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俺を閉じ込めてた某「ネット上で誘拐犯御用達扱いされてる車種」の車は、俺の家の近くの駐車場に停められていた。
「何が、どうなってんだ……一体?」
「こっちが訊きたい」
課長が連れて来た同業者の口調には……微かだが北関東の訛が有った。
だが、俺の故郷のモノとはビミョ〜に違う。
多分……群馬か栃木の方言だ。
「あ、そうだ……この辺りの防犯カメラを運用してるのは……神政会のフロント企業だ」
「そこは抜かりねえ。ちゃんと防犯カメラに写る場所は避けてる」
その時、車の運転席のドアが開く
「あ、課長は、あたしが宿まで送る。あたしは、フェリーで車ごと帰るから」
「は〜い」
「誰?」
俺は同業者に、そう訊いた。
「ウチのカミさん」
「じゃあ、防犯カメラに写らない場所まで移動、お前ら2人は、そこで降りろ」
だが……同業者の「カミさん」の口調は……また訛がビミョ〜に違う。
標準語に近いが……西日本のものっぽい……。だが……関西弁とも、この辺りのものとも違う気がする。
やがて、俺達は車から降され……。
「結局、あんた、誰なんだ?」
「今は警察を辞めてるが……斎藤課長の昔の部下だ」
「ええっと……流派は密教系? それとも修験道?」
「ノーコメント」
「警察機構辞めたって……あれか? 都市伝説になってる課長が関わった剣呑い件絡み?」
「何の事だ?」
「だからさ……こう云う案件を手掛けた『桜田商事』の『落しの名人』が、実は本人も自覚してなかった『精神操作能力者』だった、って『都市伝説』だよ」
そう言って俺は、片方の手を拳にして首の後ろに回し、目をむいて舌を出して「絞首刑」のゼスチャーをやる。
いわゆる「異能力者」の中でも、最初に存在が公になったのは「精神操作能力者」。
当然……死刑囚の中には「精神操作能力」を持った警察官のせいで嘘の自白をしたか、自分が真犯人だと思い込んでしまった奴がかなり居て……その中には、既に「吊るされ」てしまった奴も少なくない……そんな噂が立った。
そして、次に立った噂は、対異能力犯罪広域警察機構「レコンキスタ」の汚れ仕事部隊が「自分を『精神操作能力者』だと自覚していなかった『落しの名人』」を粛清した、と云うモノだった。
「それも……ノーコメント」
精神操作系の術が専門じゃない「魔法使い」でも、相手の「気」から相手が動揺してるかぐらいは推測出来る。
だが、ちゃんと体系立った、そこそこ以上の歴史が有る「流派」で、マトモな修行をした「魔法使い」は、結構な自制心を持ってるのが普通だ。
この同業者からも、何の心の動きも読み取れない。
だが……ヤツは……溜息を吐いた。
「俺達と斎藤課長が関わったのは……それどころじゃない剣呑い案件だと言ったら信じるか?」
「へっ?」
「俺達が、あるクソ野郎どもを壊滅させたのは確かだ……。けど、それが正しかったかは……今でも俺ん中では答が出てねえ……。キザな言い方でアレだけどな」
どこまでが本当で……どこまでが与太なのか……それさえ判断出来ない。
「ともかく、連絡はコレで取る」
そう言ってヤツが差し出したのは……今の携帯が主流になる以前の古いタイプの折り畳み式携帯電話。
「これさぁ……」
「そこも抜かりない。県外で手に入れた『飛し』の携帯だ」
「あんたの事は……何て呼べばいい?」
「朝霧」
「へっ?」
「名字は朝霧。下の名前は……そうだな、陽介でいいか?」
まぁ、多分、偽名だろうが。
「あと、念の為だ。この携帯を使うのは……お前の今の自宅以外の場所にしてくれ」




