰もがお前に見惚れるだろう」


「……シリウス様もですか?」


「俺はいつものナディアのほうがいいが、その恰好も悪くない」


「……」


シリウス様に褒められた?それも、いつものほうがいい?

ミリアが化粧で綺麗にしてくれたから、今日の私は自分でも美しいと思えた。

以前の私とはまるで別人に見えるくらい。


これならシリウス様も少しは褒めてくれるかと期待したら、

まさかこんな風に褒められるとは思わずに顔が熱くなる。


「さぁ、行くぞ。心の準備はいいか?」


「はい!」


「心配しなくても、少し話をするだけだから」


「はい」


シリウス様が大広間の扉を開けると、騒がしかった会場が静まり返る。

誰もがシリウス様の登場に驚いているのがわかる。


人混みが綺麗に割けていくと思ったら、向こうから陛下が駆け寄って来る。

シリウス様がそちらに私を連れて向かう。


「シリウス様!私の誕生祭に来ていただけるとは!」


「ああ、少し興味があってな」


「それは光栄です。おや、こちらの美しい令嬢はどなたですか?」


シリウス様の横に私がいることに気がついた陛下は私をじっと見て言った。


「陛下にお祝い申し上げます。ナディア・クラデルです」


「ナディア……クラデル……あのナディアなのか!?」


「はい、ナディア・アンペールだったナディアです」


「どうして……そんな姿ではなかっただろう」


よほど信じられなかったのか、陛下の口が開いたままになっている。

騒ぎを聞きつけたのか、ロドルフ様とレベッカ様がこちらに来るのが見えた。


「あ、シリウス様!」


「まぁ、シリウス様!お会いできてうれしいです!」


二人がシリウス様に声をかけたのを見て、陛下が満面の笑みになる。


「そういえば、この二人を弟子にしてくださるとか」


「その二人がナディアに勝つことができたら、と約束した」


「ナディアに勝てば弟子になれるのなら、簡単でしょう。

 私も勝負してみたいくらいですよ」


私が魔力なしだと思っている陛下は愉快そうに笑う。

それにつられたのか、周りの貴族たちもみんな笑い始める。


「今の学園生がうらやましいですなぁ」

「ええ、ナディア様に勝てばいいのでしょう?私だって勝負したいわ」

「うちの息子が二年にいるんだが、学年が違ってもかまわないのだろうか」

「それが許されるのなら、学生でなくてもいいだろう」


さまざまな声が聞こえてくる。

みな、私なら簡単に勝てるから、シリウス様の弟子になりたいという声だ。


その騒ぎを止めるようにシリウス様が口を開く。


「そういえば、その条件が増えたと聞いたのだが、本当か?

 負けた者は学園を去ると」


「俺たちが言い出したわけではありませんが、考えてみれば当然ですよね。

 勝ったものに褒美があるのなら、負けたものには罰があるべきです」


「そうです。それに負けた後に学園に通うのは恥でしょう。

 だから、学園を辞めたほうがナディア様のためにもなると思います」


ロドルフ様とレベッカ様が言い出したわけではないというけれど、

ミリアの話では二人がそう言っていたと聞いている。

もう勝てると確信している二人はシリウス様の弟子になったつもりなのか、

笑顔でなれなれしく話し続ける。


「本当に負けたほうが学園を去っていいのだな?」




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