表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】幼な妻は年上夫を落としたい ~妹のように溺愛されても足りないの~  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/97

37.エル様は渡さない

 ふわりと抱き上げられ、いつも通り右腕に腰掛ける形になる。首に手を回し、エル様に抱きついた。後ろに立つクロエと視線を交わし「さっきのは内緒ね」と合図する。


 笑顔を浮かべるわけにいかず、クロエは首を縦に振った。小さな動きで、気づかれないように。こういうところ、本当に助かるわ。衛兵に付き添われ、セリアも駆け戻ってくる。


 喚きながら連れて行かれる女性は、あまりに暴れるため騎士が困惑していた。貴族女性の胸元や腰を避けて捕えようと苦戦する彼らに、エル様は淡々と命じた。


「爵位は剥奪する。その女は平民だ、気遣いは無用」


 驚いた私同様、彼女も目を見開く。真っ赤な紅の引かれた唇が震え、一気に喚き立てた。


「なぜです?! 私はフェルナン殿下の婚約者となり、妻になってお側にいるべきです。他に相応しい女性はいないわ! 不当な政略結婚なんて、おやめに……っ」


 エル様の右手が何かを合図した。頷いた騎士が、彼女の口にハンカチをねじ込む。それでも何か喚いているようで、声が漏れていた。


「反省がみられないな。マルノー侯爵家は、よほど滅びたいらしい」


 ゾッとするほど恐ろしい、低い声だった。エル様の声なのに、まったく別人のよう。困惑して眉尻を下げた私の頬を、そっと撫でる手は優しいのに。


「国王陛下の予定を確認してくれ。すぐに会いたいと」


 敬礼して踵を返す騎士を見送り、私は抱っこされたまま客間へ戻った。待っていたデジレは、事情を聞いたのか。お茶を用意する。


 ソファに下され、手足も確認された。


「ケガはありません。言葉だけです」


「ならば、見えない場所に傷を負わせてしまった。すまない」


「い、いいえ」


 私もやり返してやれと思って、ちょっと最後は意地悪な言い方をしたし。やられっぱなしではない。でも言ったら嫌われるかも。


「よく頑張った、私の名誉を守ってくれてありがとう」


 笑顔を浮かべたエル様が思わぬ発言をして、私はぽろりと涙をこぼした。だってエル様を信じているし、大好きだから。奪われたくなくて、必死に争った。お父様やお母様の姿を思い出し、お姉様の振る舞いを真似て……お兄様の毅然とした口調で。


 全力で抵抗した。


 認めてもらえたなら、私は戦って勝利したと胸を張れる。頬が緩んで、顔が赤くなるのがわかった。


「泣かないでくれ、私は君の涙に勝てない」


 鼻を啜って我慢し、じんとした目の奥の熱を逃す。何度も瞬いて、笑顔を浮かべた。大好きよ、エル様。あなたを渡さないためなら、同じ目に遭っても全力で立ち向かうわ。


「大好きです、エル様」


「光栄だ、私の姫君」


 用意されたお茶を飲んで落ち着いたところで、国王陛下が飛び込んできた。ノックもなく扉が開いて、国王陛下が立っている。何が起きているの?


 きょとんとした私に、陛下はいきなり頭を下げた。いえ、隣のエル様に対してかも?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ