3-10
六が部室棟からでてきたのは、ユウレイイカが倒されてからすぐあとのことである。
「フェイ――コーラルがやったのか」
遠目からフェイの勝利を確認すると、六は思わず胸を撫でおろす。と、そんなときである。視界をいきなり布が覆い被さってきたのである。
「な、なんだ?」
驚いた六は視界を覆っていた布をはぎ取り、それがなんなのかを確認する。
「パンツ……?」
六は自分の顔を突然覆ったモノの正体を不思議そうに見つめながらつぶやく。そして、ふと空を見あげたとき、そこには信じられない光景が広がっていた。
「ふむ……。パンツの雨、か」
天から降ってくる無数のパンツに目を奪われながら、六は独りごちる。
「宇尾海六、イカエビルはどこ? 今度こそアイツを捕まえてやるわ!」
六がそうしていると、フェイが鼻息を荒くしてやってくる。おそらく勝利の余韻がまだ引いてないのだろう。そのせいか目も血走っていて、そこはかとなく危ない雰囲気であった。
「残念ながら、逃げられたようだな……」
六はこのパンツをばらまいた張本人の姿を思い浮かべながら、部室棟の屋上に視線を送る。もちろん、その場所に人影はない。だが、そこにはたしかに彼がいたのだと六は確信していた。
逃げられたという事実に対して、冷静に受け止める六に対し、悔しそうに地団駄踏むフェイ。
すべて解決といかなかったが、こうして学園を震撼させた『下着連続盗難事件』は幕を閉じたのであった。
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