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【完結】幼な妻は年上夫を落としたい ~妹のように溺愛されても足りないの~  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!
本編

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2.ハッピーエンドの物語(完結)

 歴史の長い国にはわからない苦労がある。外交をすれば侮られ、戦に強いために距離を置かれる。まだ若い国は、周辺国に比べ街道の整備も遅れていた。


 開拓中の農地だけで国民を食わせることはできない。外から物が入らなければ、飢えて滅びるしかなかった。状況を打破する方法として、隣国アルドワンに相談を持ちかける。貴国の貴族令嬢を紹介してほしい。すでに王妃のある身だが、幸いにして弟は独身だった。


 国を守る戦に明け暮れ婚期を逃した弟だが、顔立ちは整っているし体も鍛えていた。やや歳の離れた夫婦になるだろうが、政略結婚にはよくある条件だ。持ちかけた話に、思わぬ提案が返ってきた。


 古きルドワイヤン帝国の直系であり、どの国より歴史深い王族。その王女が嫁いでくれるという。代わりに、自国の国境を脅かすロラン帝国から守ってほしい、と。破格の条件すぎて、何度も確認した。


 この時点で、私は勘違いしていた。妙齢の王女という先入観で、カトリーヌ第一王女だと思い込んでいたのだ。まだ十二歳の末姫と知っていたら、同年代の貴族令息を探しただろう。公爵家にちょうど釣り合う年齢の令息がいた。


 向かった弟が連れ帰ったのは、アンジェル姫。途中で連絡を受けて、頭を抱えて唸った。王妃にも散々叱られた。彼女自身は恋愛結婚だが、姉が政略結婚している。苦労した姿を知るから、まだ幼いと表現できる姫に重荷を背負わせるのでは? と心配した。


 さすがに十五歳の差はひどい。断らずに受けた王女の覚悟に感嘆するも、政略結婚にも限度があった。ほぼ親子ではないか。いくら弟の性格や地位に瑕疵がなくとも、残酷だろう。


 フェルナンには誰か探すとして、先にアンジェル王女の相手を探そうとした矢先、とんでもない手紙が届いた。一目惚れしたので、この婚約に感謝している。赤裸々に想いを綴った弟の手紙に固まった。


「……まずい」


 フェルナンは国一番の騎士であり、国内の兵士から圧倒的な支持を受けている。上手に説得して諦めさせなければ、国を二つに割る最悪の事態を招きかねない。焦る私と逆に、王妃は徐々に冷静さを取り戻した。


「一度会ってみましょう。判断はその後で間に合うわ」


「あ、ああ。そうだな」


 まだ十二歳なのだ。婚約は解消できるし、ひとまずフェルナンに預けよう。王城へ顔を出すよう手紙を出し、深呼吸した。








 なんだかんだ理由をつけて先延ばしにしたフェルナンが、ようやく動いた。婚約者を連れて、馬車で来る。あのフェルナンが、おとなしく馬車で? 騎乗してとんぼ返りが通常仕様なので、かなり驚いた。


 二人に会ってさらに驚く。まさか、両思いなのか?! 王妃とひそひそ話し合い、余計な口出しはやめようと決めた。アルドワン王国側はどう思っているか。手紙を出して探れば、一目惚れの文字がついて返ってきた。


 二人とも一目惚れ、奇跡のような出会いだ。王妃は両手を組んでうっとりと「素敵」と呟く。この奇跡が幸せな結末に繋がるように。頑張り屋で恋愛に不器用な弟の恋が実り、アンジェル王女と仲のいい夫婦になれるよう。


 祈る私の思いを汲んだのか、両国の結びつきは強くなり……二人の愛も成就した。膝に乗せた甥マリユスの頭を撫でながら、目の前の幸せな光景に目を細める。あの日の選択は、間違っていなかった。


 一目惚れの政略結婚は、物語になりそうだ。同じ思いを抱いた王妃が、こっそり物語を書かせた本を手に取るのは、数ヶ月後――フェルナンにバレないよう隠したのに、本を送るよう手紙を貰って唸る。幸せな葛藤ののち、再びの催促に負けてハッピーエンドの物語を送った。






 終わり












*********************

 完結です。最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。また新しい物語でお会いできますように。

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― 新着の感想 ―
ずっと可愛くて幸せになれました! これからも2人と家族が幸せでいられることを祈ります。
[良い点] 完結お疲れ様です(`・ω・´)ゞほのぼのな恋物語で癒されました(*≧ω≦) 小人侍女は、今日も猫作者さんのブラッシングしながらチビッ子達を見守ります。
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