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【完結】幼な妻は年上夫を落としたい ~妹のように溺愛されても足りないの~  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!
本編

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75.森へプレゼントを摘みに

 砦には薬草園がある。お茶にしたり、料理に使ったりもするけれど、一番の目的は傷薬などを作るためだ。薬草は小さな花が咲く種類が多く、大輪の花はあまり見かけなかった。でも薬草園の風景は素敵だ。


 膝丈くらいの薬草が並び、風が通り抜けるたびに香りが運ばれてくる。すっとした香りや甘いもの、不思議とお腹が空く香りまで。砦の外で見つけた薬草やハーブを植えていると聞くけれど、やっぱり根付かない植物もあるみたい。


 薬師の薬草採取に同行する許可を貰おうと、私は意気込んでエル様にお願いした。侍女達と籠を持って摘みに行く。実は他にも目的があった。


 先日エル様と乗馬で抜けた森には、ベリーの木がある。もうすぐエル様のお誕生日なので、ケーキを焼くつもりだった。その飾りにベリーが欲しい。日付指定で、お願いした。なんとなく察したのかしら、騎士や侍女同行ならと許可が降りる。


 その日はエル様が視察で隣町に出向く予定だった。一緒に行けないから、騎士を多めに付けると言われ頷く。ここで「いらないわ」と返したら、外出許可が取り消しになるもの。


 この5年ほどでエル様の性格は、かなり把握したと思うのよ。逆も同じだといいけれど。お礼のキスを頬にして、部屋を出た。ケーキを焼くときは、クロエ達も手伝ってくれる。楽しみだわ。


 浮かれながら、他にも誕生日プレゼントを作った。綺麗な組み紐の編み方を教わったの。街では工芸品としても人気があるけれど、自分で色を選んで何度も直しながら組み上げる。初めてにしては綺麗に仕上がった。


 渡す日を楽しみに、引き出しへしまう。セリアが街へケースを買いに行ってくれたから、その箱に入れて包装するつもり。リボンの色は私の瞳に合わせて、赤紫に決めた。でも、本当は銀糸で刺繍も入れたかったの。間に合わないから諦めた。


 明日はベリーを摘みに行く予定よ。一応、名目は薬草摘みなので、手伝うけれど。わくわくしながら朝を迎え、視察に出るエル様を見送る。夕食は一緒に食べたいと言われ、待っていると約束した。


 街ではなく森へ向かうので、裾がシンプルなワンピースに着替える。街の働く女性や騎士のようなズボンを望んだら、ダメですと否定されちゃった。でも虫に食われないよう、内側に薄いタイツを履く。これなら転んでも下着が見えないわね。


 途中まで馬車で進み、馬と馬車を置いて徒歩に切り替えた。馬車の見張りに二人残る。侍従は籠やバスケットを持っていた。私は自分で持つつもりだったのに、エル様が命じて出かけたんですって。彼らが叱られるから、取り返すのはやめておくわ。


 森の奥まで入らなくても、薬草の群生地はある。今日はそこで摘むため、さほど歩かなかった。踵が高くないブーツを履いて、足を虫や草から守る。日陰の湿った地面でないと育たない薬草を選んで摘み取る。この草は近くにある苔が生えている場所しか、育たないの。


 覚えた薬草を丁寧に確認しながら半分ほど高さを残して折った。下に葉が残っていれば、また生えてくる。薬草で使うのは先端部分と葉だから、これで足りるのよ。夢中になって籠いっぱいに摘んだ。指先から薬草の匂いがする。


 ここでお昼を食べて、午後からベリー摘みを頑張らなくちゃ。

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