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その手をとって、反撃を  作者: gacchi(がっち)


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20/55

20.大事にされるのは

「シリウス様、ナディアではなく私を弟子にしてください!」


「お前を弟子に?……興味がないな」


「っ!どうしてですか!」


「普通の魔力量に、普通の魔力の質。魔術理論の成績も普通。

 わざわざ俺が弟子にする意味が何もない」


何を思ったのか急に弟子入りを希望したレベッカ様に、

冷たく断ったシリウス様は興味が持てない理由まで説明し始めた。

おそらくそこまで言わなければあきらめないと思ったのだろう。


「私は魔術演習で二位です!一位だったこともあります!」


「それは学園の同じ学年の中での成績だろう?

 その学年は全体的にレベルが低い。

 どうせ王子に遠慮してレベルを下げているんだろうが、

 そんな中での成績には何の意味もない」


「そんなわけはっ」


「これまでの成績は学園長より聞いている。

 突出した才能がある学生は一人もいなかった。

 ナディアはまだ訓練を始めたばかりではあるが、

 少なくともお前よりも魔術師としての才能は上だ」


「……は?」


ずっとレベッカ様は二位だった。ロドルフ様が一位で。

魔術演習の試験が受けられない私から見たら素晴らしい才能だと思っていた。


だけど学園に通うこともなかったシリウス様から見れば、

学園の魔術演習のレベルは低いらしい。

今の魔術師の塔の管理人も学園に通うことはなかったそうだ。

十五歳で学園に入学せずに叔父であるシリウス様の弟子になったと。


そう思うと、学園とクラデル侯爵家のレベルにはかなりの差がある。

二位をとったくらいでは意味がないと思うほどに。


だけど、自信があった魔術演習の成績まで否定されたレベッカ様は、

怒りで顔を真っ赤にして震えている。


どうしよう。これ以上騒ぎになったら人が来てしまう。

どう収めたらいいのか困っていたら、

シリウス様がレベッカ様の後ろについていた護衛騎士に命じる。


「こいつを連れていけ。どうせ王子のところに行くところだったんだろう」


「「「……はっ!」」」


シリウス様の指示に戸惑っていた護衛騎士たちだったが、

レベッカ様を取り囲むようにして私たちから遠ざける。


「何よ!離れなさい!」


「レベッカ様、落ち着いてください。

 ロドルフ様の部屋へ行きましょう」


「嫌よ!シリウス様!まだ話は終わっていません!シリウス様!!」


レベッカ様が大声をあげているのもおかまいなしに、

奥へ奥へと護衛騎士たちに連れて行かれる。

見えなくなるほど遠ざかってから、シリウス様は私を離した。


「あ、ありがとうございます」


「本当にお前は放っておくとすぐにからまれるな」


「申し訳ありません……」


「いや、ナディアが悪いわけじゃない。

 すぐに帰ろう」


「はい」


帰りは転移で帰るつもりなのか、また抱き寄せられる。

ミリアはどうするのかと思えば、シリウス様の腕に手をのせる。

……ん?それだけで転移できるの?


それを聞く間もなく、一瞬で私の寮の部屋へとついた。

ミリアはすぐに私たちから離れて控える。


「休みの日なのに申し訳ありませんでした」


「いや、いい。問題はない。今日はゆっくり休め。いいな?」


「はい。ありがとうございます」


「ああ」


それだけ言うとシリウス様は転移して消える。

お茶を出す間もなかった。


そんなに長い間外出していたわけではないのに、ものすごく疲れた気がする。

ソファに座って休もうとしたら、部屋の隅に荷物が積まれている。


「ミリア、その荷物は何かしら?」


「ああ、私の引っ越しの荷物と、クラデル侯爵からナディア様への贈り物だと思います」


「え?引っ越し?」


「はい。専属侍女ですので、こちらの侍女控室を使わせていただきます」


「あ、そうね。そうよね」


ミリアは専属侍女になったのだし、子爵家とは縁を切っている。

この後、学園には私の侍女として通うと言っていた。

寮の部屋も引っ越して、使用人部屋を使うことになるらしい。


「あとは、クラデル侯爵からの贈り物って何?」


「私も直接聞いたわけではないのですが、

 ナディア様がドレスをお持ちでないと知ったクラデル侯爵が、

 いろいろと用意されたようなのですが……」


「この荷物ってドレスなの?」


「はい。昨日のうちに届けることもできたそうですけど、

 シリウス様が王宮でのお茶会にはドレスではないほうがいいとおっしゃって。

 そのため、今日のお届けになったもようです」


「ああ、そうね。ドレスで行かなくて良かったと思うわ。

 着飾ってロドルフ様に会いにいったなんて噂になったら困るもの。

 レベッカ様がよけいに誤解していたと思うわ」


「それはそうですね」


贈り物の箱を開けて確認してみると、ドレスだけではなく、

可愛らしいワンピースや靴や鞄、装飾品まで入っていた。

同封された手紙には娘への贈り物だから遠慮なく受け取ってほしいと書かれていた。

養父から娘への贈り物だったらしい。


「こんなにたくさん……」


「クローゼットにしまっておきますね」


「ありがとう。お礼の手紙を書かなくちゃ」


まだ会ったこともない養父だけど、

私のことを受け入れてくれているのがありがたい。

突然養女になったのだから嫌がられても仕方ないと思うのに。


ふわふわするような気持ちでなんとなく落ち着かない。

シリウス様と出会った夜会から、何もかもが変わった気がする。




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