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【完結】幼な妻は年上夫を落としたい ~妹のように溺愛されても足りないの~  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!
本編

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40.我が妻は一人だけ***SIDEフェルナン

 陛下が会いたいと願うから、臣下として従った。もちろん、兄に応えたい弟の立場もあるが。王宮は王族が最上位とされる場だ。それが他国の王族であるなら尚更、貴ぶべき存在だった。


 そのアンに向けて、暴言を吐く女がいる。報告が入った瞬間、目の前が真っ赤になるほど怒りを感じた。息を切らした侍女セリアは、すぐにとって返す。同行しながら、騎士と衛兵を手配した。


 こんなことなら、もっと部屋を近づけるべきだった。兄と酒を飲まなければよかったのか。以前の自室がそのまま残されており、兄の部屋から近いこともあって、その部屋で休んだ。客間にいる来賓のアンジェル姫を、自国の貴族が罵るなど……想像もせず。


 朝の散歩に出たのだと聞いた。朝露が消える前に花を愛でたいと、まだ幼い少女の願いを侍女達は叶える。微笑ましい光景に割り込んだのが、娼婦のような外見の女だ。


 見覚えはあった。何度も言い寄られたが、相手にしなかった。マルノー侯爵家の一人娘で、我が侭なことで有名だ。モンターニュの公爵家は三つあるが、どの家も未婚の適齢期の令嬢がいない。陛下にも王女がいなかった。


 国内の貴族令嬢の中で頂点に立った。そう勘違いしたのだろう。娘可愛さに侯爵が甘やかしたのも悪い。途中でセリアを追い抜き、中庭へ駆け込んだ。その先で見たのは……。


 まだ十二歳の可憐な王女に詰め寄る、赤いドレスの下品な女だった。声を荒らげ、上から目線で言葉を発する。それも嘘ばかりの虚言だ。いつ私がお前を妻にすると言ったのか!


 怒りが激し過ぎると息が詰まる。心臓が早鐘を打って目眩がした。あの妄言を、アンが信じてしまったら? そう考えるだけで、全身が凍えそうなほど怖かった。


 初対面で謁見した彼女は、親の庇護を受ける年齢だ。政略結婚で、親子ほどに歳の差があると聞いていた。彼女に対して気の毒にと同情する気持ちはあるが、国同士の結びつきに王族の結婚は最適だった。


 アンの姉が国内の貴族と婚約していたなら、解消して私の相手に選ばれただろう。だが他国の王族と縁を繋ぐのは、姉カトリーヌも同じだ。頬を赤く染めて、目一杯大人びた口調で挨拶をくれた。王族らしい振る舞いは見事だ。


 この時に心を決めた。私は彼女を愛して生きていこうと。そのアンに対し、嘘を並べ立てて脅すなど。それも胸元が開いたはしたない姿で、肩を出した夜のドレスで、己の未熟さを自覚することなく。


 この場で殺せと命じたい感情を抑え、王族らしく振る舞おうとした。だが無理だ。私の宝となったアンを傷付けるなら、侯爵家の一つくらい、潰しても構わない。私の身勝手な根回しを咎めない兄も義姉も、同じ気持ちのようだ。


 マルノー侯爵が動く前に、取り返しの付かない状況を作り出す。こんな私を知れば、純粋なアンは幻滅するだろうか。それだけが気がかりだった。

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