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魔導兇犬録:闇黒新世界  作者: HasumiChouji
第一章:In My End Is My Beginning
2/20

(1)

『おい、クソ野郎ども、何が『韓国系マフィアと九州の暴力団の銃の取引の摘発に手を貸せ』だッ⁉』

 こっちの指揮官が無線で怒鳴り散らす声が耳に響く。

 クレームを入れてる相手は広域組対(マル暴)と地元県警のエラいさんだ。

「あのさ……『死霊使い』さんよ……。何とかなるのか、あいつら?」

 同僚の築山がそう言った。

 こいつの「異能力」は「変身能力」。

 ライトブラウンの毛を持つ獣人の姿に変身出来る。

 もっとも……「獣」と言っても肉食獣系なのは確かだが……猫・犬・狸・狐と色んな要素が混っていて……そして、上の階で暴れてるあの2人より人間に近い姿だ。

「……無理だ……」

「何で?」

「ここからでも判る。『気』の量がケタ違いだ。『魔法結社』系の犯罪組織のリーダー格でも、あそこまでの化物は居ない」

「どう云う事だ?」

「軽量級のボクサーが、格闘技系じゃないけど筋肉量が自分の倍以上のアスリートに殴りかかるようなモノだ」

「なるほど……」

「お前は、どうなんだ?」

「おい、俺程度じゃ……」

「ぐええええ……」

「ぎゃあああ……」

 窓の外で悲鳴。

 また、「レンジャー隊」の連中が血を流しながら落ちていった。

「同じ獣人系の変身能力者でも格が違うってか」

『レンジャー隊、更に2個小隊がロスト。まだ生存が確かなレンジャー隊員は……残り3名です』

 後方支援要員の声は淡々とした……そして、どこか感情が麻痺したかのような口調だった……。

『おい、特務要員(ゾンダー・コマンド)、まだ生きてるなら……』

「撤退していいっすか?」

『あのなぁ……』

「俺達に、ちゃんと情報を流さなかった(ヨソ)警察機構(カイシャ)のせいで、何人死んでんですか? 俺達まで死ぬは嫌ですよ」

汚れ仕事要員(ゾンダー・コマンド)らしく、仲間の死体の始末をしときゃいいですか?」

 俺達は、対異能力犯罪広域警察機構「レコンキスタ」の中でも「異能力者」のみからなる殴り込み部隊「ゾンダー・コマンド」の一員だ。

 通称「レンジャー隊」と並んで、他の警察機構(カイシャ)で言うなら機動隊や特殊急襲部隊(SAT)に相当する。

 だが……「ゾンダー・コマンド」というドイツ語の単語は……直訳したら「特務要員」だが、裏には悪趣味な、もう1つの意味が有る。

 それは……ナチスの時代の強制収容で「他の囚人の死体の始末」などの「汚れ仕事」をやらされていた囚人だ。

 ゾンダー・コマンドは異能力者に加えて人並の常識と知能さえあれば……例えば親兄弟がヤクザだろうと「警察官」として採用してもらえるが……その代り、やらされるのは、汚れ仕事や裏の仕事ばかりだ。

 今回も、何故か、九州と韓国のヤクザが大阪府内で取引をするらしい……と云う、その時点で何か裏が有りそうな暴力団(マルB)案件の手伝いをする事になっていた。

 そして、詳しい情報が、地元警察と広域組対(マル暴)から入ったのは、今日になってから。

 よりにもよって、問題の「九州のヤクザ」と「韓国のヤクザ」の正体は「単純な戦闘能力なら東アジアでトップ3の獣化能力者」の内の2人、九州は久留米の白銀の狼こと久米銀河と、韓国有数の犯罪組織の大ボス……通称「(コム)社長」だったのだ。

 奴らには、並の銃は通じない。

 傷を負わせる事が可能でも……高速治癒能力が有る。

 そして……奴らの爪や牙を防げる防具は、ウチにも同業他社(他の警察機構)にも無い。

 どうやら、警察機構(おれたち)の「商売敵」として勢力をのばしつつある「正義の味方」「御当地ヒーロー」どもは……あいつらの牙や爪でも防げる素材を開発したらしいが……。

「おい、外、見ろ、あれ……」

「ああ、助かった……。さぁ、とっとと帰るか……」

 一〇年ほど前から活動を始めた「正義の味方」「御当地ヒーロー」どもが、何故、警察の商売敵なのか?

 話は簡単だ。

 奴らは、はっきり言って、レンジャー隊やゾンダー・コマンドや機動隊やSATより単純に強いし手際もいい。

「ああ、ごくろうさまです」

「毎度、すいませんね」

 俺達は、特殊ケーブルを使って上の階に向かっている窓の外の「正義の味方」達に声をかけて……化物(チート)級の獣化能力者が居る廃ビルから、とぼとぼと出て行った。

「あ……しまった」

「どうした?」

「レンジャー隊と一緒に行動してりゃ、まだ、やりようが有ったかも……」

 そう言って、俺は、使い魔である「死霊」を、そのあたりに転がってるレンジャー隊の死体に取り憑かせ……。

「♪かんかんの〜 ♪きゅ〜んれす……」

「やめろ、ボケ。こんな真似をやってんのを、まだ生き残ってるレンジャー隊に見られたら、俺達と連中の仲が、更に険悪になるぞ」

「でもさ……死体ぐらいは持って帰ってやった方が良くねえか?」

「だから、警察官(サツカン)のくせに、仲間の死体で遊ぶんじゃねえ、ボケッ‼」

「はいはい」

 俺が術を解いた途端……ゾンビ化して俺達について来ていたレンジャー隊の死体は、バタリと倒れた。

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