41.お友達候補の皆様とお茶会
私の知らない間に、被害者としての立場が確立した。すごく同情的な目で見られたわ。王宮にいるのに、お散歩に騎士がぞろぞろ付いてくるし、お茶会も王妃殿下厳選で行われた。
絡まれたのは昨日の朝なのに、もう噂は広まったみたい。エル様が選んでくれたピンクのワンピースを着て、エスコートされ登場する。集まったのは年上のお姉様達ばかりで、上品そうな集まりだった。
王妃殿下が招待したご令嬢やご夫人は、ドレスコードもばっちりだ。先日のように、はしたない姿の方は参加していない。エル様の手を取って会釈する私に、皆様は微笑んで好意的に受け入れてくれた。
「終わったら迎えに来る。それまで待っていてくれ」
「はい、エル様」
頷いて笑顔を向けた。心配そうに何度も振り返りながら、エル様は国王陛下の待つ執務室へ向かう。そんなに心配しなくても、騎士も同行しているのに。でも心配されるのは嬉しいわ。少なくとも、私を大切に思っている証拠だから。
「まぁ! 本当に大切にされていますのね」
「政略ではなく恋愛かしら」
ふふっと笑う皆様と挨拶をした。オラール侯爵夫人、ギャロワ侯爵令嬢、ラシーヌ伯爵令嬢、カロン子爵夫人。王妃殿下と仲のいい四人は、腰掛けた私に名乗った。私もアルドワン王女として振る舞う。エル様の婚約者だけれど、まだモンターニュの貴族ではないから。
「礼儀作法も完璧で、さすがアルドワン王族ですわね」
褒められるたびに微笑んで返す。お礼を言うのは違うし、適切な言葉が見つからないときは微笑む。お母様の教えが役に立っているわ。
「フェルナン王弟殿下を愛称でお呼びですの?」
「はい。私のこともアンと呼んでくださいます」
カロン子爵夫人へ答える。素敵と声が聞こえた。今の声はラシーヌ伯爵夫人かしら。
「歳の差があるから心配したけれど、アンジェル姫はしっかりしておられるし安心だわ」
王妃殿下の言葉に、ギャロワ侯爵令嬢が大きく頷いた。
「私の婚約者も歳が一回り離れてますの。とても幸せなご縁だと思っていますわ」
同じような境遇と聞いて、親近感を抱く。聞けば、モンターニュでは歳の差での結婚は珍しくないとのこと。国王陛下と王妃殿下も七つ違いで、他の方も似たような年齢差があった。
アルドワンでは近い年齢の結婚が多いから、違いに驚く。それから歳の差婚のよい面を教えていただいた。
夫が歳上なら甘やかされ、大切に扱ってもらえる。浮気の心配も少なく、我が侭も笑って許す夫が多いと。娘ほどの年齢差がある場合は、さらに溺愛が増すと聞いて照れてしまった。でも妹じゃ嫌なの。
王妃殿下は、一人でこの国に嫁ぐ私の友人候補や相談できる方を選んでくれたのね。嬉しくて笑顔が絶えないお茶会となった。
用意されたお菓子は彩り鮮やかな砂糖菓子、焼き菓子は少ない。少しするとケーキが運ばれてきた。オレンジ色のケーキは野菜を使っていると知り、取り分けてもらい口をつける。美味しくて食べ切った後で、王妃殿下の手作りだと聞いた。
「凄いです。私も努力しなくては」
ぐっと拳を握ったら、後ろでクロエが微妙な顔をしていた。大丈夫、作ったことがないだけよ。きっと上手に作れると思うわ。




