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【完結】幼な妻は年上夫を落としたい ~妹のように溺愛されても足りないの~  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!
本編

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76.行きはよいよい帰りは

 薬草用の籠は侍従達が馬車へ運んでくれる。その間に騎士同行でベリー摘みをする。クロエもコレットも、摘むのが早い。手が汚れないよう気をつけて選ぶのはセリア。デジレはジャムにするからと枝ごと回収した。


 でもセリアに注意され、枝を折るのは中止になる。そうよね、来年も摘みたいもの。木が弱るのはダメよ。私はケーキだけじゃなく、パンも焼いてみたい。作ったジャムをつけて食べるのも好きだけど、混ぜて焼いたら美味しいんじゃないかしら。


 そんな話をしながら、大量のベリーを籠に入れた。見守る騎士達も手伝ってくれたので、予定より早く終わったわ。日暮れ前に森を出ましょうと促され、籠を抱えて歩き出す。戻った侍従が持つと言ったのだけれど、エル様の誕生日プレゼントにするから私が持ちたいの。そう伝えた。


 籠はそんなに大きくないので、重さも大したことがない。騎士も手伝いたそうにしていたが、我慢してくれた。転んでぶちまけることもない。馬車まで辿り着いたところで、騎士が眉を寄せた。耳を澄ますような仕草の後、小声で馬車に乗るよう指示が出る。


「姫様、急いで」


 クロエが背中を押し、大急ぎで馬車に乗り込んだ。侍女も乗ったのを確認し、騎士の一人が剣の鞘を使って鍵の代わりに差す。これでは開かないから出られない。でも、逆なのね。侵入させないためだと思う。


 パニックになって外へ飛び出したら危険だし、守ることに長けた彼らの判断を信じよう。専属騎士になったナタリーも、柄に手を当てて警戒していた。馬車の中から見る限り、特に敵らしき人は見えないけれど。


 騎士達が異変を察したなら、何かあるのだろう。ナタリーが窓から声をかけた。


「カーテンを引いて、窓枠より身を低くしてください」


「はい」


 返事をしたクロエがカーテンを閉ざし、セリアとデジレは床にショールを敷いた。私を真ん中に置いて、囲むように彼女らは座る。動き出した馬車はゆっくりだった。


 疑問を持つけれど、すぐに自分の中で答えを見つけて落ち着く。敵を刺激しないため、こちらが気付いたと判断されないように、自然に振る舞うのよね。学んだ安全対策の説明を思い出し、深呼吸する。喉がやたらと乾いた。


 ごくりと喉を鳴らすが、水は馬車の外。取りに行くわけにいかず、馬車を止めるほどでもない。我慢することにした。ごとごと揺れる馬車の脇を、馬の蹄の音が付いてくる。騎士達は愛馬に跨ったのだろうか。それとも引いて歩かせている?


 外の状況が見えないので、想像ばかり膨らむ。敵は人を想定しているのよね、たぶん。私達に伏せるようにって、矢を警戒した気がする。でも、獣でも窓から入ろうとするから、離れての意味かも。


「急げ!」


 騎士の叫ぶ声が聞こえ、馬車が大きく揺れた。馬が全力で走っているようで、ギシギシと音がする。頭を抱える私の上に、誰かが布をかけた。車内にあった布はショールか膝掛けだろう。直後、放り出されたような浮遊感を覚え、私は馬車の壁面へ叩きつけられた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 小人侍女も馬車の中をバウンドして、窓枠ぶち抜いて外に飛び出しました。 作者猫さんに手を振る小人侍女は、右手にサ◯ミソードを構えたきゅ!! 闘えるし、腹減れば喰える!!万能サ◯ミソードきゃ!…
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