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最後のギャンブル

作者: 小雨川蛙

 

 昔。

 私は数人の友人と共に登山へ行った。

 私を含め、皆がどうしようもない学生だった。

 所謂、ギャンブル依存症というやつで仕送りや奨学金に手を付けるのは勿論、中には借金をする奴さえ居た。

 だからだろう。

 私達が「もう、こんな生活やめようや。山にでも登って生まれ変わろう」なんて形ばかりの考えを口にしたのは。

 若さと行動力だけはあった私達はそのままの勢いでろくに下調べもせずに登山に挑みそして遭難した。

 互いが互いを罵倒し合うのにも疲れ果て、死んだ目のまま皆で身を縮めて集まりながら、すすり泣いていたとき、誰かが言った。

「これが最後だ。誰が生き残るか賭けねえか?」

 不謹慎極まりない。

 しかし、だからこそ愉快だった。

 最後まで生き残った者は死んだ者たちが持っていたものを全て受け取る。

 手段や方法などはともかくそんなルールのもと、皆が各々自分が生き残ることを賭けた。

 本当に馬鹿みたいなことをしていたものだ。


 現在。

 すっかりシワが増え、声もしゃがれ、中には車椅子に乗っている者も居る中、私達は一年に一度は必ず会うようにしている。

「今年も脱落者はなしか」

「金にガメついな、お前ら」

「てめえが言うなよ」

「はよ死ね、死に損ないども」

 すっかりと年老いた私達は、あの頃のように互いに憎まれ口を叩き合う。

 これで最後と決めたギャンブル。

 しかし、その結果は未だに出ていない。


「乾杯」


 そう言って素晴らしい友達と私は今年もまた酒を飲んだ。

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