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【完結】幼な妻は年上夫を落としたい ~妹のように溺愛されても足りないの~  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!
本編

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32.釘を刺す、恐ろしい表現ですね

 なぜか陛下は私にも謝ってくれた。その理由が、籠絡は悪い意味なんですって。悪女に使う言葉だと言い直されて、首を傾げた。


「この場合は、魅了が正しいと思うのよ」


 王妃殿下は申し訳なさそうに訂正し、エル様は機嫌が悪そう。私は気にしていないと伝え、王妃殿下がその後を取り仕切った。今夜の晩餐は私とエル様がお客様で、国王夫妻がもてなす。貴族は同席しないので、気楽にして構わないの。


 もちろん、言葉を真に受けたりしないわ。軽装で恥をかくのはエル様や私の家族だし、マナー違反で叱られるのは侍女だったりするから。


 こう言った場面での「気楽にね」を間に受けたら、恥をかいちゃうわ。これでも王女だから、そのくらいの知識と常識はあるつもりよ。


 挨拶はこれで終わりとばかり、エル様はさっさと帰ってしまう。失礼じゃないのかと不安な私を抱いたまま、廊下に出て前髪をぐしゃりと乱した。


「はぁ、疲れた。すまなかったな、アン。良くも悪くも陛下は人を試す癖がある」


 良くも悪くも……ではなく、悪い癖だと思う。表立って批判できない王弟の立場も理解する私は、曖昧に頷いた。私を下さなかったのは、靴のせいじゃないかも。警戒していたのかな。


 他国の王女が嫁いでくる。弟と政略結婚になるから、心配で牽制したのかも。全然必要ないけれどね。きっと陛下は弟のエル様が大好きなのよ。今日の態度を見る限り伝わっていないし、逆に嫌われそうな言動だけど。不器用な人のかも。


「その琥珀、着けてくれたのか」


 エル様は胸元や肩まで覆う飾りに目を細め、嬉しそうに笑う。瞳の色に似た琥珀を指で触れ、よく似合うと褒めた。それが嬉しくて、私はぎゅっと抱きつく。


「晩餐まで時間がない。私は陛下に釘を刺してくるから、その間にアンは着替えておいで」


 釘を刺す……恐ろしい表現ですね。叱ってくる、くらいの意味なら良いのですが。まあ、陛下相手に酷いことはしないよね。頷いて見送った。


 用意された客間で大急ぎで着替えた。他国の王族は着替えが多いと聞く。私は汚れた時くらいしか着替えなかったけれど、食事のたびに着替える国もあるとか。


 言われるまま手を上げたり下ろしたり、布をくぐったり、忙しく動き回る。クロエやセリア、デジレは魔法のように私を変身させた。アクセサリーや髪はそのまま、服だけ交換になる。


 エル様が深緑を着用するので、揃えて私も緑のドレスにした。首元まで布で包んで金鎖で上から覆い、スカートは柔らかく風をはらむ薄いレース生地だ。足元が透けるよう調整してあり、靴は目立つよう金のつま先カバーがついた黒い靴にした。


 準備が出来たと合図が送られ、すぐにエル様が入室する。綺麗だと褒められ、嬉しくなった。エル様も素敵ですと返し、手を差し伸べる。今度は歩くんだから、そう示した私にエル様が固まる。


 ぎこちなく侍女達に助けを求め、全員に首を横に振られた。みんな私の味方なのよ、諦めてエスコートしてちょうだい。未来の旦那様!

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