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ヤスラギ委員長は死ぬほど忙しい  作者: スウェイル
第二章 委員長、怒る
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狩野達人

 次に異変に気がついたのは巡回中だった狩野達人(かのうたつひと)だった。


「おっ……と、あそこにいるのは?」


 意外なことに俺のスキル【索敵】に敵性反応があった。

 『こんな雨の中、わざわざ襲ってくるような物好きがいないとも限らない』……そう思って警戒しておいたのが功を奏したな。


 タツヒトはフッとほくそ笑む。


 場所はここから山の上側へと進んだ、森と牧場予定地の境界付近。

 サーモグラフィーのような視界の遠方に捉えた敵影は、ほとんど小さな赤い点だった。

 

 すなわち、まだいくらかの距離がある。

 

 さて、どうするか。まずは相手の出方次第だが……。


「どうした。敵か?」


「あぁ、そうだ」


 警備に同行していた對馬鷹仁(つしまたかひと)がタツヒトの変化に気づき、これまた意外そうな顔で問う。

 作戦を練るのに意識を割いていたタツヒトはそれを簡潔に肯定した。

 

 施設の警備は基本的に【索敵】のスキルを持つメンバーを中心とする三人一組(スリーマンセル)で行われる。


 戦闘探索班のメンバーにおいて、特殊なヤスラギを除き【索敵】を持っている者は4人。

 

 班長である狩野達人、弓使いの赤坂和歌奈(あかさかわかな)、哨戒機こと源琉花(みなもとるか)、そして、剣道二段の元柏響季(もとかしわひびき)だ。


 なんと、4人のうち3人が女子なのである。

 

 そのため、女子と上手く話せる自信が無いヘタレな男子たちはタツヒトと組むしかない。

 

 しかし、そうなると今度は敵に警戒されるらしく、男子だけで警備しているときには敵が来なかったのだ。(なので、しれっと男子のシフトは増えていた)

 

 だが、そんな安全神話も、ついに崩れ去るときがやってきた。


「マジ!? オレ、敵襲に遭うの初めてなんだけど!! うぉおおー! 腕がなるぜぇー!」


「うるせぇ、フジマサ。あんまりふざけてると処すぞ、コラ」


 冷静な二人に対し、三人目のメンバー藤沢昌汰(ふじさわまさた)は警備の巡回中に初めて敵と戦闘するとあって浮き足立っていた。

 

 そんなフジマサにイラついたタカヒトは、槍の柄を地面にガッと打ち鳴らし威嚇するが。


「! 止めろ、二人とも。緊急事態だ! 戦闘の準備をしろ! 急げッ!!」


「「り、了解!」」


 目の色を変えたタツヒトに制され、そのまま彼の指示通りそれぞれの槍をしっかりと構えなおした。

 

 チィッ、いきなり敵性反応の数が増えやがった。

 2、4、6、8匹……、いや、8頭か!?

 思ったよりもデカいぞ、コイツら!!

 

 頭では冷静に努めようとするが、想定外の事態でどうしたって焦りは消えない。

 

 【索敵】の視界に映る赤い敵影はどんどんと接近してきて、そのシルエットを明らかにする。


 体長1メートル以上の四足。

 風になびくように後ろへと流れる体毛。

 シベリアンハスキーの凶悪版みたいな8つのシルエットが、付かず離れず、こちらへと向かってくる。


「くそっ、魔狼(まろう)の群れだ! 八頭も侵入してきやがった!!」


 こんなことは今まで無かった。

 これまでの報告だと、魔狼は1頭(ソロ)2頭(ペア)で狩りをしており、丸腰だったり、こちらから手を出したりしない限り、近づいてくることもなかったという。

 

 そのことを知っているほかの二人も、タツヒトが魔狼と言ったことで同じ焦りを抱く。

 

「は、8だと!?」


「……マジ?」


「力も数も、勝ち目がねぇ。倒すんじゃなくて、追い返す。全力で」


 そう強く言い切ったタツヒトは猟銃に魔力を込め、弾を非殺傷で消音効果のあるのものから殺傷能力の高いものへと入れ替える。


「お、おう。べ、別に、倒してしまっても構わんのだろう……?」


「うわぁー、最高にかっこ悪い名台詞」


「う、うるせぇ! やっぱお()ぇ、あとで処す!!」


 残念ながら弓ではなく槍が武器のタカヒトを茶化すフジマサ。

 彼らの武器はどちらも槍だが、属性が違うためその用途も異なっている。

 

「ハイハイ。処せるもんなら、ねッ!!」


 めいっぱいに魔力をこめた『氷結槍(アイシクル・ランス)』を地面に突き立てる。


 すると、三人の足元から道幅いっぱいに氷の壁が出現した。

 それは雨や水溜まりから水分を吸いあげることで、どんどん巨大に成長していく。


「……あ、待った。これ、迂回されたらヤバくね?」


「そりゃそうだろ!? なにやってんだ、バカ!!」


「――いや、これでいい」


 グダグダな二人のおかげですっかり緊張がほぐれたタツヒトは、そういって目線の高さに銃を構えた。


「この高さなら、的がよく見える」


 ズドンッ!!


 腹に響く発砲音。その音よりも速い弾丸が、先頭を走る狼に向かって放たれる。


 完全に不意をついた一撃。


 しかし、狼は運良くそれを掻い潜る。


「チッ、縦方向の偏差射撃も練習しておくべきだったか」


 最悪の事態を考え、一瞬だけ狼どもから視線を外す。


 この氷の防衛ラインを突破されても、襲われる者がいなければ問題ない。


 この雨だ。まさか、俺たち以外に出歩いている奴は――。


 そんな思いで、敷地内を一瞥するタツヒト。


 しかし、無情にも視界の端に二人分の人影を捉えてしまう。

 

 1つは見慣れたデカい青。間違いなくカケノリだ。こいつはいい。まだ何とかなる。


 問題なのは…………!!


「なっ、んで、今、外にいるんだよ!!」


 誰よりも敵意が薄いため、白に近いシルエット。

 

 来てから日が浅いせいか、警戒心も薄いらしいそいつは、一度見たら絶対に忘れないであろう、まっしろしろすけ。


「ヤスラギ……!!!」

名前:對馬鷹仁

年齢:15(3月15日)

性別:男

容姿:176cm、地味な偉丈夫

髪と肌:目にまでかかる黒のショート、色黒日焼け

一人称:自分

イメージカラー:藍色、濃いグレー

動物に例えると:クロサイ

似ているキャラクター

(活動報告にあります)

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