世界の中で、一人じゃない
今日は、この学校の正式な生徒になった。
環境に馴染めなかったせいで破産寸前になったけど、まあ、それはそれ。
そんな俺の今日のミッションは――そう、友達を作ること!
……できるかな。一応、自分で作った「友達の作り方マニュアル」まであるんだけど。
ターゲットその一:白月ミオ。
特別目立つわけじゃないけど、どこか上品な雰囲気を持ってる子。
さっそく、迷わず話しかけてみた。
> 「やあ、お嬢さん。友達になってくれませんか?」
完璧な笑顔、ナチュラルな声色、自分でも惚れそうなキメ方だった…が。
彼女の反応は――ドン引き。
「うわ…」って顔して無言で去って行った。
うん、マニュアル第1章:即終了。
ターゲットその二:三原ヒルカ。
成績も運動も性格も、全部ハイスペックな完璧超人。
> 「やあ、お嬢さ――」
話しかけた瞬間、彼女はくるっと向きを変えて、別の男子を追い始めた。
……なんで?
なぜだ。
俺は何を間違った?
過去の経験も総動員して色んなパターンを試したのに、全部失敗。
軽く放心状態で空を見上げる。答えはどこにもない。
ただ一つ言えるのは、完全なる敗北ってことだけ。
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家に帰ってからも、そのことばかり考えてた。
ネットで「友達 できない 原因」とか検索しても、出てくるのは当たり障りのないアドバイスばかり。
……もうダメだ。
頭がパンクしそうだったから、近くのコンビニへ気分転換に行くことにした。
目指すは炭酸系の缶ジュースと安いカップラーメン。
そして――そこにいたのは、まさかの白月ミオ。
そう、さっき俺をドン引きで拒否ったあの子だ。
しかも今度は、レジの店員。
目が合った瞬間、またあの「うわ…」って顔されたけど、もう気にしない。
会計を済ませて、お湯を注ぎに移動。カップ麺が出来上がるのを待つ間、軽く世間話を振ってみた。
……やっぱり、反応は薄い。
なんかもう、笑えてきた。
だから、素直に話してみることにした。
> 「ごめんね、今日のお昼。別に怖がらせたかったわけじゃないんだ。ただ……友達が欲しくて。でも、実は人見知りでさ。」
ちょっとだけ笑って、麺にスープを混ぜる。
すると、彼女がぽつりとつぶやいた。
> 「はぁ……友達作りたいなら、ああいうやり方じゃダメだよ。この世界、そんなに甘くないんだから。」
その言葉に、昔の記憶がフラッシュバックする。
俺にも、仲間だと思ってた奴らがいた。
でも、もう少しでランキング1位に届きそうだったあの日――
奴らは俺を裏切り、罠にかけて、捨てた。
> 「……俺も昔、友達だと思ってた人たちがいた。でも、結果的に裏切られて、捨てられた。しかも、鉄の罠の上にね。」
ちょっと体、穴空いたけどな。言わなかったけど。
ミオは驚いた顔をしたあと、少し優しい声で言った。
> 「それって……すごく、辛かったね。でもね、それでも君が友達を求めてるのは……ちゃんと前を向いてる証拠だと思うよ。」
その言葉が、なんだか胸に響いた。
……でも正直、辛さより憎しみの方が強かった。
信じてた分、許せなかった。
ミオは少し黙り込んだ後、小さく笑って言った。
> 「じゃあさ。友達の作り方、知らないし、人見知りで不器用な君に……私が、友達になってあげる。」
――は?
え、マジで?
冗談かと思ったけど、彼女は本気の顔だった。
俺は、しばらく呆然としたまま、それでも小さく頷いた。
こうして――
俺は、初めてこの世界で"友達"と呼べる人に出会った。