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リリース!  作者: あかつきp dash
第一章 「野望の男、イカエビル現る!」
4/25

1-3 

 ギネヴィア学園の校内に荘厳な鐘の音が三回響く。

 これは入学式を終えて、各々の教室に戻っていた学生たちに、ホームルームの開始を告げるチャイムの音であった。


 そうなると先ほどまで弛緩していた教室の空気は一新され、教室にはある種の緊張感が漂いはじめる。

 そんな空気を感じながら、廊下を一人で歩いている少年が一人。


 この少年は宇尾海六(うおみりく)。栗色の髪を短くまとめ、体格などは至って平均的。一見、なんの特徴もない普通の少年なのだが、それはあくまで後ろから見たときの姿である。


 彼と初対面の人間は、そのほとんどが彼と視線をかわそうとしない。したとしてもすぐに目をそらしてしまう。なぜ、そんな現象が起きるのかというと、すべては彼の目つき原因があった。


 いまにも睨め殺してやろうかといわんばかりに、鋭い目つきであたりに睨み散らしている――とまわりからは思われがちだが、本人からすれば、それは不本意このうえない誤解である。


 生まれてこのかた、まわりの人間に睨みを利かしながら道を歩いたことなどないし、誰彼構わずにケンカを売ろうと思ったこともない。本人は、至って善良な一市民のつもりなのだ。


 六の鋭い目つきは親譲りで、本人にとっても悩みの種であった。その対策として数年前からメガネをかけはじめたわけだが、特に視力が悪いわけではなかったので、普通のメガネをかけるわけにはいかない。つまり、彼がかけているのは伊達である。ちなみにメガネをかけることで、まわりにあたえる印象がやわらかくなったのかどうかについては、よくわかっていない。


 六がふと足をとめて、うえを見あげる。そこには『1年B組』と書かれたプレートがさげられていた。

「ここか……」

 もらったメモと見くらべながら、独りごちる。


 ノックをしようとするのを躊躇(ちゅうちょ)して、代わりに耳を澄ましてみる。たしかに教室内からは話し声が聞こえて、結構な人の気配を感じる。が、六の知りたいのはそんなことではなかった。


 しかし、いまはあれこれ考えてもしょうがないこと。六は思いきってドアにノックをした。

「どうぞ、お入りください」


 教室のなかから聞こえたのは女性の声である。その返事があまりに普通であったことに、六は思わず拍子抜けした。


「失礼します」

 それでもなかに入るとなると、さすがに緊張する。実際、教室に足を踏みいれるときに体は震えていた。


「ようこそ、一年B組へ。あなたが宇尾海六さんね?」

 一瞬だけ眉根をひそめたものの、すぐに笑顔を浮かべて、少女が歓迎してくる。少女は銀色の髪を結いあげていて、なんとも清楚な雰囲気を漂わせていた。


「私はシンディー・アークライト。このクラスの学級委員長です」

 シンディーは短く自己紹介をすると、六を自分のすぐそばまで招き寄せる。

「彼が新しい仲間の宇尾海六くんです」


 その名前を聞いてクラス中の視線がいっせいに六へと集まる。ある者は尊敬、ある者は羨望、そんなさまざまな感情が複雑に絡まりながら、六を囲いこんでいく。だが、六は眉一つ動かさず、冷静にいなしている。それは気にしていないというより、対処に慣れているという類のものであった。


「自己紹介、お願いできますか?」

 シンディーの問いに、六は無言でうなずくと、チョークをとって、自分の名前を黒板に書いていく。

「宇尾海六です。よろしくお願いします」


 六の短い挨拶のあと、クラスメイトたちは彼を盛大な拍手で迎える。こうして、六の学校生活の第一歩が幕を開けたのであった。

お読みいただきありがとうございます。

引き続きよろしくお願いします。

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